外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2025年3月13日(木)

外交・安保カレンダー (3月10日-16日)

[ 2025年外交・安保カレンダー ]


今週も執筆が大幅に遅れてしまった。人のせいにするのは潔くないが、今日こそ書こう、書こうと思う傍からトランプ政権が必ず「何か」を仕出かしてくれる。初めは面白かったが、もういい加減疲れてしまった。あの人の一挙手一投足で一喜一憂するのはバカバカしく、時間の無駄だと思うようになったのだから、慣れとは恐ろしいものだ。

そのトランプ政権の悪影響は今や経済にも及びつつある。外交とは交渉の連続だから、一定の効果が出るには、ある程度時間がかかることが多い。これに対し、経済の方は「time is money」だから、経営者や投資家たちは直ちに反応する。経済の方が外交よりも、結果が出るまでの「時間差」はずっと短いのかもしれない。

それでも今週は、2週間前のホワイトハウスでの「驚くべき」やりとりの結果が早速出ている。サウジアラビアで米国務長官と大統領補佐官と協議したクライナ高官が、米側提案の「30日間即時停戦」案を受け入れたからだ。ウクライナにとっては「大幅譲歩」だが、背に腹は代えられない、というところか・・・。

それにしてもこのトランプ政権の手法は効果的だった。筆者はこれを「地上げ屋・示談屋」型交渉と呼ぶ。さすがトランプは不動産屋だ。立ち退きに応じない商店のシャッターにその筋が小型トラックで突っ込み因縁をつけ始める。その後、弁護士らしき人物がやってきて、「この辺で立ち退きに応じたらどうか」などと笑顔で示談を勧める。

決して「見事」とは言えないが、実に効果的ではないか。これを米国政府がやるのだから、ウクライナのような国は一溜りもないだろう。この種の「恫喝」はトランプ外交の常道。振り返ってみれば、テレビ放映されたホワイトハウスでの「ハプニング」もトランプ政権側が意図的に仕掛けたのでは、と勘繰りたくなるほどだ。

だが、短期的にはこれも「アリ」なのかもしれないが、中長期的には「ナシ」だろう。こんな「反社」的な手法がまかり通るのであれば、世の中の価値観は急速に変化し始めるだろう。「一国の安全」は外国からの「確約」からではなく、自らの「力」によってのみ確保される、となれば各国首脳は如何に行動し始めるか・・・。

こんなこと、トランプ政権は考えたこともないだろうが、答えは一つ。これからは世界的規模で「軍備拡大」競争が始まるということ。米国が同盟国に対して「安全保障の確約」を渋るようになれば、同盟国は軍拡に走らざるを得ない。当然米国の敵対国もこれに対応して、更なる軍拡を進めるに違いないからだ。

しかも、最近トランプ氏は「日本が米国を守らない『日米安保条約』はおかしい」といい始めた。戦後日本の「空想的平和主義」の時代なら、日本側も適度に反発して済んだだろう。しかし、これまでのトランプ氏の数限りない暴言・放言・思い違いにも拘わらず、実はこの発言自体、決して「間違い」ではない、のかもしれない・・・。

もしそうだとすれば、日本は何をすべきなのか?第二期トランプ政権発足わずか50日だが、日本は今一度、この珍しく「本質を突いている」トランプ発言の意味を熟考すべき時が来ているのかもしれない。これらの点については来週、更に論を進めたいと思っている。

続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

3月11日 火曜日  米・ウクライナ高官協議(ジェッダ)
グリーンランド、前倒し議会選挙
仏政府、パリ国防戦略フォーラム会合を主催(3日間)
NATO事務総長、コソヴォ大統領と会談
インド首相、モーリシャス訪問(2日間)
3月12日 水曜日 ベリーズ、総選挙
ドイツ首相、欧州理事会議長と会談
G7外相会合開催(3日間、ケベック)
3月13日 木曜日 南アフリカ大統領、欧州委員会委員長と会談



