キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2026年7月7日(火)
[ 2026年外交・安保カレンダー ]
今週は「ツッコミ」どころ満載である。まずは、米国の独立記念日に合わせて(?)なのかもしれないが、イラン国内で故ハーメネイ最高指導者の葬儀がある。となると今回は意外に「停戦」が守られる可能性も高いので、イラン情勢に関する詳しい話は来週に回すこととし、今週は中東以外で気になったことを順不同で書いてみたいと思う。
第一は、米国内政。先週末の4th of Julyすなわち7月4日はアメリカ独立記念日にあたる。今年は独立250周年となるが、たまたま先週も筆者は、半世紀前と同様、米国内に滞在する機会があった。という訳で、ここでは、あくまで筆者の個人的感覚ではあるが、50年前と今の米国内の雰囲気の違いを断片的ながら描いてみよう。
1976年、筆者はミネソタ州のミネアポリス・セイントポール両市に跨るミネソタ州立大学の留学生だった。1976年は米国建国200周年(バイセンテニアル)ということで、米国社会がそれなりに結束していた頃だ。今から50年も前の話にはなるが、その頃の「アメリカ」は、随分、今とは雰囲気が違っていたように思う。
どう形容すれば良いかは分からないが、誤解を恐れずに言えば、当時はまだ「古き良き」時代の米国の「記憶」が残っていたような気がするのだ。大学キャンパスは、良くも悪くも、リベラルな雰囲気に満ちてはいた。だが、それでも社会全体としては、新しい健全な常識と保守的な価値・風土がうまく共存していた、良き時代だったと思う。
勿論、当時から米国社会の分断は顕著だった。だが、それでも当時の米国人たちは、老いも若きも、男も女も、白人も非白人も、「それぞれの」建国200周年を祝っていた。ところが今はどうだ?あれから50年も経った訳だが、今申し上げたような「それぞれの、それぞれなりの、各種「アメリカ」の共存という感覚は薄れてしまった。
どれもこれも、極端化し、両極化し、対立が深まり、社会の分裂・分断が広がった。この50年を振り返ると、建国200周年と250周年の違いに、今更ながら、驚きを禁じ得ない。ちなみに、1976年の200周年の際、東京の友人から手紙が届いた。当時はEメールなどなかったが、だからこそ逆に、今でも良く覚えているのだろう。
その友人は「今年のアメリカは建国200周年ということで、君のいるミネソタ大学でも、さぞかしお祝いムードが高まっていることでしょう」と書いてきた。これに対し筆者は「いや、それはそうなんだけど・・。実はこれ建国当時の東部13州だけの話で、今ミネアポリスで騒ぐのは建国200年「記念セール」だけなんだよ」と返事を認めた。
200年前の1776年当時、ミネソタ州は「州」ですらなく、広い意味での西部開拓時代にあった。ミネソタの人々からすれば、200周年というのは東部州の記念日であって、自分たちはあまり関係がない、というか、少なくとも当事者意識が薄いのも当然だろう。このギャップは建国250周年の今も構造的に全く変わっていない。
おっと、米国の話ばかりになってしまった。これ以外で今週筆者が気になったニュースを幾つか取り上げよう。例えば、
●ベネズエラの大地震は多くの犠牲者を出したようだが、同国市民は、年始から自国大統領が拉致連行された挙句、今度は自然災害という「踏んだり蹴ったり」である。この種の自然災害が中南米の内政を左右することも少なくないだけに、今後のベネズエラ情勢がとても気になる。
●近隣国のペルーではあの「日系フジモリ大統領」の娘「ケイコ・フジモリ」が大統領選挙で僅差ながら勝利を収めたようだが、父親と同じ轍を踏まないよう頑張ってほしいものだ。それにしても、中南米諸国の多くは、何だかんだ言いながら、民主的な選挙で政権が交代しているのだから、大したものではないか。
●先週は高市首相のインド訪問があった。米印関係が微妙になりつつある今、こうして日印関係が順調に発展していることは喜ばしい。ちなみに米軍関係では、これまで「インド太平洋軍」と呼ばれていた地域軍の名称を旧名の「太平洋軍」に戻したそうだ。だが、どう呼ばれようと、この地域軍は昔からインド洋を管轄していたのであり、任務や能力も基本的に変わらない。筆者には「再改名」の意味が全く分からない。
●先週は英国のEU離脱(Brexit)10周年だそうだ。振り返ってみれば、今も欧州諸国で吹き荒れている「民族主義的ポピュリズム(便宜的にこう呼ばせてもらう)」の始まりはBrexitだったのかもしれない。あの頃、「Brexitは間違いだ」と主張していた英国の識者たちは正しかったのだが、それがわかるのに10年を要したということか。
