外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2020年12月8日(火)

外交・安保カレンダー(12月7-13日)

[ 2020年外交・安保カレンダー ]


今年も残すところ数週間となった。コロナ禍のおかげで2020年は長かったのか、それとも短かったのか。どっちみち歳を重ねると「一年は短くなる」らしいので、筆者にとっては例年以上に短い年となったのかもしれない。ワクチンが巷に普及するまで、もうひと辛抱ということで、毎日我慢の日々を送っている。

我慢の日々といえば、隣国の大統領も正に我慢の時である。文在寅大統領の支持率が最近急落しているからだ。先週発表された韓国の世論調査では過去最低の前回から6ポイント以上下落し支持率は37.4%になったそうだ。同大統領の「岩盤支持層」は40%といわれるが、それを下回るとは只事ではないのかもしれない。

米国でも「岩盤支持層」のおかげでトランプ氏の支持率が40%を切ったことはなかったと記憶する。韓国の「岩盤」の方が砕け易いのか。ここで米韓の「岩盤層」を比較しても仕方ないが、同種の調査で文大統領の支持率が40%を割ったのは初めてだそうだから、これは政治的に新たな次元に入りつつある、ということかもしれない。

先週は、法相が検事総長の職務停止を命じた問題で行政裁判所が命令の効力停止を求めた検事総長側の訴えを認めた話を取り上げた。検事総長は暫定的に職務復帰したが、文政権と検察との対立は「異常事態」のままと書いた。異常事態が続いた結果が支持率低下だとすれば、これは相当のボディブローなのだろう。

改めて、日本がこんな国の司法に振り回されるのは「如何なものか」と思う。従来韓国大統領が政治的苦境に陥れば、必ず発動されたのが反日政治行動のパーフォーマンスだ。もう韓国ではあの種の「反日パーフォーマンス」は余り効果がなくなったとも聞いたが、今回はどうだろうか。とても気になるところだ。

ところで先週もバイデン政権の国防長官候補者名は発表されなかった。ミシェル・フロノイ女史の可能性は消えたのか。単に時間をかけているだけなのだろうか。そうこうしている間にも、トランプ政権は先々週のアフガニスタンとイラク駐留米軍縮小に続き、ソマリアからの撤退も発表したようだ。米国防総省は一体どうなっているのかねぇ。

今週の産経新聞では「世界の警察官」を取り上げる。シェール革命、エネルギー自給化、オバマ大統領の「世界の警察官は辞める」発言、不要になった中東駐留米軍の撤退加速、といったマコトシヤカなるストーリーは本当なのか。天邪鬼の筆者はこれに挑戦している。詳細は木曜日の紙面をご覧頂きたい。

〇アジア
ビーガン米国務副長官が韓国を訪問するらしい。北朝鮮情勢を含む地域の安定に向けた両国間連携強化を協議するそうだが、一体何を話すのかね。ちなみに、ビーガン氏もあっという間に副長官に昇格したな。政治任用の国だから当然なのだが、それにしても、他に人はいないのだろうか。トランプ政権の末期を象徴する出張である。

〇欧州・ロシア
英のEU離脱をめぐり、英EU間FTA交渉が続いている。多くの分野で進展があったものの、「英海域でのEU漁船の漁業権」「公正な競争環境の確保」「紛争解決などのガバナンス」の3分野で重大な相違が残っているそうだ。おいおい、これって全然進展がなかったということではないのかい。英国はまだBrexitをやっているのだ。

〇中東
中東関係国際会議「マナマ対話」でサウジ王家のトルキー元駐米大使がイスラエル政府のパレスチナ迫害を批判し「中東で植民地主義を続けている」と発言したらしい。一昔前なら当然なのだが、イスラエル首相のサウジ訪問が報じられた後の発言だけに興味深い。サウジもトランプからバイデンに乗り換えようとしているのだろうか。

