外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2024年3月19日(火)

外交・安保カレンダー(3月18日-24日)

[ 2024年外交・安保カレンダー ]


今週はあの「誰も結果を予測し間違えようがない」17日のロシア大統領選挙から始めよう。ニッポン放送OK!コージーアップという朝ラジオ番組でコメントを求められ、思わず筆者は「哀れプーチン」と述べてしまった。だが、これは偽らざる気持ち。政治指導者が70過ぎても世代交代できないロシアという国が哀れ、と言うべきか。

尤も、世代非交代という点ではアメリカも同じ。今や米大統領選挙は「老老対決」「老狂対決」だから、人のことは言えないだろう。プーチンは筆者とほぼ同世代だが、同世代というなら前独首相のメルケルもそうだ。あの2人は同時期、同じ旧東独の社会を経験し、2人でロシア語とドイツ語で会話できる「冷戦時代」の政治家だった。

ところが、ドイツでは既にメルケルは引退し、世代交代が起きた。これに対し、ロシアでは過去四半世紀、たった1人の指導者しか生まれず、恐らく、これからも当分生まれないだろう。これが本当にロシアの国民にとって良いことなのか。ウクライナを屈服させても東欧、北欧は身構えるだけ。これがロシア国家にとって良いことなのか。

この点について、実は「拝啓、プーチン大統領閣下」と題するコラムを書簡に擬して書いてみた。プーチンの独裁的行動の裏には、彼の、そしてロシア人たちの、「西欧に対する絶望的ともいえる劣等意識」があるのではないか。今週木曜日の産経新聞WorldWatchで読めるので、ご関心ある向きは是非ともご一読願いたい。

個人的にもう一つ気になるのは日銀の「マイナス金利政策終了」の可能性だ。OKコージーアップ!では気鋭のエコノミストが解説していたが、筆者は「政策変更は良いが、これまで市中に流れた巨額の非流動的な『流動性』をどう回収するのか、下手をすると大インフレにならないか」などと質問した。さて、結果はどうなるだろうか。

最後は、最近の国会での「政治倫理審査会」だ。件のラジオ放送ではこう述べた。「英語で言えばカブキ・プレイ。誰もが筋書きもシナリオを知っている典型的な『本音は喋りません』歌舞伎だが、というか、だからこそ、玄人筋には大受けする。でも、素人には全く受けない・・・政治を金持ちと独裁者だけの職業にしてはならない」と。

続いては、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

3月19日 火曜日 米国務長官、フィリピンを訪問

         NATO事務総長、アルメニア訪問

         ウクライナ防衛コンタクトグループ参加各国国防相、ドイツで会合

3月20日 水曜日 韓国での民主主義サミット会合、閉会

         ブラジル大統領、6日間の中東歴訪終了

3月21日 木曜日 EU首脳会議(22日まで)

         WTO総会(22日まで)

         ベルギーで核エネルギーサミット開催

3月22日 土曜日 ガーナ主催の「アフリカゲーム」大会終了

         ボリビアで国勢調査実施

         スロヴァキア、大統領選挙

3月24日 日曜日 セネガルで延期されていた大統領選挙

最後は、いつもの中東・パレスチナ情勢だ。

  • 米イラン関係は小康状態が続いている。さすが、イランは民度が高いようだ
  • が、イエメンの「アンサールッルラー(フーシー派)」は攻撃を続けている
  • ネタニヤフはラファからの非戦闘員退避まで総攻撃は行わないというが、「退避」をどう確認するのか、小さな攻撃なら行うのか、未だ分からないことが多すぎる
  • ネタニヤフの譲歩か否かは別として、これも米大統領からの働きかけの結果だろう
  • 人質解放も、停戦も、総攻撃もない、しかし、勿論、問題解決もない状況は当分続く

今週はこのくらいにしておこう。

2024年 重要日程レポート12318日版】

<今週以前から続く会議>

2月12日‐3月29日 ICAO(国際民間航空機関)第225回会議(モントリオール)
2月26日‐4月5日 人権理事会、第55回会議(ジュネーブ)
3月4日‐3月22日 障害者権利委員会、第30回会合(ジュネーブ)
3月4日‐3月28日 人権委員会、第140回会議(ジュネーブ)
3月11日‐3月22日 女性の地位委員会、第68回会合(ニューヨーク)