最後にガザ・中東情勢について一言。ガザ停戦は未だ第二段階に入っていないが、今はラマダン月なので惰性で「停戦」が続いているようだ。いつもの膠着状態で関係者は「交渉しているフリ」をしているが、このまま「第一段階」の事実上の延長がダラダラ続くのではないか。要するに問題解決に向けた動きはない、ということだ。

それより気になるのはイラン国内の動きで、米国との交渉を進めようとする改革派の高官が先日失脚させられる一方、イラン最高指導者は米国との「交渉」を拒否し続けている。筆者の言う「強硬派のパラダイス」が再び出現しつつある。この点については、今週の産経新聞WorldWatchをご一読願いたい。要するに、ハマースもイスラエルも当面「様子見」を決め込む、ということ。今週はこのくらいにしておこう。

2025年重要日程レポート10【3月10日版】

<今週以前から続く会議>

1月20日‐3月28日 軍縮会議、第一部(ジュネーブ) 
2月11日‐5月10日 上院議員候補者および政党の選挙活動期間(フィリピン)
2月17日‐3月14日 平和維持活動に関する特別委員会及びその作業部会の実質的会合(ニューヨーク)
2月17日‐3月21日 大陸棚限界委員会第63回会議(ニューヨーク)
2月19日‐3月20日 Foresighting Forum 2025: Charging Forward(オーストラリア)
2月24日‐4月4日 人権理事会第58回会議(ジュネーブ)
3月3日‐3月14日 国際海底機構、法律技術委員会(パート 1)(キングストン)
3月3日‐3月21日 障害者権利委員会、第32回会議(ジュネーブ)
3月3日‐3月28日 人権委員会第143回会議(ジュネーブ)
3月9日‐3月11日 Nano.IL.2025(イスラエル・エルサレム)

3月

<3月10日‐3月16日>

10日 フィリピン12月直接投資発表
10日 カンボジア2月貿易統計発表
10日 参院予算委員会に石破茂首相が出席し集中審議
10日‐3月12日 国家人権機関の世界同盟、第38回会合(ジュネーブ)
10日‐3月14日 国連拷問被害者ボランティア基金理事会第61回会議(ジュネーブ)
10日‐3月14日 麻薬委員会、第68回会議(ウイーン)
10日‐3月20日 ILO、理事会及びその委員会、第353回会議(ジュネーブ)
10日‐3月21日 女性の地位に関する委員会、第69回会議(ニューヨーク)
10日‐4月4日 ICAO、理事会フェーズ、第234回会議(モントッリオール)
10日‐4月4日 ICAO、航空航法委員会、第228回会議(モントッリオール)
11日 グリーンランド総選挙
12日 マレーシア1月IIP発表
12日 インド2024年12月IIP発表
12日 インド2月CPI発表
12日 米国2月CPI発表
12日 カナダ中央銀行政策金利発表
12日‐3月13日 経済社会理事会、開発協力フォーラム(ニューヨーク)
12日‐3月14日 先進7カ国(G7)外相会合(カナダ・シャルルボワ)
13日 参院予算委が中央公聴会
13日 日マーシャル諸島首脳会談(午後、都内)
13日 衆院憲法審査会が今国会初討議
13日‐3月21日 国家人権機関世界連合、認定小委員会、第 1 回会合(ジュネーブ)
14日 アルゼンチン2月CPI発表
14日 フランス2月CPI発表
14日 ドイツ2月CPI発表
16日 千葉市長選投開票
16日 千葉県知事選投開票

<3月17日‐3月23日>

17日 米国2月小売統計発表
17日 EU外相理事会(ブリュッセル)
17日 シンガポール2月貿易統計発表
17日 フィリピン1月OFW送金額発表
17日‐3月21日 米エヌビディアの開発者会議「GTC2025」(米サンノゼ)
18日‐3月19日 Energy Storage Australia 2025(オーストラリア)
18日‐3月19日 ブラジル中央銀行、Copom
18日‐3月19日 米国FOMC、経済見通し発表
18日‐3月28日 ICSC、第99回会議(ニューヨーク)
19日 ユーロスタット、2月CPI(HICP)発表
19日 フィリピン2月BOP統計発表
19日 フィンテック・ジャンクション(テルアビブ)
20日 香港2月CPI発表
20日 米国第2024年第4四半期国際収支統計発表
20日 台湾2月投資統計発表
20日 UNEP常任代表委員会第169回会合(ナイロビ)
20日 秋田県知事選告示(4月6日投開票)
20日‐3月21日 欧州理事会(ブリュッセル)
22日 日中韓外相会談(見通し)(都内)

