外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2025年11月26日(水)

外交・安保カレンダー (11月24日-30日)

[ 2025年外交・安保カレンダー ]


今週も「存立危機事態」に関する高市首相答弁をめぐる問題でメディアからのコメント依頼が続いた。「一年もすれば『合意しないことで合意』する」のだから、今は少し静観し、議論をより重要な内政、特に経済問題に集中すべきではないか。とは思うのだが、どうも日本メディアの付和雷同型「同調志向」は昔と変わっていないようだ。

昔といえば、今週筆者が強く感じたことは、日本国内の「世代交代」の流れである。特に、昨晩はそのことを痛感させられた。まず、夕刻、1980年代の筆者外相秘書官時代の各省大臣秘書官たちの集まりに参加した。当時各省の働き盛りだった大秘書官たちも今や年齢は平均で「喜寿」となる。「古希」の筆者など今も「若輩者」なのだ。

そこで、誤解を恐れずに書くのだが、当時の官僚たちには良い意味で天下国家を論ずる「矜持」があった。責任分野は異なるものの、政治家の横暴(失礼)と戦う能力と気概があった。それが今はどうだ。「昔は良かった」とは言わぬが、行政と政治と報道の関係は大きく変わってしまったのでは?諸先輩の話を聞きながら、ふとそう考えた。

振り返ってみれば、当時はインターネットなどなく、情報は新聞雑誌TVなど、今で言う「オールドメディア」が独占していた時代だ。メディアの論調は基本的に「左」であり、中道左派的言動を繰り返す記者たちが大手を振っていた頃である。その種の報道でどれほど無駄な時間を費やしたことか?今や笑い話になりつつあるのだが・・・。

その懐かしい元秘書官方との夕食を中座した後、今度はテレビ朝日のスタジオに向かった。でも、出演を依頼されたのはオールドメディアの「●●ステーション」ではなく、あの「アベプラ」だ。「アベプラ」と聞いてピンと来ない方々のため注釈を加えれば、正式名称は「アベマ・プライム」、若者向けのネット配信型ニュース番組である。

そのコンセプトは、Wikipediaによれば、“オトナの事情をスルーしまくる、尖りまくったニュース番組”で、普段地上波テレビ番組を視聴しない若者層に向けたニュースショーであり、AbemaNewsの旗艦番組、とある。これまでも何度が出演したことはあるが、内容もスタジオの雰囲気も実にユニークなプログラムだ。

勿論、その晩のテーマは「日中関係に出口戦略はあるか?」だった。しかし、今回も痛感したのは、若い世代の出演者たちの(想像以上に)バランスのとれた「保守感覚」だった。確かに「●●ステーション」とは論調が少し違う。やはり、日本の政治社会文化で起こりつつある「世代交代」はここまで来ているのだ、と考えてしまった。

最近、米国世論調査機関が「米国人がどこからニュースを得ているか」について興味深いデータを発表している。それによれば、米国人の5人に1人(21%)は、ニュースを既存の新聞雑誌TVラジオなどではなく、ネット上の「ニュース・インフルエンサー」から直接得ているのだそうだ。

しかも、この「21%」はあくまで平均で、年齢別ではゾッとする数字が出ている。ニュース・インフルエンサーからニュースを得ている割合は、年齢18-29歳で38%、30-49歳で23%、50-64歳で16%、65歳以上では僅か8%、というのだ。こうした数字、恐らく日本でもあまり大きく変わらないのではないか。

要するに、政治の世界でも、世代交代は世界規模で進んでいるようなのだ。

さて続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

11月25日 火曜日  親ウクライナ諸国グループの指導者がテレビ会議
EU・アフリカ連合首脳会議(2日間、アンゴラ)
11月27日 木曜日  集団安全保障条約機構首脳会議(キルギス)
Stヴィンセントとグレナダで議会選挙
11月28日 金曜日  国際刑事裁判所、ドュテルテ前フィリピン大統領の上告審で判決
11月30日 日曜日  ホンドュラスで総選挙
キルギスタンで議会選挙
12月1日 月曜日  セントルシアで総選挙



