外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2026年3月10日(火)

外交・安保カレンダー (3月9日-15日)

[ 2026年外交・安保カレンダー ]


米国大統領の口から「無条件降伏」という懐かしい言葉を久し振りに聞いた。筆者はとっさに太平洋戦争末期の日本のことを思い出した。但し、筆者の念頭にあったのは、「ポツダム宣言」を受諾した1945年8月ではなく、前年の1944年11月、B29による東京空襲が本格化し始めた時期である。

米イスラエル・イラン戦争が二週間目に入り、米軍は大量の精密誘導兵器を駆使してイランを軍事的に屈服させようとしているのだが、果たしてそう上手く行くだろうか。「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」との格言が正しければ、イランがトランプ政権にそもそも「降伏する」ことなどないと思うのだが・・・。

トランプ氏は、イランとの交渉に見切りを付け、軍事攻撃を望んだネタニヤフ首相の口車に乗ってしまったのではないか。イランの力を過小評価し、ベネズエラと同様、戦争は短期間で終えられるという計算ミスを犯したのではないか。イランは紛争の長期化を図るだろう。長期戦に持ち込めればイランの勝ちではないのか。

他方、米国が勝利するのは困難だ。そもそも、何が勝利なのか、決めることすらできないからだ。いずれトランプ米大統領は事実上の失敗を「名誉の撤退」に見せるための口実探しを始めることになるのではないか・・・。以上の見立てを今週のJapan Timesに寄稿するつもりなので、興味のある方はご一読願いたい。

次は吉岡明子主任研究員によるロシア関連コーナーだが、今週は同研究員がまとめた「アメリカ・イスラエルによるイラン攻撃――ロシア・メディアから」を以下の通りご紹介する。ロシア・メディアが「米イラン関係がロシアに与える好影響」を如何に見ているかを暗示する二つの論評、なるほどと思う。

ロシアのメディアは、イラン情勢の激化がロシアにもたらす影響についてロシア側の見方を伝えている。主要オンラインメディア「Lenta.ru」(3月9日付)が伝えた次の2人の発言は、ロシア国内の典型的な見方と言えそうだ。中東危機をめぐるロシア国内の議論には、西側の関心や資源が分散し、その結果ウクライナ支援が弱まるとの期待や、エネルギーの「脱ロシア」を図ってきたEUへの「当てこすり」がにじむ。

アレクセイ・チェパ ロシア下院国際問題委員会第一副委員長インタビュー記事(要約):

  • イランでの戦争によって、世界の関心はウクライナから冷めつつある。
  • 西側からウクライナへの武器供給は減少するだろう。ウクライナが求めている兵器(とりわけミサイル防衛および防空システム)は、現在では米国自身にとっても不足する可能性がある。
  • 今回のエネルギー危機は欧州にも影響を与え、ウクライナへの資金供与を困難にすることになる。
  • 今回のイラン攻撃で、国際法やルールに基づいて問題を解決できるということに対する国際世論の信頼は低下した。ウクライナ危機での交渉にも一定の影響を与えるだろう。(注:ロシア自身が国際法に違反してウクライナに武力侵攻した事実には触れていない。)

キリル・ドミトリエフ ロシア直接投資基金総裁のコメント紹介記事(要約):

  • (原油価格の上昇で)ロシアのエネルギーが不可欠になると予想される。それを制限しようとしたEUの戦略的な誤算が完全に明らかになるだろう。
  • 原油の新たな目標は1バレル150ドルだ。長期的な紛争となれば200ドルに達する可能性もある。エネルギー危機は残念ながら、多くの人が予想するよりもはるかに深刻で長期的なものになるだろう。


続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

3月10日 火曜日  仏が原子力エネルギーサミットを主催
3月11日 水曜日  チリ新大統領就任
オランダ首相訪仏、仏大統領と首脳会談
欧州理事会議長のアゼルバイジャン訪問
EU国防大臣会合(キプロス)
3月14日 土曜日  日米が初の「インド太平洋エネルギー安全保障官民フォーラム」を主催
3月15日 日曜日  コンゴで大統領選挙
ベトナムで議会選挙
カザフスタンで憲法改正国民投票
3月16日 月曜日  EUエネルギー大臣会合(ブラッセル)


