外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2026年2月10日(火)

外交・安保カレンダー (2月9日-15日)

[ 2026年外交・安保カレンダー ]


いつもは日本の内政などほとんどフォローしない欧米の外交専門誌が、珍しいことに、今回ばかりは日本の総選挙の結果に注目している。例えば、9日付フォーリンポリシー誌サイトで(アジアが専門とは思えない)某研究者兼編集者までが、

  • Sanae Takaichi took a massive risk and her gamble worked.
    (高市早苗は大きなリスクを冒し、その賭けは成功した。)
  • This was the biggest landslide election victory in the country’s post-World War II history, and it reinvigorates faith in the conservative LDP.
    (これは戦後最大の圧勝であり、保守的な自民党への信頼を再び高めた。)
  • Global markets appear optimistic. But economic stimulus is only one part of Takaichi’s ambitious agenda.
    (世界市場は楽観的な見方を示している。しかし、経済刺激策は高市氏の野心的な政策の一部に過ぎない。)
  • The prime minister also plans to use her party’s newfound supermajority to enact sweeping reforms to the country’s defense sector…..
    (首相はまた、自党が獲得した圧倒的多数を背景に、防衛分野における抜本的な改革も推進する方針だ・・・。)

などと書いているほどだ。今回ばかりは欧米でも高市首相の「電撃解散」に注目が集まっているのだろう。ちなみに、我がキヤノングローバル戦略研究所の吉岡明子主任研究員は、「ロシアメディアが『自民圧勝』を如何に伝えたか」と題して、実に「簡にして要を得た」コメントを送ってくれた。彼女のレポートは次の通りである。

  • 自民党の歴史的勝利となった2月8日の衆議院選については、ロシアの主要メディアも注目している。
  • 経済紙ヴェドモスチは、高市総理人気を「サナマニア」現象として紹介。コメルサントも、高市氏の「ポピュリズム的」な経済公約と、対中姿勢を中心とする自信に満ちた外交が、有権者から「白紙委任状」を引き出したとの分析を掲載している。
  • 日ロ関係への影響について、日本専門家の一部は高市政権が今後北方領土問題で「交渉再開」を模索する可能性について指摘している。
  • 他方、一般的には、対ロ制裁を含め、日本の対ロ関係に大きな変化は起こらないとの見方が現時点では主流となっている。

なお、今回の総選挙に関する筆者の見立ては、今週のジャパンタイムスに書くつもりなので、ご関心のある向きはご一読願いたい。サワリだけを簡単に言えば、今回の総選挙の結果は、

  • 自民党の圧勝、高市首相の大勝利というより、立憲民主党の大敗北であること。
  • それは単に特定の候補者の落選や立憲民主党の凋落だけではなく、戦後の日本国内政治が新しい時代に入ったことを暗示している・・・・ということだ。

詳しくは、ジャパンタイムスを読んでいただきたいが、現時点での筆者の勝手な見立てはこうだ。

先週も簡単に触れたとおり、日本の国内政治の「重心(英語ではcenter of gravity)」が、数十年前はレフトとセンターレフトの間だったのに、10年ぐらい前から徐々にセンターに戻り、最近では、それが徐々にではあるが、確実にセンターライトに移りつつある、ということに尽きる。

そうだとすれば、今後日本内政のベクトルがどの方向に向くかは別にして、何らかの「政界再編成」が不可避となろう。既に高市首相は、憲法改正を含む様々な改革、特に、国論を二分するような大胆な政策変更の可能性に言及し始めているが、この方針自体、個人的には賛成だ。

しかし、賛成だからこそ、これらの改革を慎重に、確実に、かつ堅実に一歩一歩進めていって欲しいと思う。当然ながら、これだけの大改革を目指す以上、各方面から批判や反対論が噴出することは間違いない。だが、その時に批判を抑え込む手段は、必ずしも「数」だけではないと思うからだ。

もう一つ、今回驚いたことがある。それは、筆者の外務省現役時代に、当時若く、元気で、堂々としていて、時に小憎らしく、何度も徹夜させられた苦い思い出の多い、あの懐かしい「野党議員」たちが、大挙して脆くも落選してしまったことだ。実名言及は差し控えるが、あの旧民主党系のツワモノ議員たちが何故・・・、と思うと「じわっ」と来る。これも時代が変わりつつあることを暗示するのだろうか。

