イベント開催報告  グローバルエコノミー

第2回CIGS経済×歴史セミナー 『市場統合と経済活動の空間分布-空間経済学から見た植民地拡大』

2019年12月6日(金) 17:30 ~ 19:00 開催
会場:キヤノングローバル戦略研究所 会議室3

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(左から岡崎氏、中島氏)


開催概要: 
 テーマ: 市場統合と経済活動の空間分布 - 空間経済学から見た植民地拡大
 発表者: 岡崎哲二(CIGS/東京大学大学院経済学研究科)
       中島 賢太郎(一橋大学経営管理研究科経営管理専攻 イノベーション研究センター 准教授)

プログラム:  プログラムPDF: 494KB


発表資料: 
     「市場統合と経済活動の空間分布-空間経済学から見た植民地拡大 」PDF: 5.22MB


セミナー概要:
 CIGSでは、研究主幹 岡崎哲二をプロジェクトリーダーに据え、長期的歴史的データを用いた経済分析から現代のさまざまな経済問題への含意を引き出すことを目的に研究を行ってきた。この度、歴史データを用いた経済研究アウトリーチ活動の第二回セミナーを開催する。
 現代の世界では、TPP、さまざまなFTA等の市場統合への動きがある一方、Brexit、アメリカのTPP離脱、米中間の貿易障壁引き上げ等の市場を分断する動きが交錯している。こうした市場の統合/分断は経済活動の空間的配置にどのような影響をあたえるだろうか。 今回は、市場統合の影響を明確に捉えるために、それが劇的に生じた植民地化のケースを取り上げる。具体的には、1910年に行われた日本による朝鮮の植民地化を対象として、日本と朝鮮の市場統合が日本内部における経済活動の空間配置にどのような影響を与えたか を実証的に分析する。



ねらい
・貿易に代表される対外経済関係は国内経済に大きな影響をあたえうる。特に、帝国による植民地の拡大は国際貿易の拡大を通じ、経済活動の国際的統合を促進したといわれている
・しかし、国内においてもその利害は一様でない。
cf: メキシコの貿易自由化後、産業はメキシコシティからアメリカ国境へ移動(Hanson, 1997)
・このような対外経済関係は国内の経済活動、特に地理的分布にどのような影響を与えるのか
・20世紀初頭の日本と朝鮮の経済的統合は、当時の日本経済に対してどのような影響を与えたのか

使用データ
・市区町村別人口データ:人口静態統計、国勢調査
・歴史地理データベース:境界シェープファイル
・貿易データ:港湾統計、港レベルの国内取引(植民地含む)

インプリケーション
1)日本による朝鮮の植民地化にともなう経済統合(関税撤廃)は、朝鮮に地理的に近い地域の経済活動の成長をもたらした
 • 人口規模・市場規模が小さい地域(村)において大きな影響
 • 輸出産品の産地において大きな影響
2)国際貿易は、国家間の利害の問題のみならず国内の問題でもある
3)(本研究では明示的に分析上取り入れていないが)集積の経済(経済活動の集積による生産性上昇効果)が大きい場合、国内全体の余剰にも影響


講師紹介
■ 岡崎 哲二
キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹
東京大学大学院経済学研究科 教授
経済産業研究所 ファカルティーフェロー
Honorary President, International Economic History Association
研究分野:日本経済史、比較経済史
■ 中島 賢太郎
一橋大学経営管理研究科経営管理専攻イノベーション研究センター准教授
2003年東京大学経済学部卒業。2008年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了(博士(経済学))。東北大学大学院経済学研究科地域経済金融論寄附講座(七十七)准教授、一橋大学経済研究所経済制度研究センター准教授、東北大学大学院経済学研究科准教授を経て2017年より現職にある。空間経済学の実証研究を中心に研究を行っている。最近は特に、イノベーションについて企業間の共同研究ネットワークや従業員間コミュニケーションネットワークといったネットワークデータを用いた研究を中心に行っている。