今週はこのくらいにしておこう。


2026年重要日程レポート10【3月9日版】

<今週以前から続く会議>

3月2日‐3月19日 人権委員会、第145回会議(ジュネーブ)
2月16日‐3月13日 平和維持活動に関する特別委員会とその作業部会(ニューヨーク)
2月23日‐3月27日 総会第五委員会(未定)(ニューヨーク)
2月23日‐4月2日 人権理事会第61回会議(ジュネーブ)
3月2日‐3月13日 国際海底機構、法律技術委員会、第31会期第1部(キングストン)
3月2日‐3月19日 人権委員会、第145回会議(ジュネーブ)
3月6日‐3月15日 ミラノ・コルティナ冬季パラリンピック(ミラノ、コルティナダンペッツォ)
3月8日‐3月11日 「VIFA EXPO 2026」ベトナム国際家具・ホームアクセサリーフェア(ホーチミン)
2026年前半 ロシア・アラブ首脳会議(場所未定)
2026年内 ロシア大統領がカザフスタン訪問を予定

3月

<3月9日‐3月15日>

9日 メキシコ2月CPI・自動車生産・販売・輸出統計発表
9日 台湾2月貿易統計発表
9日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)
9日 チリ2月貿易統計発表
9日‐3月12日 欧州議会本会議
9日‐3月13日 国連拷問被害者のためのボランティア基金理事会(ジュネーブ)
9日‐3月13日 麻薬委員会第69回会議(ウィーン)
9日‐3月13日 非核兵器地帯問題に関する包括的研究を準備するための専門家グループ、第2回会合(ニューヨーク)
9日‐3月20日 女性の地位に関する委員会第70回会議(ニューヨーク)
10日 フィリピン12月直接投資発表
10日 カンボジア2月貿易統計発表
10日 南ア第4四半期GDP発表
10日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会
11日 ドイツ2月CPI発表
11日 米国2月CPI発表
11日 チリ大統領就任式
11日 ブラジル1月月間小売り調査発表
12日 インド2月CPI発表
12日 アルゼンチン2月CPI発表
12日 ブラジル2月IPCA発表
12日 ペルー金融政策決定会合
12日 トルコ中銀金融政策会議(トルコ・イスタンブール)
13日 メキシコ1月鉱工業生産指数発表
13日 フランス2月CPI発表
13日‐3月14日 社民党大会
13日‐3月15日 共産党第8回中央委員会総会(党本部)
15日 イスラエル2月CPI発表
15日 ベトナム国会議員選挙
15日 仏地方統一選挙・第1回投票

<3月16日‐3月22日>

16日 米国2月小売統計
16日 カザフスタン1月貿易統計発表
16日 カザフスタン1~2月鉱工業生産指数発表
16日 台湾2月投資統計発表
16日 フィリピン1月OFW送金額発表
16日 EU外相理事会
16日‐3月17日 サムソン国際スマートモビリティ・サミット2026年(テルアビブ)
16日‐3月19日 米エヌビディア年次開発者会議「GTC」(カリフォルニア州サンノゼ)
17日 国土交通省が2026年公示地価公表
17日 シンガポール2月貿易統計発表
17日 EU一般問題理事会
17日‐3月4日 筑波大生不明事件差し戻し審(仏リヨン)
17日‐3月18日 米国FOMC、経済見通し発表
17日‐3月18日 ブラジル中央銀行、Copom
17日‐3月18日 MIXiii ヘルステックIL(イスラエル・エルサレム)
18日 米FOMC最終日(声明発表とFRB議長会見)(FRB)
18日 アルゼンチン2025年第4四半期世帯アンケート結果(労働力調査)発表
18日 南ア第4四半期GDP発表
18日 ユーロスタット、2月CPI(HICP)発表
18日 香港2025年12月~2026年2月雇用統計発表
18日‐3月19日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)
19日 欧州中央銀行(ECB)定例理事会(独フランクフルト)
19日 京都府知事選告示(4月5日投開票)
19日 日米首脳会談(ワシントン)
19日 フィリピン2月BOP統計発表
19日 アルゼンチン2月貿易統計発表
19日 英国労働市場統計(11~1月)発表
19日 コロンビア1月輸入統計発表
19日‐3月20日 EU首脳会議(ブリュッセル)
20日 ロシア中央銀行理事会
20日 香港2月CPI発表
21日 南オーストラリア州議会選挙
21日 日本維新の会党大会(都内)
22日 鳥取市長選告示(29日投開票)
22日 仏地方統一選・決選投票
22日 スロベニア議会選

