外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2024年5月7日(火)

外交・安保カレンダー (5月6日-12日)

[ 2024年外交・安保カレンダー ]


先週日本はGWだったので、岸田首相の仏、ブラジル、パラグアイ訪問や防衛大臣のハワイ訪問以外、大きな外交安保関連ニュースはなかった。一方、筆者個人的には3日の大阪での「そこまで言って委員会」収録、5日の岡山県倉敷市・五流尊瀧院の三田山上権現大祭、6日の立命館大学ゼミと、関西での「死のロード」が続いた。

海外の方は、今週もガザ停戦交渉や中国トップ欧州訪問など外交ニュースは満載だが、個人的に最も注目したのはロシア当局による米陸軍兵士の拘束事件だった。米陸軍報道官は「兵士拘束は5月2日、ウラジオストク」とのみ発表、「問題の機密性を考慮」して詳細は明らかにしないそうだが、これって物凄い話ではないかね。

ウラジオストクといえば、昔筆者も訪れたことがある。あのロシア極東の重要海軍基地のある戦略的要衝で米陸軍兵士は何をしていたのか、どの部隊に所属していたのかなど、疑問は尽きないが、米陸軍だけでなく、米国務省もロシア政府もノーコメントを続けている。恐らく詳細は闇の中だろうが、今後の米露関係が気になる。

続いては、中国国家主席のフランス訪問だ。習近平氏はマクロン仏大統領やEUフォンデアライエン委員長と会談し、ウクライナ情勢やEUが問題視する貿易の状況などについて意見交換したという。習国家主席の訪欧は5年ぶりだが、今回の目的が欧米間に「楔を打つ」ことだったとしたら、あまり成功しなかったのではないか。

報道によれば、仏大統領が「ヨーロッパと中国との対話はこれまで以上に必要だ」としたのに対し、習主席は「中国とEUは世界の2つの重要な勢力としてパートナーシップを堅持すべし」と述べた。だが、欧州側の最大の懸念がEVなど中国政府の補助金により過剰生産された商品のダンピング輸出であることは間違いなかろう。

実際に会談後、EU委員長は「中国政府の補助を受けて過剰に生産された製品がヨーロッパに輸入され、競争を歪めている」と述べたが、中国側は「過剰生産」そのものを否定しているらしい。恐らく議論はすれ違いだろう。この後、習主席はセルビアとハンガリーという親露国も訪問するが、これで米国を牽制できるかは未知数だろう。

もう一つ気になるのがガザでの停戦交渉の行方である。先週筆者は、

  • 今もイスラエルは将来の、より洗練された、ラファ侵攻作戦を準備しつつあるが、
  • 米国の対イスラエル圧力も相当なもので、ネタニヤフも妥協せざるを得ないのか
  • という訳で、今後ガザをめぐり人質解放と停戦に向けた交渉が動くかもしれない

と書いた。それでも、イスラエル・ハマース双方の意見の隔たりは大きく、5月6日にハマースが受け入れを発表した「停戦案」をイスラエルは承知していなかったともいわれる。今ネタニヤフ首相はラファ完全占拠を求める超保守連立政権パートナーの支持を失いかねない「政治的窮地」にあるとBBCなどは分析している。なるほどね。

確かに、一つ間違えると、ネタニヤフは米国のバイデン政権か、現在の保守強硬派連立政権か、人質問題と戦争長期化に不満を募らせるイスラエル国民の支持、のいずれかを失いかねない。最近、ネタニヤフ政権はイスラエル国内にあるアルジャジーラの支局を閉鎖したが、こんなことで現在の局面を打開することは難しいだろう。

続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

5月 7日 火曜日 ボスニアヘルツェゴビナ大統領、ドイツ訪問終了

5月 8日 水曜日 北マケドニア、議会選挙

         ブラジル中央銀行、金利決定

         フィンランド大統領、ドイツ訪問

5月 9日 木曜日 ペルー前大統領に対するペルー議会公聴会開始

         G7法務大臣会合(イタリア)

5月12日 日曜日 カタロニアで地方選挙

         リトアニアで大統領選挙

5月13日 月曜日 ギリシャ首相、トルコ訪問し首脳会談

最後は、いつもの中東・パレスチナ情勢だが、前述の通り、今回の交渉が実を結ぶかどうかは予断を許さない。但し、今回の米国の対イスラエル圧力は相当大きく、ネタニヤフ政権としても、バイデン政権を無視できない状況に置かれているのだろう。

