イベント開催報告  グローバルエコノミー

第1回CIGS経済×歴史セミナー 『「相性のいい企業合併」:資産、販売地域、市場支配力』

2019年7月23日(火) 17:30 ~ 19:00 開催
会場:キヤノングローバル戦略研究所 会議室3

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(左から岡崎氏、若森氏)


開催概要: 
 テーマ: 「相性のいい企業合併」:資産、販売地域、市場支配力
 発表者: 岡崎哲二(CIGS/東京大学大学院経済学研究科)
       若森直樹(東京大学大学院経済学研究科)

プログラム:  プログラムPDF: 515KB


発表資料: 
     イントロダクションPDF: 312KB
     "Compatible Mergers: Assets, Service Areas and Market Power"PDF: 1.41MB


セミナー概要:
 第二次世界大戦前の日本の電力産業に関する詳細なマイクロ・データを用いて、企業はどのような属性を持つ他の企業を合併の相手として選ぶ傾向があるか、また合併する企業の属性の組み合わせによって合併の効果がどのように異なるかを検証した。
 戦前期の日本には合併規制がなく、また電力業で多数の合併が行われて十分なサンプルを得ることができるため、上のような問題を検討するための理想的な環境が得られる。分析の結果、企業は①営業地域の重なりが大きい、あるいは②有形・無形の資産の構成が自社と異なる企業を合併の相手とする傾向があることが明らかになった。さらに②のタイプの合併は、資産の効率的な利用を通じてコストの低下をもたらす傾向がある。そして合併によるコスト低下は電力価格に反映され、その効果は合併が一方でもたらす市場支配力上昇を通じた電力価格の引き上げ効果をほぼ相殺する大きさであった。



ねらい
1)個々の合併の特徴がどのような帰結をもたらすのかを解明
・合併の特徴: 設備の補完性,顧客の補完性,地理的近接性
・合併の帰結: コスト,発電量,設備稼働率,価格
2)合併の特徴が合併の意思決定に与える影響を検討

使用データ
・電気事業要覧
・発電所レベル:発電容量(Capacity) (kW)、発電量(Output) (MWh)、位置、所有企業
・企業レベル:供給区域(Service area) 700-800 市郡、送電線延長(Total transmission line distance) (km)、電力収入/電燈収入(Revenue from business- and retail-customers)、発電費用/送電線維持費用、財務データ
・合併情報

インプリケーション
1)合併の帰結
・費用: 有形・無形資産の構成が補完的な場合,発電設備稼働率,及び,送電設備、稼働率の上昇によってコストが減少する
・価格: 合併によって価格は上昇しないが,価格支配力は上昇している
2)合併の意思決定要因
・供給区域に重複が多いほど合併する傾向がある
・有形・無形資産の構成は意思決定には影響を与えていない
3)政策的含意
・当時独占規制当局が存在していたならば,社会的厚生は上昇していた可能性がある
・合併政策をデザインする際には,\merger compatibility" を市場集中度と共に精査する必要がある

講師紹介
■ 岡崎 哲二
キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹
東京大学大学院経済学研究科 教授
経済産業研究所 ファカルティーフェロー
Honorary President, International Economic History Association
研究分野:日本経済史、比較経済史
■ 若森 直樹
東京大学大学院経済学研究科 講師
研究分野:産業組織論、応用ミクロ経済学、金融経済学、医療経済学