外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2026年6月23日(火)

外交・安保カレンダー (6月22日-28日)

[ 2026年外交・安保カレンダー ]


今朝いつもの通りメールを開いたら、ホワイトハウスからメールが届いていた。Weekly Briefingと題するニュースレターだが、そのヘッドラインに思わず仰け反ってしまった。見出しは何と「トランプ大統領、歴史的なイランとの和平取引をブローカー」とある、英語では「President Trump Brokers Historic Iran Peace Deal」・・・??

それにしても、一体何を考えているのか。「ブローカー」という動詞は「仲介する」意味のはず。トランプさん、あなたは「ブローカー」じゃなくて、紛争の「当事者」なんですけどねぇ、まるで他人事のように・・・。紛争当事国の米国がイランとの「和平取引」を「ブローカー」なんかできる訳がない。

むしろ、今回あなたは「負けた側」に近いじゃないですかと「突っ込み」を入れたくなるぐらい、衝撃的なメールだった。それにしても、振り返ってみれば、過去一週間、相変わらずだが、トランプ節は炸裂しまくっていた。こんなことで、イランとの交渉がうまく行くとは到底思えないのだが・・・。

実は先週日曜日に「日曜討論」に出演する機会に恵まれ、ずいぶん「頭の整理」をしていたのだが、一時間という時間的制約もあり、全てについて生放送でコメントすることはできなかった。そこで今回はスタジオ内で喋れなかったことも含め、筆者がこの数日間で考えたことを、以下の通りまとめておくことにしよう。思い付くまま箇条書きにすれば、

第一に、これほど外交的に稚拙な交渉は見たことがない。
第二に、(先週も書いた通り)これは了解覚書(メモランダムオブアンダスタンディング)ではなく、誤解覚書(メモランダムオブミスアンダスタンディング)である。
第三に、戦争を終わらせる合意というが、むしろこれで次の戦争は不可避となった。
第四に、イランが核兵器取得に向けて本気で動く可能性はむしろ高まった。
第五に、イランはホルムズ海峡「開放」で相当程度の財政的余裕を得る。
第六に、新たな合意が2015年のイラン核合意を超えることはない。
第七に、トランプ支持者の中ですら、この合意は非常に評判が悪い。
第八に、イランのホルムズ海峡「実質支配」は既成事実化しつつある。
第九に、仮に今海峡が完全に開かれても、マーケットの判断は以前には戻らない。
第十に、イスラエルがヒズボラに対する攻撃を止めることはない。
第十一に、米軍は以前から前方展開している部隊を撤退させることはない。

といったものである。

以上が筆者の頭の体操だが、これについては今週の産経新聞WorldWatchに詳しく書くつもりなので、同コラムを御一読願いたい。現時点でどのような交渉になるかは分からないが、いずれにせよ、米側の交渉レベルは極めて低く「素人」に近いのに対し、イラン側は「後出しジャンケンの名人」だから、結果は推して知るべし、である。

続いては、いつもなら吉岡明子主任研究員によるロシア関連コーナーだが、今週も同研究員多忙のため、お休みさせて頂く。次に、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

6月22日 月曜日  EU・モルドバ首脳会議(ブラッセル)
6月23日 火曜日  天皇皇后両陛下、ベルギー公式訪問開始
世界経済フォーラム(夏のダボス会議)開催(大連)
メリーランド、ニューヨーク、ユタ各州で議会予備選挙
6月25日 木曜日  ウクライナ回復会議(ポーランド)
6月26日 金曜日  ボルトン元大統領補佐官、司法取引で有罪を認める
6月27日 土曜日  ルイジアナ州予備選挙決選投票


最後は最後はガザ・中東情勢だが、冒頭触れなかった点を付け加えよう。今回のMOU交渉を見ていて、その歴史的意義や教訓について、いくつか考えたことがある。例えば、

①イスラエルがアメリカを信じられなくなった時、次の対イラン戦争を単独でも起こす可能性がある。
②世界のエネルギー市場は不可逆的に変化してしまったのではないか。
③今回、最大の危機を脱した時、イランは核兵器製造を決意したのではないか。
④GCC諸国はこれまでの繁栄を享受できなくなり、停滞が始まるのではないか。
⑤中国とロシアは、中東での米国の失態により米国が被るコストの大きさを再確認し、ほくそ笑んでいるのではないか。
⑥これで米国が提供する安全保障の信頼が失われたという見方もあるが、それが直ちに日本含むアジアも同様だと断ずるのは如何なものか・・・。