最後は、ガザ・中東情勢だが、ガザでは今も「戦争でも平和でもない」状態が続いている。そんな中、今週筆者が気になったのは、イランの核開発疑惑の続報だ。米大統領が「完全に破壊した」はずの高濃縮度ウランは今どこにあるのか?地下深くで埋もれたままか、それとも米国の攻撃前に運び出し、どこかに隠匿されているのか。報道によれば原爆10発分以上との噂もある。しかし、現在はIAEAの査察もなく、新たな核合意もなく、対イラン制裁が再発動され、イランは沈黙を守っている。こうなれば、将来を読むのは決して難しくないだろう。

イスラエルはほぼ間違いなく、イランの核関連施設を、新たな未公表の施設も含め、再び攻撃するだろう。しかも、今回はイランが自制するかどうかは分からない。米イスラエルとイランの緊張は、これまで以上に海図のない水域に入っていくだろう。双方の攻撃がエスカレートすれば、湾岸地域全体が戦闘区域となる悪夢も否定できない。うーん、それが分かっていても、紛争再勃発を止める手段は分からない。今確実なことは、イスラエルもイランもそのための軍事的手段・計画について最終調整を終えつつある可能性がある、ということだけ。あな、恐ろしや!今週はこのくらいにしておこう。

2025年重要日程レポート47【11月24日版】

<今週以前から続く会議>

11月17日‐11月27日 ILO理事会およびその委員会、第355回会議(ジュネーブ)
11月17日‐11月28日 ICAO、航空航法委員会、第230回会議(モントリオール)
11月18日‐11月28日 ICAO理事会フェーズ第236回会議(モントリオール)
11月21日‐11月27日 トンガ国王トゥポウ6世が中国を訪問
11月23日‐11月27日 UNIDO総会第21回会議(リヤド)

11月

<11月24日‐11月30日>

24日 高市早苗首相が帰国
24日 ロシア1~8月鉱工業生産指数発表
24日‐11月25日  EU-アフリカ連合(AU)サミット
24日 EU外相理事会(貿易)
24日‐11月27日 ヘルスILウィーク(テルアビブ)
24日‐11月27日 欧州議会本会議
24日‐11月28日 UNCTAD貿易開発委員会第72回会合(ジュネーブ)
24日‐11月28日 現代の奴隷制に関する国連任意信託基金、理事会、第30回会議(ジュネーブ)
24日‐12月3日 危険物輸送に関する専門家小委員会第67回会合(ジュネーブ)
24日‐12月3日 IMO総会第34回会議(ロンドン) 
25日 パレスチナ人民の奪い得ない権利の行使に関する委員会、パレスチナ人民との国際連帯デーを記念した特別会議(未定)(ニューヨーク)
25日 閣議(首相官邸)
25日 メキシコ9月小売・卸売販売指数発表
25日 10月の欧州新車販売(欧州自動車工業会=ACEA)
25日 会計検査院第55回臨時会(ニューヨーク)
25日‐11月26日 国連ハビタット執行理事会第3回定例会(ナイロビ)
26日 米国第3四半期GDP(改定値)発表
26日 党首討論
26日 米地区連銀景況報告(ベージュブック)(FRB)
26日 10月の米個人消費支出(PCE)物価指数(商務省)
27日 金融政策発表(パキスタン)
27日 イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの停戦発効から1年
27日 トルコ10月貿易統計発表
27日 メキシコ10月貿易統計発表
27日‐11月28日 人権理事会、少数民族問題フォーラム、第18回会議(ジュネーブ)
28日 EU外相理事会(防衛)
28日 メキシコ10月雇用統計発表
28日 ブラジル10月全国家計サンプル調査発表
28日 インド10月IIP発表
28日 インドGDP第2四半期統計発表
28日‐11月30日 アニメフェスティバルアジアシンガポール2025(シンガポール)
29日 パレスチナ人民との国際連帯の日
30日 11月の中国製造業購買担当者景況指数(PMI)(国家統計局)
30日 ホンジュラス大統領選
11月中 OECD2025年第3四半期G20貿易統計発表
11月中 集団安全保障条約(CSTO)首脳会議(キルギス・ビシケク)

