外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2020年11月9日(月)

外交・安保カレンダー(11月9-15日)

[ 2020年外交・安保カレンダー ]


今回の選挙はバイデンの勝利ではなく、トランプの敗北だった。同様に、4年前もトランプの勝利ではなく、ヒラリーの敗北だった。これが現時点での筆者の見立てである。オバマ時代のリーマンショックで白人労働者層が怒った。トランプ時代のコロナ禍と人種差別で非白人層が怒った。でも、敗北の真の理由はヒラリーとトランプの弱さだ。

専門家は安易に「米国社会の分断」が進んだなどと言うが、そもそも米国の「分断」は建国前から変わらない。変わりつつあるのは、影響力ある指導的政治家から穏健な保守派と現実的リベラル派が消え、政治の両極化が進んだこと。投票日から一週間経っても「敗北宣言」がないこと自体が米内政の劣化を象徴しているではないか。

今年筆者は敢えて「どちらが勝ちそうだ」とは言っていない。だから、筆者の予想が当たったとか、外れたとかを、云々する気は毛頭ない。これだけの結果が出た以上、今世界は前進するしかないだろう。ただ、トランプ氏が本当の政治家かどうかは、同氏が「敗北宣言」を出すか、出すとしたら、「いつどの段階か」、がポイントになる。

多くの民主党関係者は、トランプ氏がこのまま「敗北宣言」をしない方が長期的に有利だと思っているのではないか。岩盤のトランプ支持層にも暴力的な活動は未だ見られない。何かを準備中なのか、それとも、「勝負あった」と諦めているのか。トランプ人気も意外に脆いかもしれない。どこか「日本の芸能人の人気」に似ているではないか。

今、過去数カ月にファイルに溜め込んてきた日本の自称専門家の「米大統領選予測」なるものを再度詳しく読み返している。特に「トランプが絶対勝つ」と公言していた人々は今一体どこへ行ってしまったのか。4年毎に思うことだが、どんな小さなことでも口に出す以上は、最大限の知的正直さと慎重さが求められることを痛感する。

それにしても今回トランプ氏は善戦した。総得票数は伸ばしたし、非白人票も増えている。しかし、逆に言えば、今回の選挙でもトランプ氏を支えた「民族主義、大衆迎合主義、排外主義、差別主義」、筆者がダークサイドと呼んだ、あの醜い政治運動は息の根を止められるどころか、堂々と生き残ったということだ。

詳しくは今週の産経新聞とJapanTimesのコラムをご一読願いたい。

〇アジア
あの世界保健機関(WHO)が9日からオンラインで年次総会を開く。争点の一つは中国が強硬に反対する台湾のオブザーバー参加となりそうだ。多くの関係者が事務局長に台湾のオブザーバー参加を働きかけているというが、中国は徹底的に抵抗するだろう。これを「国際機関の政治化」という。

〇欧州・ロシア
バイデン勝利にロシア政府は沈黙らしいが、ロシア上院国際問題委員長は、「ロシア恐怖症や政治的な動機による制裁の増加を意味する」「絶対的に説得力のある勝者はいない」「バイデン氏が実際に勝利すれば、米同盟国や自由主義国が勢いづき、反ロ的な主張が高まる」と述べたそうだ。プーチンは本当に困っているのだろうか。

〇中東
イラン大統領が、「米国が国際的な義務を履行し、規則を尊重すべき時が来た」「米国は過去の過ちを償う好機を生かすべきだ」と述べたそうだ。イランのバイデン次期大統領に対する期待の高さが読み取れる。しかし、バイデン氏が簡単にイラン核合意に復帰するかは疑問だ。まずは、イランが如何なる譲歩をするか見極めるだろう。

〇南北アメリカ
「敗軍の将、兵を語らず」というが、今回の米大統領選挙では、どの程度「敗軍の兵が将を語る」かに関心がある。既に、トランプ陣営スタッフのトランプ離れは始まっているようだが、問題は大統領夫人や子供たちの言動だ。筆者がトランプ氏だったら「娘の一言」が決定打になると思うのだが、果たしてイヴァンカは父親に何を語るのか。

〇インド
ハリス次期副大統領の母親は1960年にアメリカに移民したチェンナイ出身のタミル系インド人で、著名な乳癌研究者。父親もジャマイカ出身の経済学者で、両親のDNAはさぞ強力だったに違いない。ちなみに、「カマラ」とはヒンドゥー教の女神の別名で、サンスクリット語の「蓮の女性」に由来するのだそうだ。今週はこのくらいにしておこう。