今週はこのくらいにしておこう。

2026年重要日程レポート25【6月22日版】

<今週以前から続く会議>

6月

<6月22日‐6月28日>

22日 カナダ5月CPI発表
22日‐6月23日 国連工業開発機関(UNIDO)計画・予算委員会、第42回会合(ウイーン)
22日‐6月26日 サイバー・ウイーク2026(テルアビブ)
22日‐6月26日 中国国際サプライチェーン促進博覧会(北京)
23日 香港5月CPI発表
23日 台湾5月雇用統計発表
23日‐6月25日 世界経済フォーラム夏季会合(夏季ダボス会議)(遼寧省大連)
24日 米国2026年第1四半期国際収支統計発表
24日 米国2026年第1四半期および対外資産負債残高統計の年次更新
24日 ロシア1~5月鉱工業生産指数発表
24日 台湾5月小売統計発表
24日‐6月28日 APEC観光大臣会合(マカオ)
25日 米国2026年第1四半期および対外資産負債残高統計の年次更新
25日 香港5月貿易統計発表
25日 サウジアラビア4月貿易統計発表
25日 ECB一般理事会 
25日 5月の米PCE物価指数(商務省)
26日 ブラジル5月全国家計サンプル調査発表
26日 国連環境計画(UNEP)常駐代表委員会、第174回会合(ナイロビ)
26日 メキシコ5月貿易統計発表
27日‐6月30日 MIJF 2026 - マレーシア国際ジュエリーフェア(クアラルンプール)

<6月29日‐7月5日>

29日 カザフスタン第1四半期経済活動別GDP発表
29日‐6月30日 国際連合越境組織犯罪防止条約締約国会議、移民密輸に関する作業部会、第13回会合(ウイーン)
29日‐7月8日 危険物輸送に関する専門家小委員会、第68回会合(ジュネーブ)
29日‐7月10日 UNCITRAL、第59回会合(ニューヨーク)
30日 サウジアラビア2026年第1四半期投資報告
30日 チリ3~5月雇用統計発表
30日 ドイツ5月労働市場統計発表
30日 トルコ5月貿易統計発表
30日 沖縄県うるま市(旧石川市)の米軍戦闘機小学校墜落事故67年
6月上旬 ラオス5月CPI発表

7月

1日 アイルランドがEU議長国に(12月末まで)
1日 貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」共同見直し開始
1日‐7月3日 ACUNS年次総会(リスボン、ポルトガル)
2日 アルジェリア議会選挙
2日 6月の米雇用統計(労働省)
4日 米建国250周年
7日‐7月8日 NATOアンカラ首脳会議(第36回)(アンカラ、トルコ)
13日‐7月17日 UPEACE-UNITAR 国際法・外交修士課程フィールド訪問(ジュネーブ)
15日‐7月18日 EU-ASEAN・ビジネスミッション(バンコク)
16日‐7月17日 第22回 ASEAN-日本包括的経済連携合同委員会(TBC)(フィリピン)
16日‐7月17日 全国知事会議(鳥取市)
19日 第59回ASEAN、AMM、準備SOM・SEANWFZ委員会(フィリピン、未確定)
19日 サントメ・プリンシペ大統領選挙(サントメ・プリンシペ)
19日‐7月29日 国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会(韓国・釜山)
20日 第59回ASEAN外相会議(AMM)開幕・本会合(フィリピン、未確定)
21日 ASEAN三者会合(ノルウェー&トルコ)(フィリピン・マニラ市)
22日 ASEAN PMC+1 — 日・米・中・EU・印・豪・露・英・加・NZ。各対話相手国との個別セッション。南シナ海・貿易が焦点 (フィリピン、未確定) 
22日 南シナ海行動規範(COC)交渉ラウンド(TBC)(フィリピン、未確定)
22日‐6月23日 国連工業開発機関(UNIDO)計画・予算委員会、第42回会合(ウイーン)
22日‐6月26日 中国国際サプライチェーン促進博覧会(北京)
28日 1951年難民条約75周年記念(UNHCR)(ジュネーブ)
29日 核実験に反対する国際デー(国連)
30日 人身売買被害者世界デー(UNODC)(国連主催)

8月

14日 韓国で「慰安婦の日」
15日 韓国で日本の植民地支配からの解放を記念する「光復節」
17日‐8月20日 年次経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」(米ワイオミング州)
17日‐8月28日 UNCCD締約国会議及び補助機関の会合、第17回会議(ウランバートル)
24日‐8月28日 UNDP/UNFPA/UNOPS執行委員会、第2回定例会(ニューヨーク)
30日 ハイチ大統領選


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問