●バチカンで「超保守・伝統主義者」の聖職者が多数破門されたそうだ。あのバチカンで「破門」とは穏やかでないが、現法王の不退転の決意が感じ取れる。この数百年ぶり(?)とも言われる厳しい措置がローマカトリックの将来にどのような影響を与えるのか、大いに気になるところだ。
続いては、いつもなら吉岡明子主任研究員によるロシア関連コーナーだが、掲載再開は来週となる予定なので、今しばらくお待ち願いたい。次に、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。
仏大統領、シリア訪問終了(2日間)
カナダ首相、サウジアラビア訪問(3日間)
英労働党の党首選び始まる
最後はガザ・中東情勢だが、イラン問題は来週に回そう・・・。今週はこのくらいにしておこう。
<今週以前から続く会議>
6月29日‐7月8日 危険物輸送に関する専門家小委員会、第68回会合(ジュネーブ)
6月29日‐7月10日 UNCITRAL、第59回会合(ニューヨーク)
7月
<7月6日‐7月12日>
6日 参院、行政監視委員会
6日 参院決算委員会、高市早苗首相が出席
6日 小泉進次郎防衛相がトルコ訪問へ出発(9日帰国)
7日‐7月8日 NATOアンカラ首脳会議(第36回)(アンカラ、トルコ)
7日‐7月15日 国連持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)(ニューヨーク・UNHQ)
8日 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(6月16、17日開催分)(午後2時、米連邦準備制度理事会=FRB)
8日‐7月10日 国際海底機構、財政委員会、第31会議(キングストン)
8日‐7月10日 化学品の分類及び表示の世界調和システム(GHS)に関する専門家小委員会、第49回会合(ジュネーブ)
9日 小泉進次郎防衛相がトルコ訪問から帰国
10日 旧統一教会総裁に求刑(韓国地裁)
<7月13日‐7月19日>
13日‐7月16日 ECOSOCハイレベルセグメント(HLPF 閣僚級セグメント含む)(ニューヨーク・UNHQ)
13日‐7月17日 UPEACE-UNITAR 国際法・外交修士課程フィールド訪問(ジュネーブ)
15日 米地区連銀景況報告(ベージュブック)(FRB)
15日‐7月18日 EU-ASEAN・ビジネスミッション(バンコク)
16日‐7月17日 第22回 ASEAN-日本包括的経済連携合同委員会(TBC)(フィリピン)
16日‐7月17日 全国知事会議(鳥取市)
19日 第59回ASEAN、AMM、準備SOM・SEANWFZ委員会(フィリピン、未確定)
19日 サントメ・プリンシペ大統領選挙(サントメ・プリンシペ)
19日‐7月29日 国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会(韓国・釜山)
<7月20日‐7月26日>
20日 第59回ASEAN外相会議(AMM)開幕・本会合(フィリピン、未確定)
20日‐7月24日 ファンボロー国際航空ショー(英南部ハンプシャー州)
21日 ASEAN三者会合(ノルウェー&トルコ)(フィリピン・マニラ市)
21日‐7月22日 ECOSOC 第2回管理セグメント(ニューヨーク)
22日 ASEAN PMC+1 — 日・米・中・EU・印・豪・露・英・加・NZ。各対話相手国との個別セッション。南シナ海・貿易が焦点 (フィリピン、未確定)
22日 南シナ海行動規範(COC)交渉ラウンド(TBC)(フィリピン、未確定)
22日‐6月23日 国連工業開発機関(UNIDO)計画・予算委員会、第42回会合(ウイーン)
22日‐6月26日 中国国際サプライチェーン促進博覧会(北京)
<7月27日‐8月2日>
28日 1951年難民条約75周年記念(UNHCR)(ジュネーブ)
29日 核実験に反対する国際デー(国連)
30日 人身売買被害者世界デー(UNODC)(国連主催)
8月
14日 韓国で「慰安婦の日」
15日 韓国で日本の植民地支配からの解放を記念する「光復節」
17日‐8月20日 年次経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」(米ワイオミング州)
17日‐8月28日 UNCCD締約国会議及び補助機関の会合、第17回会議(ウランバートル)
24日‐8月28日 UNDP/UNFPA/UNOPS執行委員会、第2回定例会(ニューヨーク)
29日‐8月30日 G20財務大臣・中央銀行総裁会議(ファイナンス・デプティーズ会合)(アシュビル、ノースカロライナ)
30日 ハイチ大統領選
31日‐9月1日 G20財務大臣・中央銀行総裁会議(閣僚級)(アシュビル)
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問