新しい時代に向けて新しい政治家をリクルートする政党もあれば、それを怠った政党もある。旧立憲民主党は組織の新陳代謝が必ずしも十分ではなかったのか。一つの時代が終わり、次の時代の方向性が明確に見えてくるまでは、当分このような混沌とした状態が続くのかもしれない。

これを象徴するのが沖縄県政ではないか。今回沖縄では1区から4区まで、辺野古移転に反対する候補者が全員落選している。沖縄県知事は「高市旋風が吹いた。残念だが、厳粛に受け止める」と述べつつ、政党同士が「主義主張だけを述べてぶつかり合うだけ」の状況を批判しつつ、「プレイヤーの私が調整役になるのは政治信条からして考えにくい。調整役がいない以上、各政党が責任者を立て、妥協点を見つけるために真摯に向き合うべきだ」と述べたそうだ。何という無責任!

サンドウィッチマンではないが、「ちょっと、何言っているか、良く分からない・・」状態ではないか。県知事が調整役にならなかったら、一体誰が調整役になるのか。ここにも沖縄県政の混乱が見て取れる。このような状況は、恐らくは中央政界でも、大きくは違わないのだろう。

続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

2月10日 火曜日  オーストリア首相とチェコ首相、スロヴァキア訪問
2月11日 水曜日  イスラエル首相訪米、ホワイトハウスで首脳会談
バルバドスで総選挙
アフリカ連合外相会合開催(2日間、エチオピア)
EU国防相会合開催(ブラッセル)
2月12日 木曜日  バングラデシュで総選挙
EU首脳非公式会合(ブラッセル)
NATO国防相会合(ブラッセル)
2月13日 金曜日  ミュンヘン安保会議開始
2月14日 土曜日  アフリカ連合首脳会議(2日間、エチオピア)



最後はガザ・中東情勢だが、今回は6日に行われたイランとアメリカの交渉について書こう。交渉終了後に記者会見等はなかったらしく、交渉の結果は少しずつしか漏れてこない。それでも、報道によれば、イラン外相はアメリカ側との交渉で「ウラン濃縮を放棄することは決してない」「米国との戦争という脅威にも屈しない」と述べた。

予想通りの、いかにもイランらしい発言で、同国の一貫した態度は少なくとも表面上は変わっていないようだ。イラン当局は今も反政府系活動家に対する弾圧を続けており、イランが近い将来譲歩するとは思えない。他方、イランが米国との戦争を回避したいことも間違いはなく、何らかの表面的な譲歩を考えているフシすらある。

例えば、別の報道によれば、イラン側はウランの濃縮度を60%から引き下げる可能性についても言及したようだが、案の定、その見返りとしてイランは「すべての制裁が解除されること」を求めているようだ。これに対し、アメリカ側は高濃縮ウランをイラン国外に搬出することを求めているはず。近い将来合意に達することはないだろう。

他方、だからといってアメリカが直ちに対イラン大規模攻撃に踏み切る状況ではないだろうし、仮に対イラン攻撃を敢行すれば、恐らくアメリカは「得るものより、失うものが大きくなる」可能性すらある。イスラエルやサウジアラビア・アラブ首長国連邦も攻撃には反対するだろう。どうやら今回のアメリカとイランの交渉でも、あまり大きな進展は期待できないと思う。今週はこのくらいにしておこう。


2026年重要日程レポート6【2月9日版】

<今週以前から続く会議>

2月2日‐2月20日 ICAO、航空航法委員会、第231回会議(モントリオール)