先週書いた通り、「いずれにせよ、戦闘が終わるときはイスラエル、ハマース双方が勝利宣言をする」「逆に言えば、勝利宣言がなければ、本当の停戦にはならないということ」だ。

ハマースがそろそろ参り始めていることは間違いないが、問題はイスラエルが「まだ勝てる」と思っていることだ。戦争当事者のどちらか一方でも「まだ勝てる」と思う限り、戦争は終わらない。現状では、仮に一時停戦が実現しても、恒久停戦は難しいのではないか。

今週はこのくらいにしておこう。

2024年 重要日程レポート19【5月6日版】

<今週以前から続く会議>

4月15日‐5月10日 拷問禁止委員会、第79回会合(ジュネーブ)
4月15日‐5月31日 国際法委員会 第75回会合、第一部(ジュネーブ)
4月19日‐6月1日 インド総選挙投票開始
4月29日‐5月10日 人権理事会、普遍的定期的審査作業部会、第46回会合(ジュネーブ)
4月29日‐5月10日 情報委員会、第46回会合(ニューヨーク)

5月

<5月6日‐5月12日>

6日 チャド大統領選挙
6日‐5月8日 国内人権機関グローバル・アライアンス第37回会合(ジュネーブ)
6日‐5月8日 IAEA理事会計画予算委員会(ウイーン)
6日‐5月8日 国連ハビタット理事会、2024年第1回定例会合(ナイロビ)
6日‐5月10日 包括的核実験禁止条約機関準備委員会 諮問グループ、第60回会合(ウイーン)
6日‐5月10日 UNCITRAL、第6作業部会(交渉可能な複合一貫輸送書類)、第44回会合(ニューヨーク)
6日‐5月10日 国連森林フォーラム第19回会合(ニューヨーク)
6日‐5月17日 国際民間航空機関(ICAO)第232回委員会(モントリオール)
6日‐5月24日 子どもの権利委員会、第96回会合(ジュネーブ)
6日‐6月21日 国際民間航空機関(ICAO)第226回航空委員会(モントリオール)
7日 EU外相理事会(開発)(ブリュッセル)
7日 メキシコ4月自動車生産・販売・輸出統計発表
7日 米国大統領予備選挙(民主党・共和党:インディアナ州)
7日 EU雇用・社会政策・保健・消費者問題担当相理事会・(平等)(ブリュッセル)
7日 ロシア大統領就任式
7日 欧州・アフリカフォーラム(フランス・マルセイユ)
7日‐5月8日 ブラジル中央銀行、Copom
7日‐5月8日 ChipEx 2024(テルアビブ)
7日‐5月9日 国際輸送・物流展示会「Logismed」(モロッコ・カサブランカ)
7日‐5月9日 サウジアラビア娯楽博覧会(SEA)(リヤド)
8日 ブラジル3月月間小売り調査発表
8日 北マケドニア議会選挙、大統領選挙(決選投票)
8日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会非金融政策(バーチャル会議)
9日 メキシコ4月CPI発表
9日 中国4月貿易統計発表
9日 ロシアで対独戦勝記念日
9日 米トルコ首脳会談(ワシントン)
9日 静岡県知事選告示(26日投開票)
9日 英イングランド銀行(中央銀行)が金融政策を発表
9日‐5月10日 経済社会理事会、持続可能な開発目標のための科学・技術・イノベーションに関するマルチステークホルダー・フォーラム(ニューヨーク)
10日 英国2024年第1四半期GDP成長率(速報値)発表
10日 メキシコ3月鉱工業生産指数発表
10日 ブラジル4月IPCA発表
11日 中国4月CPI発表
12日 スペイン・カタルーニャ自治州議会選
12日 インド3月鉱工業生産指数発表
12日 イスラエル4月貿易統計発表
12日 リトアニア大統領選挙
12日 インド4月CPI統計発表

