外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2026年3月25日(水)

外交・安保カレンダー (3月23日-29日)

[ 2026年外交・安保カレンダー ]


今週火曜日は久しぶりに、参議院予算委員会の公聴会の口述人として、国会議事堂内に入ることができた。本人は忘れていたが、関係者によれば筆者の「口述人」出席は3回目だそうだ。そういえば、前回は確か安倍内閣時代の安全保障関連法案審議での公聴会だったと記憶する。

参議院の第一委員室に入るまでの間、ちょっとした感慨に耽った。外務省を含む各省の別室がある懐かしい参議院の別館から、渡り廊下で本館に入り、階段を登っていく。昔毎日のように通ったルーティンのルートで第一委員室に入った。うーん、当然のことだが、懐かしい顔の議員は数人だけで、知らない人が多かった。当たり前か・・・?

詳細はこのURLで見ることができるので、関心のある方はご覧いただきたいが、さすがに国会議事録に残る発言だけに、慎重に発言してしまった分、あまり面白くないかもしれない。今回はそこで発言しきれなかった部分を捕捉し、イラン情勢について詳しく述べたい。

今回の公聴会が開かれた時期は、ちょうどトランプ氏が「48時間以内にホルムズ海峡を完全かつ威嚇のない形で開かなければイランの電力施設に攻撃を加える」と宣言したものの、舌の根も乾かないうちに、今度は「イランに5日間の猶予を与える」「イラン側と交渉している」といった仰天発言が飛び出していたころだ。

当然、公聴会ではある委員から「トランプ氏は何を考えているのか」との質問があった。これに対し、筆者は「トランプさんについては『言うこと』よりも実際に『やること』を重視している」と答えたのだが、これでは分かりにくいだろう。ここからは、時間の関係で公聴会では言えなかった部分を書くことにしよう。

この10年間、トランプ氏の発言を聞いてきたが、筆者の結論は次の通りだ。トランプ氏は:

  • 「考える」前に「喋る」傾向が強い。
  • 「喋る」目的は大きく分けて2つ、すなわち「自分がスポットライトを浴びるため」、または「自分を批判する者、もしくは自分を害する事象を否定するため」のいずれかだ。
  • 従って、残念ながら、周到な準備を経た戦略的発言は極めて少ない。
  • 事件が起きた場合、トランプ氏はまず、必ずしも事実ではない「希望」を述べる。
  • 次に、相手がその「希望」を受け入れない場合、倍返し(ダブルダウン)する。
  • ダブルダウンしても相手が応じない場合には、ビビる(チキンアウトする)、というのが基本である。


要するに、結局言うだけで何もしないことが多いのだ。だからこそ筆者は、トランプさんの最終的な考えを知るには彼の「行動を見る必要がある」という結論に達するのである。

何とも恐ろしい話ではないか。さすがに公聴会では言えなかったが、恐らくこれがトランプ政権で働く補佐官や閣僚たちが内心思っていることではないかと思う。かわいそうな人たちで、同情を禁じ得ない。他方、彼らもそれを承知で引き受けたのであろうから、自業自得であろう。

もう一点だけ、簡単に先週末の日米首脳会談について。日本メディアを見ていると、今回の日米首脳会談の「成果」は、アメリカからの「艦船派遣要請を回避できたこと」といった報道ぶりが目立つ。成果は艦船派遣要求の回避だって?そんなバカな話があるか。イラン戦争はまだ続くのだから、米側の立場も変わるだろう。

日米首脳会談の最大の目的は、日米同盟の深化、対中抑止を含むインド太平洋の平和と安全への関与、貿易や経済を含む二国間関係の発展を首脳レベルで直接確認し合うこと。その意味では今回も大きな成果があったと思う。相変わらず外交を「国内政局」の延長としてみる「政治部」的報道の悪弊は改まっていないようだ。

ついでに言えば、筆者の見るところ、今回の教訓は、イラン情勢について日本が軍事的な問題について何の判断もできなかったことである。日本人は中東の戦争を台風のような自然の回避不能な災害だと思っている。だから、台風には備えるが、基本的にはやり過ごすのを待つ。被害が出なければ大成功という訳だ。