2月

<2月9日‐2月15日>

9日 メキシコ1月CPI発表
9日 国安法違反で有罪判決を受けたリンゴ日報創業者の量刑宣告
9日‐2月12日 欧州議会本会議
9日‐2月12日 WHX Dubai(旧アラブヘルス)(ドバイ)
9日‐2月13日 IFAD、理事会、第49回会合(ローマ)
10日 フランス第4四半期失業率発表
10日 メキシコ1月自動車生産・販売・輸出統計発表
10日 ブラジル1月IPCA発表
10日 アルゼンチン1月CPI発表
10日‐2月13日 UNCITRAL、デジタル貿易・金融時代の法調和に関するコロキウム(ニューヨーク)
10日‐2月13日 ユニセフ執行委員会第1回定例会(ニューヨーク)
10日‐2月18日 茂木外相、中東・アジア歴訪へ出発
11日 メキシコ2025年12月鉱工業生産指数発表
11日 米国1月CPI発表
11日 1月の中国消費者物価指数(CPI)、卸売物価指数(PPI)(国家統計局)
11日 EU国防相理事会(ブリュッセル)
12日 ペルー金融政策決定会合
12日 英国第4四半期実質GDP成長率(速報値)発表
12日 イスラエル1月財貿易統計発表
12日 インド2026年1月消費者物価指数発表
12日 EU非公式首脳会議(ベルギー・リエージュ近郊)
12日 NATO国防相会合(ブリュッセル)
12日 バングラデシュ総選挙
12日‐2月18日 小泉進次郎防衛相が米国訪問(ホノルル、ロサンゼルス、ワシントン)
13日 ロシア中央銀行理事会
13日 ブラジル2025年12月月間小売り指数発表
13日 参院議院運営委員会理事会
13日 衆院議院運営委員会理事会
13日 改正総合法律支援法施行
13日 日韓首脳会談(奈良市)
13日 1月の米CPI(労働省)
13日‐2月15日 ミュンヘン安全保障会議(独ミュンヘン)
13日‐2月21日 リオのカーニバル開幕(ブラジル・リオデジャネイロ)
14日 日韓首脳が法隆寺視察(午前)
14日‐2月17日 リードギフトショー(オーストラリア)
15日 イスラエル1月CPI発表
15日‐2月16日 アフリカ連合(AU)サミット(エチオピア・アディスアベバ)
15日‐2月23日 中国の春節休暇

<2月16日‐2月22日>

16日 米・大統領の日(ワシントン生誕日)(米市場休場)
16日 フィリピン2025年12月OFW送金額発表
16日 日伊首脳会談(都内)
16日 カナダ1月CPI発表
16日 カザフスタン2025年貿易統計発表
16日 カザフスタン1月鉱工業生産指数発表
16日 軍縮委員会(ニューヨーク)
16日‐2月20日 UNCITRAL、第2作業部会(紛争解決)、第83回会合(ニューヨーク)
16日‐2月20日 人権理事会諮問委員会第34会議(ジュネーブ)
17日 米国1月小売統計
17日 ドイツ1月CPI発表
17日 英国労働市場統計(10~12月)発表
17日‐2月18日 エヴォーク・アグ「Evoke Ag」(オーストラリア)
18日 フランス1月CPI発表
18日 南ア1月CPI発表
18日 英国1月CPI発表
18日‐2月19日 国際エネルギー機関(IEA)閣僚理事会(パリ)
18日‐2月19日 国連女性機関執行委員会第1回定例会(ニューヨーク)
19日 アルゼンチン1月貿易統計発表
19日 イスラエル1月財貿易統計発表
19日 韓国前大統領、内乱首謀罪の判決
19日‐2月21日 全米知事会冬季会合(ワシントンDC)
20日 メキシコ2025年12月小売・卸売販売指数発表
22日 ラオス総選挙
22日 福岡県行橋市長選投開票
22日 香港2025年12月CPI発表

<2月23日‐3月1日>

23日 EU外相理事会(ブリュッセル)
23日 メキシコ2025年第4四半期GDP発表
23日 OECD2025年第4四半期G20貿易統計発表
24日 トランプ米大統領の一般教書演説
24日 ロシアのウクライナ侵攻開始から4年
24日 1月の欧州新車販売(欧州自動車工業会=ACEA)
25日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)
25日 タイ金融政策委員会1回目
25日 オーストラリア2026年1月CPI発表
25日 ユーロスタット、1月CPI(HICP)発表
25日 香港2026年1月CPI発表
26日 メキシコ1月雇用統計発表
26日 米国2025年第4四半期(改定値)および2025年通年GDP発表
27日 ドイツ1月労働市場統計発表
27日 メキシコ1月貿易統計発表
27日 インドGDP2025年度第3四半期統計発表
28日 インド2026年1月消費者物価指数発表

2月上旬 ブラジル1月IPCA発表
2月中 IMFチームの予算措置に関する訪問(パキスタン)
2026年前半 ロシア・アラブ首脳会議(場所未定)
2026年内 ロシア大統領がカザフスタン訪問を予定