3月

<3月18日‐3月25日>

18日 ユーロスタット、2月CPI発表
18日 植民地国・人民への独立付与に関する宣言の実施状況に関する特別委員会、組織的会合および2024年会合前半部分(ニューヨーク)
18日 EU外相理事会(ブリュッセル)
18日‐3月19日 日銀金融政策決定会合(日銀)
18日‐3月20日 民主主義サミット(ソウル)
18日‐3月22日 麻薬委員会、第67回会合(ウイーン)
18日‐3月22日 国連拷問被害者支援任意基金評議員会、第59回会合(ジュネーブ)
18日‐3月27日 人権理事会 恣意的拘禁作業部会、第27回会合(ジュネーブ)
18日‐3月28日 ILO理事会および委員会第350回会合(ジュネーブ)
18日‐3月29日 国際民間航空機関(ICAO)第231回理事会(モントリオール)
18日‐3月29日 国際海底機構理事会第29回会合第1部(キングストーン)
19日 米国大統領予備選挙(民主党・共和党:アリゾナ州、フロリダ州、イリノイ州、カンザス州、オハイオ州)
19日 2月訪日外国人数(日本政府観光局)
19日 スペースX・スターリンク7-16、ファルコン9号(ヴァンデンバーグ空軍基地)
19日‐3月20日 米国FOMC、経済見通し発表
19日‐3月20日 日・太平洋島しょ国防衛相会合(都内)
19日‐3月21日 ASEANゲーミングサミット(フィリピン)
20日 三者社会サミット(ブリュッセル)
20日 中国人民銀行が最優遇貸出金利(LPR)発表
20日 FOMC最終日(FRB)
20日‐3月23日 繊維製品の展示会(ジャカルタ)
21日 米国2023年第4四半期国際収支統計発表
21日 メキシコ1月小売・卸売販売指数発表
21日 スイス中銀が金融政策発表
21日 英イングランド銀行(中央銀行)が金融政策と議事録を発表
21日 2024年度予算案を巡る委嘱審査
21日‐3月22日 WTO一般理事会
21日‐3月22日 EU首脳会議(ブリュッセル)
22日 ロシア中央銀行理事会
23日 トルコ中銀金融政策会議
23日 米国大統領予備選挙(民主党・共和党:ルイジアナ州、民主党:ミズーリ州)
24日 日本維新の会党大会(京都市)
22日 2024年度予算案を巡る委嘱審査
24日 愛知県大府市長選投開票
24日 熊本県知事選投開票
25日‐3月28日 障害者の権利委員会、会合前作業部会、第19回会合(ジュネーブ)

<3月25日‐3月31日>

26日‐3月29日 ボアオ・アジアフォーラム年次総会(中国海南省ボアオ)
27日 米国2023年第4四半期対外資産負債残高統計発表
27日 メキシコ2月貿易統計、雇用統計発表
28日 米国2023年第4四半期GDP(確定値)発表
28日 FTXトレーディング創業者サム・バンクマン・フリード被告の量刑発表(米連邦地裁)
29日 2月の米個人消費支出(PCE)物価指数(商務省)
29日 CIS経済理事会、第15回CIS国際経済フォーラム(場所未定)
31日 徳島市長選告示(4月7日投開票)
31日 米国通商代表部(USTR)2024年外国貿易障壁報告書(NTE)提出期限
3月上旬 中国1~2月貿易統計発表
3月中旬 スロバキア大統領選挙
3月中旬 中国1~2月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
3月上旬 第14期全国人民政治協商会議第2回全体会議(北京)、第14期全国人民代表大会第2回全体会議(北京)