10月5-11月20日 国連総会 第三委員会 第75回会合(ニューヨーク)
10月5-11月25日国連総会 第二委員会 第75回会合(ニューヨーク)
10月5-12月14日 国連総会 第五委員会 第75回会合(ニューヨーク)
10月6-11月20日 国連総会 第六委員会 第75回会合(ニューヨーク)
10月8-11月10日 国連総会 第四委員会 第75回会合(ニューヨーク)
10月19-11月12日 第14期第10回ベトナム国会(ハノイ)
10月27-11月17日 第VIII期第10回ラオス国民議会(ビエンチャン)
10月28-11月10日 インド ビハール州選挙
11月4-20日 2020年度IAEAによる福島の海洋モニタリング・プロジェクトの実施
9日 EU外相理事会(貿易)(テレビ会議)
9日 米韓外相会談(ワシントン)
9日 メキシコ10月自動車生産・販売・輸出統計・CPI発表
9-10日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
9-14日 世界保健機関(WHO)オンライン年次総会
10日 EU一般問題理事会(開催地未定)
10日 中国10月CPI発表
10日 ヨルダン代議院(下院)選
10日 米最高裁、テキサス州がオバマケア廃止を求めた訴訟を審理
10日 米アップルが特別イベントで製品発表
10-12日 アフリカコム(ケープタウン、オンライン)
11日 APEC最終実務者会合(バーチャル形式)
11日 ブラジル9月月間小売り調査発表
11日 メキシコ9月鉱工業生産指数発表
11日 ベリーズ国民議会選
11日 中国全土で毎年恒例「独身の日」バーゲンセール
11日 米・ベテランズデー(退役軍人の日)(外為、債権市場が休場。株式、商品市場は通常取引)
11-12日 欧州議会本会議(ブリュッセル)
11-15日 第37回ASEANサミット(ハノイ)
12日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
12日 EU一般問題理事会(結束)(ブリュッセル)
12日 インド9月鉱工業生産指数発表
12日 米国10月消費者物価指数(CPI)発表
12日 米・TikTok利用が全面禁止の方針
12-14日 日韓議員連盟の韓国側議連関係者が来日
12-15日 東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳テレビ会議
13日 EU司法・内務相理事会(ブリュッセル)
13日 パリ同時多発テロから5年
14-21日 インド第40回インド国際貿易フェア(ニューデリー)
15日 栃木知事選・宇都宮市長選
15日 ファルコン9(SpaceX社有人型ドラゴン運用初号機)打ち上げ(ケネディ宇宙センター)


<16-22日>
16日 APEC閣僚会合(バーチャル形式)
16日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
16日 中国10月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
16-17日 EU農水相理事会(ブリュッセル
16-20日 WFP執行理事会 Second regular session(ローマ)
16-12月18日 フィリピン・第18期国会第2常会第2部
17日 米国10月小売売上高統計発表
17日 ロシア1-10月鉱工業生産指数発表
17-18日 アジア物流・海運会議(香港)
18日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(フランクフルト)
18日 ユーロスタット、10月CPI発表
18日 南ア政府主催投資会議(オンライン)
18日 ヴェガ(SEOSat-Ingenio, TARANIS)打ち上げ(仏領ギアナ基地)
19日 EU競争力担当相理事会(域内市場・産業)〔ブリュッセル
19日 EU外相理事会(ブリュッセル)
19日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
19-20日 IAEA理事会(ウィーン)
19-20日APEC最高責任者対話(バーチャル形式)
20日 G20財務相会合(バーチャル形式)
20日 G20外務相会合(バーチャル形式)
20日 APEC首脳会合(バーチャル形式)
20日 EU外相理事会(防衛)(ブリュッセル)
20日 EU競争力担当相理事会(宇宙)(ブリュッセル)
21-22日 インドのナレンドラ・モディ首相訪沙・G20サミット(リヤド)
21-22日 G20首脳会合(バーチャル形式)
22日 ブルキナファソ大統領・国民議会議員選挙
22日 ファルコン9(Sentinel-6/ Jason-CS)打ち上げ(ヴァンデンバーグ空軍基地)


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所研究主幹