<3月24日‐3月30日>

24日‐3月26日 サイバーテック・グローバル(テルアビブ)
24日‐3月27日 ブラジルのルラ大統領が国賓来日
24日‐3月28日  UNCITRAL、作業部会IV(電子商取引)、第69回会合(ニューヨーク)
25日‐3月27日 SEA ASIA 2025(シンガポール)
25日‐3月27日 国連ハビタット、執行委員会、第1回定例会議(ナイロビ)
25日‐3月28日 ボアオ・アジアフォーラム年次総会(中国海南省ボアオ)
26日 米国2024年第4四半期対外資産負債残高統計発表
26日 英国2月CPI発表
27日 米国2024年第4四半期GDP(確定値)発表
28日 メキシコ2月雇用統計発表
28日 ドイツ2月労働市場統計発表
28日‐5月10日 代議院、国会議員、州、市、町村長候補者の選挙活動期間(フィリピン)

<3月31日‐4月6日>

31日 米国通商代表部(USTR)2025年外国貿易障壁報告書(NTE)提出期限
31日 コロンビア2月雇用統計発表

4月

1日 イスラエル・マシンビジョン会議2025(テルアビブ)
1日 ペルー3月CPI発表
1日 ユーロスタット、2月失業率発表
1日 米国商務長官 通商政策報告書提出期限
1日 米国財務長官 通商政策報告書提出期限
1日 米国通商代表部(USTR)通商政策報告書提出期限
1日 インドネシア3月CPI発表
2日 韓国3月CPI発表
2日 ブラジル2月鉱工業生産指数発表
2日 コロンビア2月輸出統計発表
2日‐4月3日 EU外相理事会、非公式会合(防衛)(ワルシャワ)
3日 オーストラリア2月貿易統計発表
3日 米国2月貿易統計発表
3日‐4月5日 IDAX - 国際皮膚科学・美容博覧会・会議(ベトナム)
4日 米国3月雇用統計
4日‐4月5日 医学と薬学に関する国際会議 - 2025(カンボジア)
4日‐4月5日 コンピュータサイエンスとインテリジェンスシステムに関する国際会議 - 2025(カンボジア)
4日‐4月5日 スポーツ栄養とサプリメントに関する国際会議 - 2025(カンボジア)
4日‐4月5日 社会科学と経済に関する国際会議 - 2025(カンボジア)
4日‐4月5日 工学と技術における最近のイノベーションに関する国際会議 - 2025(カンボジア)
4日‐4月5日 教育、言語、教授法に関する国際会議 - 2025(カンボジア)
4日‐4月5日 自然科学と環境に関する国際会議 - 2025(カンボジア)
4日‐4月5日 法と政治科学に関する国際会議 - 2025(カンボジア)
4日‐4月5日 応用物理学と数学に関する国際会議 - 2025(カンボジア)
4日‐4月5日 ビジネス管理と電子ビジネスの進歩に関する国際会議 - 2025(カンボジア)
6日‐4月7日 イスラエル中銀金融委員会会合・経済見通し発表
7日 メキシコ3月自動車生産・販売・輸出統計発表
7日 コロンビア3月CPI発表
7日‐4月8日 EU教育・青年・文化・スポーツ相理事会、非公式会合(文化・メディア)(ワルシャワ)
8日 チリ3月CPI発表
8日‐4月11日 FHA-食品・飲料 2025(シンガポール)
9日 メキシコ3月CPI発表
9日 ブラジル2月月間小売り調査発表
9日 韓国3月雇用統計発表
9日 ロシア2024年経済活動別・需要項目別GDP改定値発表
10日 中国3月CPI発表
10日 米国3月CPI発表
11日 インド2月IIP発表
11日 メキシコ2月鉱工業生産指数発表
11日 ロシア3月CPI発表
11日 CIS外相会議(カザフスタン・都市未定)
11日 英国2月GDP速報値発表
11日 ドイツ3月CPI発表
11日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ブリュッセル)
