外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2024年12月18日(水)

外交・安保カレンダー (12月16日-22日)

[ 2024年外交・安保カレンダー ]


2024年の外交安保カレンダーも残すところあと2回、早いもので来週が本年の最終号となる。振り返ってみれば、2024年は「『勢い』と『偶然』と『判断ミス』による『誤算』が本格的に繰り返される時代」の前兆だったのかなぁ、とつくづく思う。

ざっと見ても、韓国総選挙で最大野党が大勝、英国では保守党が大敗し、フランスでは左派連合が第一党となり、イランでは改革派の大統領候補が勝利し、日本では衆院選で自民が大敗し、米国では民主党のハリス候補、いやバイデン大統領が敗北した。挙句の果てがシリアと韓国での大混乱だ。この流れは嫌な感じである。

筆者が常々喋っていることは、こうした現象は個々の国や民族だけに特有の問題ではなく、「世界的」なものだということ。この政治的社会的エネルギーは、格差の拡大、移民の流入、産業の空洞化で荒れ果てた工業地帯や田舎に住む「忘れ去られた」人々のIT長者を含む既存の伝統エリートに対する不満と怒りなのだ。

言い換えれば、これらの政治的熱量は、冷戦時代に主流だった既存エリートである「中道」左右両派が凋落し、現状に不満を持った人々の現職指導者に対する「逆風」として顕在化しつつあるのだろう。これは筆者の仮説にすぎないが、もしこれが正しいとすれば、日本も確実に「ポピュリズム」の時代に入りつつある、ことを意味する。

要するに、日本の社会にも、実は似たような不満と怒りを抱えた「忘れ去られた人々」がどこかにいて、彼らの不満や怒りの「受け皿」が、従来の中道右派・中道左派から両極端に流れる可能性があるということ。こうした危機感をもう少し持ってもいいのではないかと、最近思うようになった。

いずれにせよ、先週も書いたことだが、シリアと韓国の大統領の例が示すように、正しい情報が上がらない独裁者ほど、戦略的判断を間違える傾向がある。2025年がそうした流れを止める年になって欲しいと思うのだが、トランプ政権の再登場により、恐らく、そうはならないのだろうと思う。

続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。クリスマス前の時期だからか、静かなものである。

12月17日 火曜日 欧州委員会委員長、トルコ大統領と会談
12月18日 水曜日 NATO事務総長、仏独伊英、ポーランド、ウクライナ代表と非公式会合
EU・バルカン諸国首脳会議開催(ブラッセル)
12月19日 木曜日 欧州理事会首脳会議(2日間)
12月20日 金曜日 独首相、訪独中のエストニア大統領と会談


最後はいつものガザ・中東情勢だ。先週は「シリア情勢は、一つ間違えれば、中東全域の大混乱にも繋がりかねない大事件だ」と書いたが、今週は筆者がそう考える理由を書いておきたい。そうは言っても、今は一部関係国の諜報機関以外に、誰もシリアで今後起きることを予測できる人がいないだろうが・・・。

筆者がシリア・アサド政権の崩壊をゲームチェンジャーだと思う理由は:

  • アサド政権は中東における「アラブ社会主義」の最後の政権だった
  • これでハマース、シリア、イラク、イラン、サウジからイスラエルまで、中東の主要プレーヤーは全て「宗教」イデオロギーに基づく政治勢力となった
  • 同様の動きは米国だけでなく欧州諸国でも顕著になりつつある
  • ということは、話し合いではなく、力による解決が優先されるということだ
  • 独裁政権の突然の崩壊でシリアには巨大な「力の真空」ができつつある
  • イランがシリアを失ったことで、中東地域の力関係は大きく変動し始めた
  • シリアは周辺関係国の「草刈り場」となり、統一穏健中央政府はできないだろう
  • イスラエルは「バイデン米政権を相手にせず」に徹し自国の利益を最優先した
  • 第2期トランプ政権の下でも、このイスラエルの姿勢は変わらないだろう・・・

と思うからである。

今週はこのくらいにしておこう。

2024年 重要日程レポート51【12月16日版】

<今週以前から続く会議>

11月25日‐12月29日 対人地雷禁止条約(オタワ条約)検討会議(カンボジア・シエムレアプ)

