外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2025年11月18日(火)

外交・安保カレンダー (11月17日-23日)

[ 2025年外交・安保カレンダー ]


先週、内外メディアなど各方面から「日中関係は一体どうなってしまうのか?」といった類の質問が舞い込み、結構往生した。何で内外、特に日本のマスコミは大騒ぎするのだろう?勿論、懸念がないとは言わないが、日本のマスコミや評論家が騒いだところで、問題の解決に資するどころか、逆効果にもなりかねないというのに・・・。

筆者の答えは単純明快、「そもそも21世紀に入り、日中間で合意らしい合意を結んだことはない」「安倍政権時代の『戦略的互恵関係』合意(2006年)や『4項目合意』(2014年)でも実質的な合意はなかった」、されば「心配ご無用、日中は一年もすれば『合意しないことで合意』するだろう」と答えている。

本問題については今週の産経新聞WorldWatchに詳しく書いた。木曜日掲載だが、お題は「中国共産党のトリセツ」、すなわち、中国側は①「台湾、抗日」につき安易に妥協しない、②面子が潰れれば論理は通用しない、③我に返るまでには時間がかかる、④中国側の不利益を自覚させる、⑤面子が立たないと妥協しない、ということだ。

「存立危機事態」に関する高市答弁は従来の「曖昧戦略」の枠内であり、基本政策に一切変更はない。法律上日本は、中国が米国を攻撃した場合、同盟国・米国を支援し得るということ。嫌なら米国を「攻撃しなければ良い」だけの話だろう。えっ、それとも中国は、まさか、対米攻撃を本気で考えているのかね?それなら話は別だろう。

それはともかく、過去の2回の「合意」に至る過程で、中国側は安倍首相に「靖国参拝断念」と「尖閣をめぐる領土問題の存在」を認めるよう求めた。この2点に加え、今回中国側は「台湾有事への非介入」を求めてくるだろう。となれば、前回と同様、出口は「合意しないことに合意」する決着しかないが、それにはかなり時間がかかるはずだ。

筆者の「トリセツ」が正しければ、中国側の激高は当分続き、その間、中国側に自らの不利益を考えさせる必要がある。具体的には、今回の中国側「大騒ぎ」が続けば、高市政権の支持率は高止まり、日米軍事協力の絆は強まり、中国進出日本企業が動揺する恐れがあるということだ。

当面はプロの外交当局間の水面下の努力を気長に見守るしかないだろう。

さて続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

11月18日 火曜日  サウジ皇太子訪米、米大統領と会談
NATO事務局長、スロヴァキア訪問
モルドバ首相、欧州委員会委員長と会談
11月19日 水曜日  スウェーデン首相訪独、独首相と会談
11月20日 木曜日  トンガで総選挙
11月21日 金曜日  国連COP30閉幕(ブラジル)
11月22日 土曜日  G20首脳会議(南アフリカ、2日間)
11月23日 日曜日  ギニアビサウで総選挙
スルプスカ共和国(ボスニアヘルツェゴビナ連邦の共和国)で前倒し大統領選
11月24日 月曜日  EU・米貿易大臣会合(ブラッセル)
EU・アフリカ連合首脳会議(アンゴラ)


最後は、ガザ・中東情勢だが、ガザでは引き続き「停戦」でも「戦闘」でもない、つまり戦争でも平和でもない状態が続いている。そんな中、今週サウジ皇太子が米大統領と会談する。下馬評では、サウジは①F-35を含む米国製武器の購入と、②米国からの安全保障の確約を、米側は③サウジがイスラエルとの関係正常化に踏み切ることを、それぞれ求めているらしい。

しかし、ガザを含むパレスチナ問題でイスラエルが妥協しない中、サウジがイスラエルと関係改善に踏み切ることは難しいだろう。サウジがハマースやパレスチナ自治政府を信用しているとは思えない。だが、今パレスチナを見捨てれば、サウジの「アラブの盟主」としての名声が傷付いてしまうからだ。

一方、米側にとってF-35をサウジに売るか否かは微妙な判断だろう。F-22を除けば、世界最高峰にあるステルス戦闘機の技術情報がサウジから中国へ流れることを米国関係者は懸念しているらしい。勿論、実に真っ当な懸念だろう。それだけ米国はサウジを信用していないということか・・・。米・サウジ首脳会談の結果は要注意である。今週はこのくらいにしておこう。