しかし、中東の紛争は自然災害ではなく、人為的な災害だ。人災である以上、必ず止める方法はある。知恵を出して動けば、それを国益に変えることもできる。そのことを過去50年間、日本は考えてこなかったのではないか。筆者が1973年の第一次オイルショック以来、日本の中東政策は「思考停止」と考える理由はここにある。

さて、次は吉岡明子主任研究員によるロシア関連コーナーだが、今週は同研究員がまとめた「イラン戦争は大量の兵器を吸い込む“掃除機”――ロシア・メディアより」を以下の通りご紹介する。ロシア・メディアが「イラン戦争とウクライナ戦争の関連」を如何に見ているか知る上で興味深い。

「イラン戦争は大量の兵器を吸い込む“掃除機”――ロシア・メディアより」

ウクライナのゼレンスキー大統領は、3月18日の英BBCのインタビューで、改めてイラン危機の長期化がパトリオットなどの兵器不足を招き、ウクライナにとって大きな問題となるとの懸念を表明した。現在、パトリオットはロシアの長距離攻撃などから都市を守る防衛の要となっている。この点についてはロシア・メディアも早くから注目しており、少し前の記事だがここで紹介しておきたい。

◆「イランの掃除機:中東戦争はウクライナに何をもたらすのか――キエフは主要兵器の不足に直面する恐れ」3月6日、イズベスチヤ紙(要点)

中東での戦争は、ウクライナにとって重大な結果をもたらす可能性がある。
一つは、燃料価格の上昇がエネルギー輸入国であるウクライナにもマイナスの影響を及ぼす可能性である。
もう一つは、中東で米国製の兵器や弾薬が消費され、それらがウクライナに届かなくなることである。特に防空システムとその弾薬の不足が生じ得る。
米ロッキード・マーチン社は、年間約600発のパトリオット用弾薬と最大100発のTHAAD用弾薬を生産しているが、これはウクライナ一国分としてさえ不十分とされる。そこに「イラン戦争の掃除機」が大量の装備を吸い上げ、イスラエルや湾岸諸国とも分け合う構図が生まれている。
また、米国がイランに関する情報収集に注力することで、ウクライナは情報面での不足にも直面する可能性がある。


◆「中東での戦争が、ウクライナを防空なしの状態に追い込む可能性――防空手段の不足は交渉におけるキーウの立場をとりわけ脆弱にする」3月1日、独立新聞(要点)

防空兵器の不足は、2025年6月のイスラエル・イラン「12日間戦争」の結果としてすでに表面化していたが、現在、中東での戦闘がさらに大規模になると見込まれる中、ウクライナ軍にとって対空兵器の不足は致命的となる可能性がある。
ゼレンスキー大統領は2月のミュンヘン安全保障会議で、防空ミサイルがほとんど残っていないと認めている。
代替として供与されているサイドワインダー(AIM-9)は戦術レベル(射程15〜20km)にとどまり、「イスカンデルM」や「キンジャール」といったロシアの最新ミサイルには対応できない。
このため、ロシアが軍需産業やエネルギー施設への攻撃を継続した場合、ウクライナの防衛能力は低下し、前線での損失増加につながる可能性がある。


続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

3月24日 火曜日  デンマークで議会解散選挙
欧州委員会委員長がオーストラリア訪問、豪首相と会談
防衛・戦略フォーラムがパリで開催(3日間)
3月26日 木曜日  G7外相会談(パリ)
欧州主要10か国が参加する共同遠征部隊参加国首脳会議(フィンランド)
ヴェネズエラ前大統領夫妻、ニューヨーク連邦地裁に出廷
カメルーンでWTO閣僚会議開催(4日間)
3月27日 金曜日  ユーロ圏財務相が中東問題につきテレビ会合
3月29日 日曜日  インドネシア大統領訪日(3日間)
3月30日 月曜日  中央アフリカ共和国大統領就任式(3期目)