<5月13日‐5月19日>

13日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ブリュッセル)
13日‐5月14日 EU教育・青年・文化・スポーツ相理事(ブリュッセル)
13日‐5月14日 ASEANグリーン水素会議2024(マレーシア)
13日‐5月17日 UNCITRAL第5作業部会(倒産法)、第64回会合(ニューヨーク)
13日‐5月17日 人権理事会 開発の権利に関する作業部会、第25回会合(ジュネーブ)
13日‐5月31日 女性差別撤廃委員会、第88回会合(ジュネーブ)
13日‐6月28日 軍縮会議・後編(ジュネーブ)
14日 米国大統領予備選挙(民主党・共和党:メリーランド州、ネブラスカ州、ウェストバージニア州)
14日 英国労働市場統計(2024年1~3月)発表
14日 ドイツ4月CPI発表
14日 ウクライナ4月CPI発表
14日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
14日‐5月16日 第33回欧州復興開発銀行(EBRD)年次総会(アルメニア・エレバン)
14日‐5月19日 経済サミット「ロシア - イスラム世界」(ロシア・カザン)
15日 ロシア2024年第1四半期GDP成長率速報値発表
15日 フランス4月CPI発表
15日 米国4月CPI発表
15日 イスラエル4月CPI発表
15日 サウジアラビア4月CPI発表
15日 シンガポール首相交代
15日 米国4月小売統計発表
16日‐5月18日 起業支援イベント「Riseup Summit」(エジプト・カイロ)
17日 中国4月固定資産投資、社会小売品販売総額発表
17日 APEC貿易担当相および女性担当相合同会合(ペルー・アレキパ)
17日 ロシア4月CPI発表
17日 フランス2024年第1四半期失業率発表
17日 ユーロスタット、4月CPI発表
17日‐5月18日 APEC貿易相会合(ペルー・アレキパ)
19日 ドミニカ共和国総選挙

<5月20日‐5月26日>

20日 ウクライナ1~3月貿易統計発表
21日 米国大統領予備選挙(民主党・共和党:ケンタッキー州、オレゴン州)
21日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
21日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(通信)(ブリュッセル)
22日 英国4月CPI発表
22日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(アイルランド)
23日 メキシコ第1四半期GDP発表
23日 トルコ中銀金融政策会議
23日 EU競争力担当相理事会・(研究・イノベーション、宇宙)(ブリュッセル)
23日 米国、ケニアのウィリアム・ルート大統領とレイチェル・ルート大統領夫人が国賓訪問(ワシントンDC)
23日‐5月25日 G7財務相会合(イタリア・ストレーザ)
23日‐5月25日 BEYOND EXPO(マカオ)(ヘルスケア、サステナビリティ、コンシューマーテック)
24日 EU競争力担当相理事会・(域内市場・産業)(ブリュッセル)
24日 メキシコ4月貿易統計発表
25日 米国大統領予備選挙(民主党:アイダホ州)

<5月27日‐6月2日>

27日‐5月28日 EU外相理事会・(防衛)(ブリュッセル)
27日‐6月1日 WHO、世界保健総会、第77回会合(ジュネーブ)
28日 OECD2024年第1四半期G20貿易統計発表
29日 ブラジル4月全国家計サンプル調査発表
29日 ロシア1~4月鉱工業生産指数発表
29日 南ア総選挙
30日 メキシコ4月雇用統計発表
30日 米国第1四半期GDP(改定値)発表
30日 ユーロスタット、4月失業率発表
30日 EU外相理事会・(貿易)(ブリュッセル)
30日 トルコ4月貿易統計発表
30日 サウジアラビア4月貿易統計発表
30日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(エネルギー)(ブリュッセル)
31日 UNDP/UNFPA/UNOPS、ユニセフ、WFPおよびUN-Womenの理事会、UNDP/UNFPA/UNOPS、ユニセフ、WFPおよびUN-Womenの理事会合同会議(ニューヨーク)
5月中 ラオス第7回国会
5月中 CIS首相会議(トルクメニスタン・アシガバード)