<3月23日‐3月29日>

23日 シンガポール2月CPI発表
23日 メキシコ1月小売・卸売販売指数発表
23日‐4月1日 人権理事会、恣意的拘禁に関する作業部会、第105会議(ジュネーブ)
23日‐4月3日 ICAO、理事会フェーズ、第237回会議(モントリオール)
24日 2月の欧州新車販売(欧州自動車工業会=ACEA)
24日 チリ金融政策決定会合
24日 台湾2月小売統計発表
24日‐3月26日 FHV 2026 - フード & ホテル ベトナム(ホーチミン)
24日‐3月27日 ボアオ・アジアフォーラム年次総会(海南省ボアオ)
24日‐4月2日 ICSC、第101回会議(ニューヨーク)
25日 英国2月CPI発表
25日 米国2025年第4四半期および2025年通年の国際収支統計発表
25日 チリ金融政策レポート発表
25日 米国第4四半期および2025年通年対外資産負債残高統計発表
25日 オーストラリア2月CPI発表
25日‐3月26日 欧州議会本会議
26日 ECB一般理事会
26日 EU外相理事会(貿易)
26日 香港2月貿易統計発表
26日 台湾2月雇用統計発表
26日 メキシコ金融政策決定会合
26日‐3月27日 G7外相会合(パリ近郊)
26日‐3月29日 世界貿易機関(WTO)閣僚会議(カメルーン)
27日 メキシコ2月貿易統計・雇用統計発表
27日 米国2025年第4四半期GDP(確定値)発表
28日 インド2月IIP発表

<3月30日‐4月5日>

30日‐3月31日 国際安全保障の文脈におけるICT分野の発展とICTの利用における責任ある国家行動の促進に関する世界メカニズム、組織セッション(ニューヨーク)
30日‐4月1日 人権理事会、国家人権機関の世界同盟、第39回会議(ジュネーブ)
30日‐4月2日 障害者権利委員会会期前作業部会第21会議(ジュネーブ)
31日 米国通商代表部(USTR)2026年外国貿易障壁報告書(NTE)提出期限
31日 コロンビア2月雇用統計発表・金融政策決定会合
31日 ドイツ2月労働市場統計発表
31日‐4月2日 トランプ米大統領が訪中
31日 3月の中国PMI(国家統計局)
3月中 OECD世界経済見通し発表

4月

1日 スロベニア議会選挙
1日 インドネシア2月貿易統計発表
1日 インドネシア3月CPI発表
2日 米国2月貿易統計発表
2日 カナダ2月貿易統計発表
2日 オーストラリア2月貿易統計発表
3日 米国3月雇用統計
6日 3月と第1四半期のベトナム社会・経済統計発表(GDP, CPI)
8日 チリ3月CPI発表
9日 コロンビア3月CPI発表
9日 メキシコ3月自動車生産・販売・輸出統計・CPI発表
10日 カンボジア3月貿易統計発表
10日 米国3月CPI発表
10日 ブラジル3月IPCA発表
12日 ペルー総選挙(大統領、上院・下院議員、アンデス議会議員選挙)
12日 ハンガリー議会選挙
12日 ベナン大統領選挙1回目投票
13日‐4月16日 InnoEX(香港)
13日‐4月18日 IMF・世界銀行春季総会(米国・ワシントン)
14日 アルゼンチン3月CPI発表
15日 ブラジル2月月間小売り調査発表
15日 イスラエル3月CPI発表
15日 米国財務省 半期為替政策報告書提出期限
15日‐4月30日 中国輸出入商品交易会(広州)
16日 米国3月小売統計
16日‐4月18日 Texpo 26(パキスタン)
16日‐4月19日 Beautycare Expo 2026 (ハノイ)
16日‐4月19日 IMF・世界銀行春季総会(ワシントンDC)
17日 CIS外相会議(ロシア・カリーニングラード)
20日‐4月22日 BEAUTY ASIA Singapore 2026(シンガポール)
21日‐4月24日 Food &Hospitality  Asia(FHA)2026(シンガポール)
22日 カザフスタン2025年経済活動別GDP発表
23日 カザフスタン2025年所得別GDP発表
23日 シンガポール3月CPI発表
23日 イスラエル3月財貿易統計発表
24日 メキシコ3月雇用統計発表
24日 ロシア中央銀行理事会
27日 メキシコ3月貿易統計発表
27日‐4月28日 チリ金融政策決定会合
28日‐4月29日 ブラジル中央銀行、Copom
28日‐4月29日 米国FOMC
29日 カナダ中銀政策金利発表・金融政策報告書発表
29日 アルゼンチン第1四半期貿易統計発表
29日 チリ1~3月雇用統計発表
29日 オーストラリア3月CPI発表
29日‐4月30日 Sydney Build Expo(シドニー)
30日 ブラジル3月全国家計サンプル調査発表
30日 コロンビア3月雇用統計発表・金融政策決定会合
30日 米国2026年第1四半期GDP(速報値)発表
4月以降 ミャンマー新政権発足
4月中(予定) カナダ経済声明
4月中 カーボベルデ議会選挙
4月初〜5月 第16期の第1回の国会会議(ベトナム)


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問