2025.11.12
近年、館長や鍾明軒などの台湾のインフルエンサーが中国を訪問し、交流活動を行っている。彼らは「両岸一家親(中台は家族)」という理念や、中国の現代化の進展を称賛する内容を発信しており、その背後には一定の意図がうかがえる。これらのインフルエンサーに共通するのは、蔡英文政権期において民進党政権の政策を支持し、本土派への共感や民進党支持を公に表明した経緯がある点である。筆者は2025年7月、上海国際問題研究院および中国社会科学院の学者らと交流したが、その際、彼らも館長や鍾明軒らの行動を肯定的に評価していた。
また、館長が中国滞在中に行ったライブ配信の様子を見ると、撮影が制限されている場所での配信が可能であったことや、中国政府関係者および旺旺中時メディアグループ(親中派の台湾メディア)の記者が同行していたことなどから、中国政府が少なくとも黙認し、場合によっては積極的に支援していた可能性があると考えられる。
このことから、館長自身が中国政府の協力者として直接的に行動していなかったとしても、結果的に「統一戦線」のモデルケースとなったといえよう。
一方、2024年には、多くの台湾のインフルエンサー、たとえばYouTuberの「寒国人」や、実践大学教授の頼岳謙、中天テレビのアナウンサーである周玉琴などが、ほぼ同時期に新疆を訪問し、現地の様子を撮影した。アジア・ファクトチェック実験室によると、彼らの動画には共通したナラティブが見られるという。それは、①新疆には収容所が存在しない、②ウイグル語は消滅していない、③モスクは破壊されていない、④台湾政府は中国への渡航警報を出しているが、現地は平和で繁栄している――という四つの主張である。現時点で、これらの活動の背後に中国政府の統一戦線工作があるという直接的な証拠はない。しかし、彼らの発言内容がしばしば中国の官製メディアや政府系アカウントによって引用・拡散されている点からも、中国政府が少なくとも肯定的な態度を示していることは明らかである。また、一般に「親中派」と見なされる人物以外にも、普段は政治的発言を行わないインフルエンサーたちが同様の言動を示していることも注目に値する。
さらに、中国旅行をめぐる議論において、台湾の学生を対象とした「中国交流・訪問団」の存在も無視できない。中国側はしばしば市場価格を大きく下回る費用で、特に大学生を対象に中国旅行を促している。その背後には明確な政治的意図がある。実際、これらのツアーでは必ずといってよいほど政治教育や歴史観に関する講義が組み込まれており、台湾の若者の思想形成に一定の影響を与えていると考えられる。統計的なデータは存在しないものの、中国の目的が若者の認知に影響を与え、最終的に統一を推進することにあるのは明白である。
では、これらの統一戦線的手法は新しい現象なのだろうか。筆者の見解では、むしろ歴史の繰り返しである。中国は過去の経験を踏まえ、同様の手段を用いて政治目標の達成を図っている。たとえば、国共内戦期の北平(現・北京)では、共産党が高校生や大学生を対象とした視察団を組織し、張垣(現・河北省張家口)の「解放区」への訪問を通じて政治教育や体力訓練を実施した。こうした活動を通じて、協力的な学生を発掘し、党への参加や協力を促していたのである。このことからも分かるように、この約百年間、中国(共産党)は一貫して同様の方法で統一戦線活動と認知戦を展開してきた。しかし、台湾側を含む自由民主社会は、長年にわたって体系的な対抗策を十分に構築できていない。
権威主義体制にとって、自由民主社会に生きる人々がその価値観や論理を基準に相手を理解しようとすることは、むしろ弱点をさらけ出す行為となる。権威主義国家はその隙を巧みに利用する。我々自由民主社会は、もはや安易な楽観を捨て、真剣に対抗策を考えなければ、現在享受している自由な生活を維持することは難しくなるだろう。(W)