12月

<12月16日‐12月22日>

16日 イスラエル2024年第3四半期GDP(改定値)発表
16日 モーション・コントロール、オートメーション、ロボティクス、パワー・ソリューション 2024(テルアビブ)
16日 中国11月固定資産投資、社会小売品販売総額発表
16日 EU外相理事会(ブリュッセル)
16日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(エネルギー)(ブリュッセル)
16日 独首相の信任投票
16日‐12月18日 細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約締約国会議(ジュネーブ)
16日‐12月19日 欧州議会本会議(ストラスブール)
16日‐12月20日 UNCITRAL、第5作業部会(破産法)、第65回会議(ウイーン)
17日 シンガポール11月貿易統計発表
17日 メキシコ10月小売・卸売販売指数発表
17日 英国労働市場統計(8月~10月)発表
17日 EU環境相理事会(ブリュッセル)
17日 UNEP常任代表委員会第168回会合(ナイロビ)
17日 米国11月小売統計発表
17日 米国大統領選選挙人投票
17日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
17日‐12月18日 米国FOMC、経済見通し発表
18日 アルゼンチン第3四半期世帯アンケート結果(労働力調査)、11月貿易統計発表
18日 英国11月CPI発表
18日 ユーロスタット、11月CPI(HICP)発表
18日 米国第3四半期国際収支統計発表
18日 タイ金融政策委員会6回目
18日 米FOMC最終日(声明発表とFRB議長会見、FRB)
19日 ロシア大統領が内外記者会見(モスクワ)
19日 米国第3四半期GDP(確定値)発表
19日 ニュージーランドGDP第3四半期統計発表
19日 英イングランド銀行(中央銀行)が金融政策と議事録発表
19日 11月の欧州新車販売(欧州自動車工業会=ACEA)
19日‐12月20日 欧州理事会(ブリュッセル)
20日 ロシア中央銀行理事会
20日 11月の全国消費者物価指数(総務省)
21日 トルコ中銀金融政策会議
21日 臨時国会の会期末

<12月23日‐12月29日>

23日 メキシコ11月貿易統計発表
25日 ロシア1~11月鉱工業生産指数発表
25日 サウジアラビア11月貿易統計発表
26日 シンガポール11月工業生産高指数発表
27日 米国第3四半期対外資産負債残高統計発表
27日 ブラジル11月全国家計サンプル調査発表
28日 ロシア第3四半期需要項目別GDP(速報値)発表
29日 トルコ11月貿易統計発表

<12月30日‐2025年1月5日>

31日 サウジアラビア国際貿易サービス2023年
31日 12月の中国製造業購買担当者景況指数(PMI)(国家統計局)
12月中 中央経済工作会議(北京)
12月中 ASEANデジタル高官会議(ADGSOM)
12月中 最高ユーラシア経済評議会(ロシア・サンクトペテルブルク)
12月中 クロアチア大統領選挙(第1回投票)
12月中 WTO2024年第3四半期財貿易統計発表
年内 ジョージア大統領選挙