4月

1日‐4月5日 UNCITRAL、第3作業部会(投資家対国家の紛争解決改革)、第48回会合(ニューヨーク)
1日‐34月19日 軍縮委員会年次総会(ニューヨーク)
2日 米国大統領予備選挙(民主党・共和党:コネチカット州、デラウェア州、ニューヨーク州、ロードアイランド州、ウィスコンシン州)
3日 トルコ3月CPI発表
3日 ユーロスタット、2月失業率発表
3日 ブラジル2月鉱工業生産指数発表
3日‐4月4日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会、非公式会合(運転)(ブリュッセル)
3日‐4月4日 IMTM-地中海観光国際展示会2024(テルアビブ)
4日 米国2月貿易統計発表
4日‐4月5日 第1768回経営管理と情報技術の進歩に関する国際会議・2024年(カンボジア)
5日 米国3月雇用統計発表
5日 ロシア2023年経済活動別・需要項目別GDP発表
5日 メキシコ3月自動車生産・販売・輸出統計発表
6日 米国大統領予備選挙(民主党:アラスカ州、ハワイ州、ノースダコタ州)
7日‐4月9日 EU農水相理事会、非公式会合(農業)(ゲンク)
8日 イスラエル中銀金融委員会会合
9日 メキシコ3月CPI発表
10日 ブラジル3月IPCA発表
10日 米国3月CPI発表
10日‐4月11日 欧州議会本会議(ブリュッセル)
10日 ロシア3月CPI発表
11日 ウクライナ3月CPI発表
11日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会、金融政策(フランクフルト)
11日 メキシコ2月鉱工業生産指数発表
11日 ブラジル2月月間小売り指数発表
11日 中国3月CPI発表
11日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ルクセンブルグ)
11日‐4月12日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(通信)(ルーバン・ラ・ヌーブ)
12日 中国第1四半期貿易統計発表
12日 ドイツ3月CPI発表
12日 フランス3月CPI発表
12日 インド2月鉱工業生産指数発表
12日 インド3月CPI統計発表
12日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ルクセンブルグ)
12日 CIS外相会議(ベラルーシ・ミンスク)
13日 米国大統領予備選挙(民主党:ワイオミング州)
14日 イスラエル3月貿易統計発表
15日 イスラエル3月CPI発表
15日 米国財務省 半期為替政策報告書提出期限
15日 米国3月小売統計発表
15日‐4月16日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(エネルギー)(ブリュッセル)
15日‐4月19日 中国輸出入商品交易会(広州)
15日‐4月21日 IMF・世界銀行春季総会(米国・ワシントン)
16日 中国第1四半期経済指標(GDP、固定資産投資、社会小売品販売総額等)発表
17日 ユーロスタット、3月CPI発表
17日‐4月18日 欧州理事会、非公式会合(ブリュッセル)
18日 G20財務相・中央銀行総裁会議(米国・ワシントン)
18日‐4月19日 EU雇用・社会政策・保健・消費者問題担当相理事会、非公式会合(消費者問題)(ブリュッセル)
19日 メキシコ2月小売・卸売販売指数発表
19日‐4月21日 IMF・世界銀行春季総会(ワシントンDC)
20日 米国大統領予備選挙(共和党:ワイオミング州)
21日 米国大統領予備選挙(共和党:プエルトリコ)
22日 EU外相理事会(ルクセンブルグ)
22日‐4月25日 欧州議会本会議(ストラスブール)
23日 米国大統領予備選挙(民主党・共和党:ペンシルベニア州)
23日‐4月24日 EU雇用・社会政策・保健・消費者問題担当相理事会、非公式会合(保健)(ブリュッセル)
23日‐4月27日 中国輸出入商品交易会(広州)
24日 ロシア第1四半期鉱工業生産指数発表
24日 北マケドニア大統領選挙(第1回投票)
25日 米国第1四半期GDP(速報値)発表
25日‐4月27日 北京国際汽車展覧会(北京)
26日 ロシア中央銀行理事会
26日 メキシコ2月貿易統計、雇用統計発表
28日 米国大統領予備選挙(民主党:プエルトリコ)
29日 EU農水相理事会(ルクセンブルグ)
29日‐4月30日 EU一般問題理事会、非公式会合(ブリュッセル)
30日 ドイツ3月労働市場統計発表
30日 ウクライナ1~3月鉱工業生産指数発表
30日 ドイツ2024年第1四半期実質GDP成長率(速報値)発表
30日 フランス2024年第1四半期実質GDP成長率(速報値)発表
30日 ブラジル3月全国家計サンプル調査発表
30日‐5月1日 米国FOMC 
4月中 クラスノヤルスク経済フォーラム(ロシア・クラスノヤルスク)


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問