〇南北アメリカ
ジュリアーニ元ニューヨーク市長が法廷闘争のための全国行脚中に新型コロナに感染したという。一時は大統領候補にも名の挙がった大政治家だが、こうした晩年の「お騒がせ」振りを見ていると、米国内政の劣化は極まった思いがする。ジュリアーニよ、お前もか、と言いたいところだが、今はまず一日も早い回復をお祈りしたい。

〇インド
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

10月5-12月14日 国連総会 第五委員会 第75回会合(ニューヨーク)
11月16-12月18日 フィリピン・第18期国会第2常会第2部
12月1-27日 ソマリア議会選挙
7日 国連UNDP/UNFPA/UNOPS執行理事会 Election of Bureau(ニューヨーク)
7日 EU雇用・社会政策・健康・消費者問題担当相理事会(消費者保護)非公式会合(テレビ会議)
7日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(通信)(テレビ会議)
7日 EU外相理事会(ブリュッセル)
7日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
7日 ガーナ大統領および議員選挙
7日 中国11月貿易統計発表
7日 アルメニア・アイヴァズィヤン外相がロシアを訪問
8日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(運輸)(テレビ会議)
8日 EU一般問題理事会(ルクセンブルク)
8日 ユーロスタット、第3四半期実質GDP成長率発表
8日 ブラジル11月拡大消費者物価指数(IPCA)発表
8日 リベリア上院議員選
8日 中国・武漢市で最初の新型コロナ感染者出現から1年
8日 米大統領選、各州の結果確定期限
8日 Astra Rocket 3.2 (低軌道衛星)打ち上げ(アラスカ Kodiac)
8-9日 ブラジル中央銀行、Copom(金融政策委員会)
8-10日 日本・宇都外務副大臣が山口県および岡山県を訪問
8-14日 茂木外相がチュニジア、モリシャス、モザンビーク、南アフリカを訪問
9日 スイス連邦大統領、連邦副大統領選挙
9日 メキシコ11月CPI発表
9日 中国11月CPI発表
9日 ジャカルタ2020年地方総選挙
9日 元徴用工訴訟で新日鉄住金(現日本製鉄)に対する審問書の公示送達の効力発生
9日 長征11(GECAM)打ち上げ(四川省西昌衛星発射センター)
10日 ブラジル10月月間小売り調査発表
10日 米国11月消費者物価指数(CPI)発表
10日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)(フランクフルト)
10日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
10日 ノーベル賞授賞式(オンライン形式)
10-11日 欧州理事会(ブリュッセル)
11日 ロシア第3四半期経済活動別GDP統計(速報値)
11日 メキシコ10月鉱工業生産指数発表
11日 インド10月鉱工業生産指数発表
11日 アンガラA5(IPM2)打ち上げ(プレセツク宇宙基地)
12日 エレクトロン17号機(Strix-a)打ち上げ(ニュージーランドマヒア半島)
13日 ニジェール市議会議員選挙

<14-20日>
14日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(エネルギー)(テレビ会議)
14日 米大統領選で選挙人による投票
14日 PLSV(GSAT-12R)打ち上げ(サティシュ・ダワン宇宙センター)
14-17日 欧州議会本会議(ストラスブール)
15日 ロシア1-11月鉱工業生産指数発表
15日 中国11月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
15-16日 米国FOMC
15-16日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
16日 米国11月小売売上高統計発表
16-17日 WTO一般理事会
17日 EU経済・財務相理事会(ブリュッセル)
17日 EU環境相理事会(ブリュッセル)
17日 ユーロスタット、11月CPI発表
17日 スペイン・サンチェス首相がモロッコを訪問(ラバト)
17日 ソユーズ2.1b(ワンウェブ衛星#4 36機 ボストチヌイフライト#1)打ち上げ(ボストチヌイ基地)
18日 ロシア中央銀行理事会
19日 LauncherOne(ELaNa XX)打ち上げ(カリフォルニア州モハベ/ボーイング747-400空中発射)
20日 長征8(ET-SMART-RSS)打ち上げ(海南省文昌衛星発射センター)


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問