3月

2日 インドネシア2月CPI発表
2日 カザフスタン2月CPI発表
3日 ブラジル2025年第4四半期GDP発表
3日 コロンビア1月輸出統計発表
4日 ユーロスタット、1月失業率発表
4日 香港1月小売統計発表
5日 台湾1月小売統計発表
5日 オーストラリア1月貿易統計発表
5日 ブラジル1月全国家計サンプル調査発表
5日 米国2026年1月貿易統計発表
6日 ユーロスタット、第4四半期実質GDP成長率発表
6日 コロンビア2月CPI発表
6日 チリ2月CPI発表
6日 米国2月雇用統計
6日 台湾2月CPI発表
6日 2月のベトナム社会・経済統計発表(CPI)
7日‐3月8日 キッズ&ファミリーフェア2026年(カンボジア)
8日‐3月11日 「VIFA EXPO 2026」ベトナム国際家具・ホームアクセサリーフェア(ホーチミン)
9日 メキシコ2月CPI・自動車生産・販売・輸出統計発表
9日 台湾2月貿易統計発表
9日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)
9日 チリ2月貿易統計発表
9日‐3月12日 欧州議会本会議
10日 フィリピン12月直接投資発表
10日 カンボジア2月貿易統計発表
10日 南ア第4四半期GDP発表
10日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会
11日 ドイツ2月CPI発表
11日 米国2月CPI発表
11日 チリ大統領就任式
11日 ブラジル1月月間小売り調査発表
12日 インド2月CPI発表
12日 アルゼンチン2月CPI発表
12日 ブラジル2月IPCA発表
12日 ペルー金融政策決定会合
12日 トルコ中銀金融政策会議(トルコ・イスタンブール)
13日 メキシコ1月鉱工業生産指数発表
13日 フランス2月CPI発表
15日 イスラエル2月CPI発表
16日 米国2月小売統計
16日 カザフスタン1月貿易統計発表
16日 カザフスタン1~2月鉱工業生産指数発表
16日 台湾2月投資統計発表
16日 フィリピン1月OFW送金額発表
16日 EU外相理事会
16日‐3月17日 サムソン国際スマートモビリティ・サミット2026年(テルアビブ)
17日 シンガポール2月貿易統計発表
17日 EU一般問題理事会
17日‐3月18日 米国FOMC、経済見通し発表
17日‐3月18日 ブラジル中央銀行、Copom
17日‐3月18日 MIXiii ヘルステックIL(イスラエル・エルサレム)
18日 アルゼンチン2025年第4四半期世帯アンケート結果(労働力調査)発表
18日 南ア第4四半期GDP発表
18日 ユーロスタット、2月CPI(HICP)発表
18日 香港2025年12月~2026年2月雇用統計発表
18日‐3月19日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)
19日 フィリピン2月BOP統計発表
19日 アルゼンチン2月貿易統計発表
19日 英国労働市場統計(11~1月)発表
19日 コロンビア1月輸入統計発表
20日 ロシア中央銀行理事会
20日 香港2月CPI発表
21日 南オーストラリア州議会選挙
23日 シンガポール2月CPI発表
23日 メキシコ1月小売・卸売販売指数発表
24日 チリ金融政策決定会合
24日 台湾2月小売統計発表
24日‐3月26日 FHV 2026 - フード & ホテル ベトナム(ホーチミン)
25日 英国2月CPI発表
25日 米国2025年第4四半期および2025年通年の国際収支統計発表
25日 チリ金融政策レポート発表
25日 米国第4四半期および2025年通年対外資産負債残高統計発表
25日 オーストラリア2月CPI発表
25日‐3月26日 欧州議会本会議
26日 ECB一般理事会
26日 EU外相理事会(貿易)
26日 香港2月貿易統計発表
26日 台湾2月雇用統計発表
26日 メキシコ金融政策決定会合
27日 メキシコ2月貿易統計・雇用統計発表
27日 米国2025年第4四半期GDP(確定値)発表
28日 インド2月IIP発表
31日 米国通商代表部(USTR)2026年外国貿易障壁報告書(NTE)提出期限
31日 コロンビア2月雇用統計発表・金融政策決定会合
31日 ドイツ2月労働市場統計発表
3月中 OECD世界経済見通し発表


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問