イベント開催報告 エネルギー・環境
2019年11月1日(金)
15:30
~ 17:00
開催
会場:キヤノングローバル戦略研究所 会議室
開催概要
題目: 「10万個の子宮:なぜ子宮頸がん予防ワクチンは使われないのか」
発表者: 村中 璃子(京都大学大学院医学研究科 非常勤講師)
モデレーター: 杉山 大志 (キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹)
プログラム
ProgramPDF: 343KB
講演趣旨
子宮頸がんワクチンは世界約140か国で導入され、WHO(世界保健機構)も接種を強く推奨する安全性と効果の確立したワクチンです。しかし日本では、接種後に起きている歩けない、痙攣するなどの症状や、学業不振、不登校などはワクチンによる脳神経障害だと訴える人たちが現れ、政府は同ワクチンを定期接種に定めたまま接種の通知を停止。2016年には、世界初の国家賠償請求訴訟まで提起されています。 br>
背景にあるのは、科学やテクノロジーの進歩とともに顕在化してきた、リスクコミュニケーションの問題です。不作為責任より過誤責任を回避する政府、統計の素養が無く弱者目線の科学報道、仲間の不正に甘いアカデミア、陰謀論の広がりやすいインターネット空間、かぎカッコつき「専門家」の率いる市民運動など、問題が複雑に入り組むなか本講演では、優れた科学やテクノロジーであっても普及が阻まれる状況はどう生まれるのか、科学やテクノロジーに携わる人や企業はどう対処すればよいのか、こうした状況を防ぐためにできることはあるのか、子宮頸がんワクチンを事例に考えます。
講師紹介
京都大学大学院医学研究科非常勤講師。一橋大学社会学部修士修了、北海道大学医学部卒。医師免許取得後、WHO(世界保健機関)の新興・再興感染症チームの勤務等を経て、医療問題を中心とした執筆・講演活動を始める。2017年、ジョン・マドックス賞を日本人として初受賞。著書に『10万個の子宮:あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか 』(平凡社、2018年)。