最後はガザ・中東情勢だが、今回も冒頭でイラン関連を取り上げたので、一点のみ補足する。筆者の知る限り、欧米の中東専門家の殆どは、今回のトランプ氏の「対イラン交渉」の発言を悲観的に見ている。中でも面白かったのは、「トランプ氏発言の目的は、①動揺し加熱する「市場」へのメッセージ、②派遣された海兵隊と陸軍部隊の戦闘準備のための時間稼ぎ、③「一方的戦闘停止」宣言のための布石、の3つ」という論調だった。さて、一体どれが、そして誰の言うことが正しいのか?実は、トランプ氏にも分からないのではないか?・・・今週はこのくらいにしておこう。


2026年重要日程レポート12【3月23日版】

<今週以前から続く会議>

2月23日‐3月27日 総会第五委員会(未定)(ニューヨーク)
2月23日‐4月2日 人権理事会第61回会議(ジュネーブ)
3月17日‐4月4日 筑波大生不明事件差し戻し審(仏リヨン)
2026年前半 ロシア・アラブ首脳会議(場所未定)
2026年内 ロシア大統領がカザフスタン訪問を予定

3月

<3月23日‐3月29日>

23日 シンガポール2月CPI発表
23日 メキシコ1月小売・卸売販売指数発表
23日 春闘第1回回答集計結果(連合)
23日 中国運載火箭技術研究院「CALT」、SD-3・未知のペイロード(海陽東方宇宙港)
23日‐3月27日 UNCITRAL、第4作業部会(電子商取引)、第70回会合(ニューヨーク)
23日‐3月27日 作業部会III(投資家対国家紛争解決制度改革)、第54回会合(ウイーン)
23日‐4月1日 人権理事会、恣意的拘禁に関する作業部会、第105会議(ジュネーブ)
23日‐4月2日 国連海洋法条約に基づく協定の発効及び国家管轄権外区域の海洋生物多様性の持続可能な利用に関する協定の発効並びに同協定締約国会議第1回会合の開催に関する準備委員会、第3回会合(ニューヨーク)
23日‐4月2日 国際労働機関(ILO)理事会及びその委員会、第356回会合(ジュネーブ)
23日‐4月3日 ICAO、理事会フェーズ、第237回会議(モントリオール)
24日 2月の欧州新車販売(欧州自動車工業会=ACEA)
24日 筒井義信経団連会長会見(都内)
24日 2月の全国消費者物価指数(総務省)
24日 チリ金融政策決定会合
24日 台湾2月小売統計発表
24日‐3月26日 FHV 2026 - フード & ホテル ベトナム(ホーチミン)
24日‐3月27日 ボアオ・アジアフォーラム年次総会(海南省ボアオ)
24日‐4月2日 ICSC、第101回会議(ニューヨーク)
25日 英国2月CPI発表
25日 米国2025年第4四半期および2025年通年の国際収支統計発表
25日 チリ金融政策レポート発表
25日 スペースX、スターリンくグループ17‐17・ファルコン9ブロック5号(ヴァンデンバーグ宇宙軍基地)
25日 米国第4四半期および2025年通年対外資産負債残高統計発表
25日 オーストラリア2月CPI発表
25日 石油製品価格調査(経産省)
25日‐3月26日 欧州議会本会議
26日 ECB一般理事会
26日 EU外相理事会(貿易)
26日 香港2月貿易統計発表
26日 全米批評家協会賞発表(ニューヨーク)
26日 台湾2月雇用統計発表
26日 メキシコ金融政策決定会合
26日 国連人口賞委員会第2回定例会(ニューヨーク)
26日‐3月27日 G7外相会合(パリ近郊)
26日‐3月29日 世界貿易機関(WTO)閣僚会議(カメルーン)
27日 メキシコ2月貿易統計・雇用統計発表
27日 経済社会理事会、租税問題に関する国際協力を検討する理事会特別会合(ニューヨーク)
27日 米国2025年第4四半期GDP(確定値)発表
28日 インド2月IIP発表