11日‐4月12日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会、非公式会合(ワルシャワ)
13日‐4月16日 香港エレクトロニックス・フェア(春)(香港)
14日 インド3月CPI発表
14日 中国第1四半期貿易統計発表
14日 EU外相理事会(ルクセンブルグ)
14日‐4月15日 EU雇用・社会政策・保健・消費者問題担当相理事会、非公式会合(社会政策)(ワルシャワ)
14日‐4月16日 情報通信系展示会「GITEX AFRICA Morocco」(モロッコ・マラケシュ)
15日 韓国3月貿易統計発表
15日 英国労働市場統計(2024年12月~2025年2月)発表
15日 フランス3月CPI発表
15日 イスラエル3月CPI発表
15日 米国財務省 半期為替政策報告書提出期限
15日 サウジアラビア3月CPI発表
15日‐4月17日 INATEX、インドインターテックス2025年(ジャカルタ)
15日‐4月19日 中国輸出入商品交易会(広州)
16日 英国3月CPI発表
16日 EU雇用・社会政策・保健・消費者問題担当相理事会、非公式会合(平等)(ワルシャワ)
16日 ユーロスタット、3月CPI(HICP)発表
16日 中国第1四半期経済指標(GDP、固定資産投資、社会消費品小売総額等)発表
16日 カナダ中央銀行政策金利発表・金融政策報告書発表
16日 米国3月小売統計発表
16日‐4月17日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)(フランクフルト)
18日‐4月20日 東南アジア最大のヘルスケア・製薬ショー2025(SEACare)(マレーシア)
21日 イスラエル2024年第4四半期GDP(確定値)推計発表
21日‐4月24日 宇宙産業カンファレンス「NewSpace Africa Conference」(エジプト・カイロ)
21日‐4月25日 Saudi Food Expo(リヤド)
21日‐4月27日 モロッコ国際農業展「SIAM 2025」(モロッコ・メクネス)
22日 イスラエル3月財貿易統計発表
23日 メキシコ2月小売・卸売販売指数発表
23日 カザフスタン2024年所得別GDP発表
23日 ロシア第1四半期鉱工業生産指数発表
23日‐4月24日 G20財務相・中央銀行総裁会議(米国・ワシントン)
23日‐4月24日 ソーラーテックインドネシア、イナトロニクス(ジャカルタ)
23日‐4月25日 東南アジア最大のヘルスケア・製薬ショー 2025年(SEACare)(マレーシア)
23日‐4月27日 中国輸出入商品交易会(広州)
24日 サウジアラビア2月貿易統計発表
24日 韓国第1四半期GDP(速報値)発表
25日 ロシア中央銀行理事会
25日‐4月27日 IMF・世界銀行春季総会(米国・ワシントン)
25日‐5月2日 第21回上海国際自動車工業展覧会(上海モーターショー2025)
28日 メキシコ3月貿易統計・雇用統計発表
28日 EU農水相理事会(ルクセンブルグ)
28日‐4月29日 EU環境相理事会、非公式会合(ワルシャワ)
28日 CIS経済評議会(ウズベキスタン・タシケント)
29日 イスラエル3月国別財貿易統計発表
30日 ブラジル3月全国家計サンプル調査発表
30日 タイ金融政策委員会2回目
30日 サウジアラビア2024年貿易統計発表
30日 米国2025年第1四半期GDP(速報値)発表
30日 ドイツ3月労働市場統計発表
30日 フランス2025年第1四半期実質GDP成長率(速報値)発表
30日 ドイツ2025年第1四半期実質GDP成長率(速報値)発表
30日 カザフスタン2024年需要項目別GDP発表
30日 ケニア4月CPI発表


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問