2025年1月

1日 ロシアで国税基本法改正(個人所得税の累進課税強化、法人税率引き上げなど)
1日 ポーランド、EU理事会議長国に就任
1日 タジキスタンがCISの議長国に
1日 ベラルーシがユーラシア経済連合の議長国に
3日 ドイツ11月労働市場統計発表
3日 コロンビア2024年11月輸出統計発表
3日 メキシコ2024年11月雇用統計発表
3日 米国第119議会第1会期開会
5日‐1月6日 イスラエル中央銀行金融委員会会合・経済見通し発表
6日 ベトナム12月分および2024年の社会・経済統計(GDP、CPI、投資、貿易など)発表
7日 米国12月貿易統計発表
8日 メキシコ2024年12月自動車生産・販売・輸出統計発表
8日 ブラジル2024年11月鉱工業生産指数発表
9日 コロンビア2024年12月CPI発表
9日 メキシコ2024年12月CPI発表
9日 ブラジル2024年11月月間小売り調査発表
9日 オーストラリア11月貿易統計発表
10日 国連事務局の選挙(ニューヨーク)
10日 米国12月雇用統計発表
10日 マレーシア11月IIP発表
10日 フィリピン10月直接投資発表
10日 インド10月IIP発表
10日 メキシコ2024年11月鉱工業生産指数発表
10日 ブラジル2024年12月IPCA発表
12日‐1月15日 Abu Dhabi Sustainability Week 「アブダビ・サステナビリティーウイーク」(アブダビ)
13日 インド11月CPI発表
14日 アルゼンチン2024年12月CPI発表
14日‐1月15日 フードセク&テック・ イスラエル(イスラエル・ネゲブ)
14日‐1月15日 イスル・アナリティカ(テルアビブ)
14日‐1月16日 Future Mineral Forum(リヤド)
15日 米国12月CPI発表
15日 フィリピン12月主要経済指標発表
15日 フィリピン11月OFW送金額発表
15日 英国12月CPI発表
15日 フランス12月CPI発表
15日 イスラエル12月CPI発表
16日 ドイツ12月CPI発表
16日 米国12月小売統計発表
19日‐1月21日 Saudi Fashiontex Expo(リヤド)
20日 第47代米国大統領就任
20日 アルゼンチン2024年12月貿易統計発表
20日 フィリピン12月国際総合収支(BOP)統計発表
20日‐1月24日 世界経済フォーラム(ダボス会議)(スイス・ダボス)
21日 ドイツ12月CPI発表
26日 UN世界経済状況・予測
26日 ベラルーシ大統領選挙
27日‐1月30日 アラブヘルス(アラブ首長国連邦・ドバイ)
27日‐1月31日 国連、第1回定例会(ニューヨーク)
28日‐1月29日 ブラジル中央銀行、Copom
28日‐1月29日 米国FOMC
29日 カナダ中央銀行政策金利発表・金融政策報告書発表
30日 フランス第4四半期実質GDP成長率(速報値)発表
30日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会、金融政策(フランクフルト)
30日 米国第4四半期GDP(速報値)発表
31日 ケニア1月CPI発表

2月

4日 コロンビア2024年12月輸出統計発表
5日 ブラジル2024年12月鉱工業生産指数発表
5日 米国12月貿易統計発表
5日 カナダ12月貿易統計発表
5日 国連経済社会理事会(ECOSOC)パートナーシップフォーラム(ニューヨーク)
6日 オーストラリア2024年12月貿易統計発表
6日 ベトナム2025年1月分の社会・経済統計(CPI、投資、貿易など)発表
6日 アルゼンチン2024年第4四半期貿易統計発表
6日‐2月7日 ECOSOCの調整部門(ニューヨーク)
7日 メキシコ1月自動車生産・販売・輸出統計・CPI発表
7日 コロンビア1月CPI発表
7日 マレーシア2024年12月IIP発表
7日 米国1月雇用統計発表
7日 カナダ1月雇用統計発表
7日 台湾2025年1月CPI発表
9日‐2月12日 Leap25(リヤド)
10日 フィリピン11月直接投資発表 
10日 カンボジア2025年1月貿易統計発表
10日‐2月14日 社会開発委員会(CSocD)第63回会議(ニューヨーク)
11日 メキシコ2024年12月鉱工業生産指数発表
12日 インド2024年10月IIP発表
12日 インド2025年1月CPI発表
12日 トルコ1月国際収支統計発表
12日 フランス2024年第4四半期失業率発表
12日 米国1月CPI発表
13日 ドイツ1月CPI発表
13日 イスラエル1月貿易統計発表
13日 ブラジル2024年12月月間小売り調査発表
14日 イスラエル1月CPI発表
14日 ロシア中央銀行理事会
14日 米国1月小売統計発表
17日 フィリピン12月OFW送金額発表
17日‐2月19日 エネルギー展示会「EGYPES」
17日‐2月21日 Gulfood(ドバイ)
19日 フィリピン2025年1月国際総合収支(BOP)統計発表
19日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策、バーチャル会議)
20日 トルコ中銀金融政策会議
20日 香港2025年1月CPI発表
20日‐2月22日 PAKAR PERTANIAN EXPO(マレーシア)
20日‐2月22日 Malaysia Technology Expo 2025 「マレーシアテクノロジーエキスポ・2025年」(マレーシア)
21日‐23日 Diving & Resort Travel Expo Malaysia 2025 「ダイビング&リゾートトラベルエキスポマレーシア・2025年」(マレーシア)
24日 ユーロスタット、1月CPI(HICP)発表
24日 シンガポール2025年1月CPI発表
24日 イスラエル中央銀行金融委員会会合
24日‐2月28日 開発政策委員会(CDP)第27回会合(ニューヨーク)
27日 米国第4四半期GDP(改定値)発表
28日 ケニア2月CPI発表


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問