2025年重要日程レポート46【11月17日版】

<今週以前から続く会議>

11月10日‐11月21日 国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)(ブラジル・ベレン)
11月10日‐11月21日 国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)(ブラジル・リオデジャネイロ)
11月10日‐11月21日 国際麻薬統制委員会第144回会議(ウイーン)

11月

<11月17日‐11月23日>

17日 イスラエル10月財貿易統計発表
17日 EU一般問題理事会
17日 日インドネシア外務・防衛担当閣僚協議(午後、都内)
17日 バングラデシュのハシナ前首相の判決言い渡し
17日 言論NPOの世論調査公表
17日‐11月18日 上海協力機構(SCO)首相会議(モスクワ)
17日‐11月21日 IAEA定例理事会(ウイーン)
17日‐11月21日 第19回ASEAN国防高官会議〔19th ASEAN Defence Ministers’ Meeting (ADMM)〕、第12回ASEAN国防高官会議プラスおよび関連会議〔12th ASEAN Defence Ministers’ Meeting-Plus(12th ADMM-Plus)and Related Meetings〕(マレーシア)
17日‐11月21日 WFP執行委員会第2回定例会(ローマ)
17日‐11月27日 ILO理事会およびその委員会、第355回会議(ジュネーブ)
17日‐11月28日 ICAO、航空航法委員会、第230回会議(モントリオール)
18日 北朝鮮のミサイル工業節
18日‐11月20日 PIPOC 2025 - 国際パーム油会議・展示会(マレーシア)
18日‐11月28日 ICAO理事会フェーズ第236回会議(モントリオール)
19日 ユーロスタット、10月CPI(HICP)発表
19日 南ア9月CPI発表
19日 英国10月CPI発表
19日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会、非金融政策
19日‐12月20日 UNRWA諮問委員会定例会(アンマン)
19日‐12月21日 IAEA理事会(ウイーン)
19日‐11月22日 ベトナムウッド2025(ホーチミン)
19日‐11月22日 加工・包装展(ジャカルタ)
19日‐11月22日 プラスチック・ゴム博覧会(ジャカルタ)
20日 ECB一般理事会(ハイブリッド)
20日‐11月21日 IMO理事会第135回会議(ロンドン)
20日‐11月21日 2025年アジア太平洋水素サミット・展示会(オーストラリア)
20日‐11月22日 グローバル電子インテリジェント製造ショー - ベトナム 2025(ハノイ)
21日 EU外相理事会(開発)
21日 メキシコ第3四半期GDP発表
22日‐11月23日 G20サミット(南アフリカ共和国・ヨハネスブルク)
23日 ギニアビサウ大統領・国民議会議員選挙
23日 サウジアラビア10月CPI発表
23日‐11月27日 UNIDO総会第21回会議(リヤド)

<11月24日‐11月30日>

24日 ロシア1~8月鉱工業生産指数発表
24日‐11月25日  EU-アフリカ連合(AU)サミット
24日 EU外相理事会(貿易)
24日‐11月27日 ヘルスILウィーク(テルアビブ)
24日‐11月27日 欧州議会本会議
24日‐11月28日 UNCTAD貿易開発委員会第72回会合(ジュネーブ)
24日‐11月28日 現代の奴隷制に関する国連任意信託基金、理事会、第30回会議(ジュネーブ)
24日‐12月3日 危険物輸送に関する専門家小委員会第67回会合(ジュネーブ)
24日‐12月12日 IMO総会第34回会議(ロンドン) 
25日 メキシコ9月小売・卸売販売指数発表
25日 10月の欧州新車販売(欧州自動車工業会=ACEA)
25日 会計検査院第55回臨時会(ニューヨーク)
25日‐11月26日 国連ハビタット執行理事会第3回定例会(ナイロビ)
26日 米国第3四半期GDP(改定値)発表
26日 米地区連銀景況報告(ベージュブック)(FRB)
26日 10月の米個人消費支出(PCE)物価指数(商務省)
27日 金融政策発表(パキスタン)
27日 トルコ10月貿易統計発表
27日 メキシコ10月貿易統計発表
27日‐11月28日 人権理事会、少数民族問題フォーラム、第18回会議(ジュネーブ)
28日 EU外相理事会(防衛)
28日 メキシコ10月雇用統計発表
28日 ブラジル10月全国家計サンプル調査発表
28日 インド10月IIP発表
28日 インドGDP第2四半期統計発表
28日‐11月30日 アニメフェスティバルアジアシンガポール2025(シンガポール)
30日 ホンジュラス大統領選
11月中 OECD2025年第3四半期G20貿易統計発表
11月中 集団安全保障条約(CSTO)首脳会議(キルギス・ビシケク)