6月

1日 アイスランド大統領選挙
2日 メキシコ大統領選挙、上下両院議員選挙、メキシコ市など9州知事選挙
3日 ユーロスタット、2月失業率発表
3日‐6月6日 第6階ASEAN防衛交流プログラム〔ADIP〕(ラオス)
4日 米国大統領予備選挙(民主党・共和党:モンタナ州、ニュージャージー州、ニューメキシコ州、サウスダコタ州、民主党:ワシントンDC)
4日 ブラジル第1四半期GDP発表
4日‐6月6日 APHM国際ヘルスケア会議・展示会2024 (マレーシア)
4日‐6月7日 COMPUTEX、InnoVEX(台北)
4日‐6月8日 ASEAN高級実務者会議〔ASEAN Senior Officials’Meeting〕、ASEANプラス3高級実務者会議〔ASEAN Plus Three Senior Officials’ Meeting (APTSOM)〕(ラオス)
5日 ブラジル4月鉱工業生産指数発表
5日‐6月6日 IPEF閣僚会合及びクリーン経済投資家フォーラム(シンガポール)
5日‐6月7日 医療・ヘルスケア産業展示会「Africa Health Excon」(エジプト・カイロ)
5日‐6月8日 サンクトペテルブルク国際経済フォーラム(ロシア・サンクトペテルブルグ)
5日‐6月9日 APEC観光相会合(ぺルー・クスコ)
6日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)(フランクフルト)
6日 米国4月貿易統計発表
6日 メキシコ5月自動車生産・販売・輸出統計発表
6日‐6月9日 欧州議会議員選挙
7日 メキシコ5月CPI発表
7日 米国5月雇用統計発表
7日 中国5月貿易統計発表
7日 ユーロスタット、第1四半期実質GDP成長率発表
8日 米国大統領予備選挙(民主党:グアム、米領バージン諸島)
9日 ベルギー連邦議会選挙
10日‐6月12日 アジア太平洋グリーン水素会議&展示会(APGH)2024 (マレーシア)
11日 メキシコ4月鉱工業生産指数発表
11日 ブラジル5月IPCA発表
11日‐6月12日 米国FOMC、経済見通し発表
11日‐6月12日 ウクライナ復興会議(ベルリン)
12日 米国5月CPI発表
12日 ドイツ3月消費者物価指数(CPI)発表
12日 フランス3月CPI発表
12日 中国5月CPI発表
12日 インド4月鉱工業生産指数発表
12日 インド5月CPI統計発表
12日‐6月14日 DRCマイニング・ウィーク(コンゴ民主共和国・ルムンバシ)
13日 ブラジル4月月間小売り調査発表
13日‐6月14日 EU司法・内務相理事会(ルクセンブルグ)
13日‐6月14日 第2回アスタナ経済フォーラム (カザフスタン・アスタナ)
13日‐6月15日 G7首脳会議(イタリア・プーリア州)
14日 ロシア5月CPI発表
17日 中国5月固定資産投資、社会小売品販売総額発表
17日 欧州理事会、非公式会合(ブリュッセル)
17日‐6月18日 特別欧州理事会(ブリュッセル)
18日 EU一般問題理事会(結束)(ルクセンブルグ)
18日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(運輸)(ルクセンブルグ)
18日 ユーロスタット、3月CPI発表
18日 米国5月小売統計発表
18日‐6月19日 ブラジル中央銀行、Copom
19日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(バーチャル会議)
20日 ECB一般理事会(バーチャル会議)
20日 メキシコ4月小売・卸売販売指数発表
20日 米国第1四半期国際収支統計発表
20日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ルクセンブルグ)
20日 EU雇用・社会政策・保健・消費者問題担当相理事会(社会政策)(ルクセンブルグ)
21日 EU雇用・社会政策・保健・消費者問題担当相理事会(保健)(ルクセンブルグ)
21日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ルクセンブルグ)
21日‐6月23日 WTO議長プログラム年次会合(スイス・ジュネーブ)
23日‐6月26日 セレクトUSA投資サミット(メリーランド州ナショナルハーバー)
24日 EU外相理事会(ルクセンブルグ)
24日‐6月25日 EU農水相理事会(ルクセンブルグ)
24日‐6月25日 第39回日ASEANフォーラム(タイ)
25日‐6月27日 建設展示会「BIG 5 Construct Egypt」(エジプト・カイロ)
26日 米国第1四半期対外資産負債残高統計発表
26日 ロシア1~5月鉱工業生産指数発表
26日‐6月29日 FOOD TAIPEI 2024(台北)
27日 米国第1四半期GDP(確定値)発表
27日 メキシコ5月貿易統計、雇用統計発表
27日‐6月28日 欧州理事会(ブリュッセル)
28日 ブラジル5月全国家計サンプル調査発表
6月上旬 ラオス5月CPI統計発表
6月下旬 モンゴル国会議員選挙


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問