12月

1日 インドネシア10月貿易統計発表
1日 インドネシア11月CPI発表
1日‐12月5日 第19回世界水会議 「The World Water Congress」(モロッコ・マラケシュ)
1日‐12月5日 非核兵器地帯問題の包括的研究に関する専門家グループ(ニューヨーク)
1日‐12月5日 UNEP常任代表者オープンエンド委員会第7回会合(ナイロビ)
1日‐12月5日 FAO理事会第179回会議(ローマ)
1日‐12月6日 国際刑事裁判所ローマ規程締約国会議第24回会議(デン・ハーグ)
1日‐12月11日 すべての移民労働者とその家族の権利の保護に関する委員会、第41回会議(ジュネーブ)
2日 ブラジル10月鉱工業生産指数発表
2日 南ア第3四半期GDP発表
2日 モーションコントロール、オートメーション、ロボティクス&パワーソリューション 2025(イスラエル・テルアビブ)
3日 韓国の「非常戒厳」宣言から1年
3日 トルコ11月CPI発表
3日‐12月5日 ドイツ連邦共和国大統領の英国公式訪問
3日‐12月6日 「Manufacturing Indonesia 2025」製造業インドネシア2025年(ジャカルタ)
4日 IMO理事会第136回会議(ロンドン)
4日 ブラジル第3四半期GDP発表
4日 米国10月貿易統計発表
4日‐12月6日 「Vietnam Medi-Pharm Expo 2025」ベトナムメディファーマエキスポ2025年 (ベトナム)
5日 ユーロスタット、第3四半期実質GDP成長率発表
5日 米国11月雇用統計
8日 中国11月貿易統計発表
8日 サウジアラビア第3四半期GDP発表
8日 EU競争力担当理事会(域内市場・産業)
8日‐12月9日 アグロ・マショブ2025(イスラエル・オファキム)
9日 EU競争力担当理事会(研究・宇宙)
9日 メキシコ11月CPI発表
9日‐12月10日 ブラジル中央銀行、Copom
9日‐12月10日 米国FOMC、経済見通し発表
9日‐12月12日 食品展示会「Food Africa」(エジプト・カイロ)
10日 ブラジル11月IPCA発表
10日 カナダ中央銀行政策金利発表
10日 米国11月CPI発表
10日 中国11月CPI発表
10日 ロシア11月CPI発表
10日‐12月13日 国際食品・飲料展示会「Salon international de l'alimentation et des boissons」(モロッコ・カサブランカ)
11日 イスラエル11月財貿易統計発表
11日 トルコ中銀金融政策会議
11日 ブラジル10月月間小売り調査発表
11日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)
12日 トルコ11月国際収支統計発表
12日 ロシア第3四半期経済活動別GDP(速報値)発表
12日 フランス11月CPI発表
12日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会
12日 メキシコ10月鉱工業生産指数発表
12日 インド11月CPI発表
15日 イスラエル11月CPI発表
15日 サウジアラビア11月CPI発表
15日 トルコ11月中央政府予算
15日 中国11月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
15日 パキスタン中央銀行金融政策決定会合
15日 EU外相理事会
15日‐12月18日 欧州議会本会議
16日 英国労働市場統計(8~10月)
16日 EU一般問題理事会
17日 南ア11月CPI発表
17日 英国11月CPI発表
17日 ユーロスタット、11月CPI(HICP)発表
17日 米国11月小売統計発表
17日‐12月18日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会
18日 ECB定例理事会(金融政策発表と記者会見)(フランクフルト)
18日 メキシコ10月小売・卸売販売指数発表
18日 米国第3四半期国際収支統計発表
18日‐12月19日 欧州理事会(EU首脳会合)
19日 ロシア中央銀行理事会
19日 米国第3四半期GDP(確定値)発表
23日 メキシコ11月貿易統計発表
24日 メキシコ11月雇用統計発表
24日 米国第3四半期対外資産負債残高統計発表
24日 ロシア1~11月鉱工業生産指数発表
26日 ケニア12月CPI発表
26日 インド11月IIP発表
28日 ミャンマー総選挙
28日 中央アフリカ大統領・国民議会議員選挙
30日 ブラジル11月全国家計サンプル調査発表
30日 ロシア第3四半期需要項目別GDP(速報値)発表
31日 トルコ11月貿易統計発表
12月中 最高ユーラシア経済評議会(ロシア・サンクトペテルブルク)
12月中 ロシア大統領がインド訪問
12月中 ギニア大統領・国民議会議員選挙


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問