<3月30日‐4月5日>

30日‐3月31日 国際安全保障の文脈におけるICT分野の発展とICTの利用における責任ある国家行動の促進に関する世界メカニズム、組織セッション(ニューヨーク)
30日‐4月1日 人権理事会、国家人権機関の世界同盟、第39回会議(ジュネーブ)
30日‐4月2日 障害者権利委員会会期前作業部会第21会議(ジュネーブ)
31日 米国通商代表部(USTR)2026年外国貿易障壁報告書(NTE)提出期限
31日 コロンビア2月雇用統計発表・金融政策決定会合
31日 ドイツ2月労働市場統計発表
31日‐4月2日 トランプ米大統領が訪中
31日 3月の中国PMI(国家統計局)

3月中 OECD世界経済見通し発表

4月

1日 スロベニア議会選挙
1日 インドネシア2月貿易統計発表
1日 インドネシア3月CPI発表
2日 米国2月貿易統計発表
2日 カナダ2月貿易統計発表
2日 オーストラリア2月貿易統計発表
2日 トランプ米政権「相互関税」公表から1年
2日 2月の米貿易収支(商務省)
3日 米国3月雇用統計
3日 3月の米雇用統計(労働省)
5日 コスタリカ大統領選決選投票
6日 3月と第1四半期のベトナム社会・経済統計発表(GDP, CPI)
8日 チリ3月CPI発表
9日 コロンビア3月CPI発表
9日 メキシコ3月自動車生産・販売・輸出統計・CPI発表
10日 カンボジア3月貿易統計発表
10日 米国3月CPI発表
10日 ブラジル3月IPCA発表
12日 ペルー総選挙(大統領、上院・下院議員、アンデス議会議員選挙)
12日 ハンガリー議会選挙
12日 ベナン大統領選挙1回目投票
13日‐4月16日 InnoEX(香港)
13日‐4月18日 IMF・世界銀行春季総会(米国・ワシントン)
14日 アルゼンチン3月CPI発表
15日 ブラジル2月月間小売り調査発表
15日 イスラエル3月CPI発表
15日 米国財務省 半期為替政策報告書提出期限
15日‐4月30日 中国輸出入商品交易会(広州)
16日 米国3月小売統計
16日‐4月18日 Texpo 26(パキスタン)
16日‐4月19日 Beautycare Expo 2026 (ハノイ)
16日‐4月19日 IMF・世界銀行春季総会(ワシントンDC)
16日‐4月23日 モスクワ国際映画祭
17日 CIS外相会議(ロシア・カリーニングラード)
20日‐4月22日 BEAUTY ASIA Singapore 2026(シンガポール)
21日 EU外相理事会(ブリュッセル)
21日‐4月24日 Food &Hospitality  Asia(FHA)2026(シンガポール)
22日 カザフスタン2025年経済活動別GDP発表
23日 カザフスタン2025年所得別GDP発表
23日 シンガポール3月CPI発表
23日 イスラエル3月財貿易統計発表
23日‐4月24日 EU非公式首脳会議(キプロス)
24日 メキシコ3月雇用統計発表
24日 ロシア中央銀行理事会
25日 朝鮮人民革命軍創建記念日
27日 メキシコ3月貿易統計発表
27日‐4月28日 チリ金融政策決定会合
28日‐4月29日 ブラジル中央銀行、Copom
28日‐4月29日 米国FOMC
29日 カナダ中銀政策金利発表・金融政策報告書発表
29日 アルゼンチン第1四半期貿易統計発表
29日 チリ1~3月雇用統計発表
29日 オーストラリア3月CPI発表
29日‐4月30日 Sydney Build Expo(シドニー)
30日 ブラジル3月全国家計サンプル調査発表
30日 コロンビア3月雇用統計発表・金融政策決定会合
30日 米国2026年第1四半期GDP(速報値)発表
4月以降 ミャンマー新政権発足
4月中(予定) カナダ経済声明
4月中 カーボベルデ議会選挙
4月初〜5月 第16期の第1回の国会会議(ベトナム)


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問