イベント開催報告 国際交流
2015年9月8日(火)
14:00
~ 16:00
開催
会場:一橋大学 一橋講堂 学術総合センター2階 (東京都千代田区一ツ橋二丁目1-2)
講演資料
『中国経済:減速と失速の違い~転機にさしかかる日米中関係~』 PDF:1,507KBプログラム
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中国経済はニューノーマル=「新常態」の政策運営方針の下、適度な成長率を保ち、中期的には安定を保持する可能性が高い。しかし、2020年代後半以降も視野に入れた長期的展望に立てば、中国経済が高度成長から安定成長へと移行するのに伴い、経済が不安定化するリスクが高まる。そのリスクを回避、あるいは抑制するため、中国政府は現在、国内政策面では国有企業改革や金融自由化といった構造改革に取り組んでいる。一方、対外政策面では、新シルクロード構想、それを支えるアジアインフラ投資銀行やシルクロード基金の設立に力を入れ、中国企業にとって安定的な輸出先を確保しようとしている。
このように中国は長期的なリスクを意識しながらも経済安定確保と国際的なプレゼンス増大を中期的に持続すると見られる。一方、米国は、TPPの交渉の遅れ、rebalanceあるいはpivotと呼ばれたアジア重視戦略の停滞などから見て、今後中長期的にグローバル経済におけるステータスが相対的に低下傾向を辿ると予想されている。
この間、足許の日中関係の改善を背景に、中国の地方政府が日本企業に対する誘致姿勢を積極化させていることもあって、日本企業の対中投資姿勢が徐々に積極性を回復しつつある。経済面での日中連携メリットが明確化すれば、それが日中両国政府にとって日中関係改善を推進するインセンティブを高めるという好循環を生み出す。日中両国政府が長期安定政権としてこの方向を持続的に推進すれば、1990年代半ば以降長期的に悪化し続けてきた日中関係を反転回復させるトレンドを生み出す可能性がある。以上を踏まえて、日本が今後目指すべき方向を展望すれば、日米関係を外交・安保、経済、環境などの面において多角的に発展させる一方、中国との関係改善・協調発展を推進し、世界秩序の変化の中で日米中関係の安定性確保に大きく貢献する役割を発揮していくことを目指すべきであると考えられる。
このような問題意識に基づいて、足許の中国経済と日中経済関係、今後の日米中関係と日本の役割についての見方を提示したい。
瀬口 清之 略歴
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹/アジアブリッジ(株)代表取締役
1982年東京大学経済学部卒業後、日本銀行入行。1991年4月より在中国日本国大使館経済部書記官、帰国後1995年6月より約9年間、経済界渉外を担当、2004年9月、米国ランド研究所にてInternational Visiting Fellowとして日米中3国間の政治・外交・経済関係について研究。2006年3月より北京事務所長。2009年3月末日本銀行退職後、同年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹、杉並師範館塾長補佐(2011年3月閉塾)。2010年11月、アジアブリッジ(株)を設立。