12月

1日 インドネシア10月貿易統計発表
1日 インドネシア11月CPI発表
1日‐12月5日 第19回世界水会議 「The World Water Congress」(モロッコ・マラケシュ)
2日 ブラジル10月鉱工業生産指数発表
2日 南ア第3四半期GDP発表
2日 モーションコントロール、オートメーション、ロボティクス&パワーソリューション 2025(イスラエル・テルアビブ)
3日 韓国の「非常戒厳」宣言から1年
3日 トルコ11月CPI発表
3日‐12月6日 「Manufacturing Indonesia 2025」製造業インドネシア2025年(ジャカルタ)
4日 ブラジル第3四半期GDP発表
4日 米国10月貿易統計発表
4日‐12月6日 「Vietnam Medi-Pharm Expo 2025」ベトナムメディファーマエキスポ2025年 (ベトナム)
5日 ユーロスタット、第3四半期実質GDP成長率発表
5日 米国11月雇用統計
8日 中国11月貿易統計発表
8日 サウジアラビア第3四半期GDP発表
8日 EU競争力担当理事会(域内市場・産業)
8日‐12月9日 アグロ・マショブ2025(イスラエル・オファキム)
9日 EU競争力担当理事会(研究・宇宙)
9日 メキシコ11月CPI発表
9日‐12月10日 ブラジル中央銀行、Copom
9日‐12月10日 米国FOMC、経済見通し発表
9日‐12月12日 食品展示会「Food Africa」(エジプト・カイロ)
10日 ブラジル11月IPCA発表
10日 カナダ中央銀行政策金利発表
10日 米国11月CPI発表
10日 中国11月CPI発表
10日 ロシア11月CPI発表
10日‐12月13日 国際食品・飲料展示会「Salon international de l'alimentation et des boissons」(モロッコ・カサブランカ)
11日 イスラエル11月財貿易統計発表
11日 トルコ中銀金融政策会議
11日 ブラジル10月月間小売り調査発表
11日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)
12日 トルコ11月国際収支統計発表
12日 ロシア第3四半期経済活動別GDP(速報値)発表
12日 フランス11月CPI発表
12日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会
12日 メキシコ10月鉱工業生産指数発表
12日 インド11月CPI発表
15日 イスラエル11月CPI発表
15日 サウジアラビア11月CPI発表
15日 トルコ11月中央政府予算
15日 中国11月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
15日 パキスタン中央銀行金融政策決定会合
15日 EU外相理事会
15日‐12月18日 欧州議会本会議
16日 英国労働市場統計(8~10月)
16日 EU一般問題理事会
17日 南ア11月CPI発表
17日 英国11月CPI発表
17日 ユーロスタット、11月CPI(HICP)発表
17日 米国11月小売統計発表
17日‐12月18日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会
18日 ECB定例理事会(金融政策発表と記者会見)(フランクフルト)
18日 メキシコ10月小売・卸売販売指数発表
18日 米国第3四半期国際収支統計発表
18日‐12月19日 欧州理事会(EU首脳会合)
19日 ロシア中央銀行理事会
19日 米国第3四半期GDP(確定値)発表
23日 メキシコ11月貿易統計発表
24日 メキシコ11月雇用統計発表
24日 米国第3四半期対外資産負債残高統計発表
24日 ロシア1~11月鉱工業生産指数発表
26日 ケニア12月CPI発表
26日 インド11月IIP発表
28日 ミャンマー総選挙
28日 中央アフリカ大統領・国民議会議員選挙
30日 ブラジル11月全国家計サンプル調査発表
30日 ロシア第3四半期需要項目別GDP(速報値)発表
31日 トルコ11月貿易統計発表
12月中 最高ユーラシア経済評議会(ロシア・サンクトペテルブルク)
12月中 ロシア大統領がインド訪問
12月中 ギニア大統領・国民議会議員選挙


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問