外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2020年11月6日(金)

外交・安保カレンダー(11月2-8日)

[ 2020年外交・安保カレンダー ]


今週もまた数日遅れの掲載となった。当然米大統領選挙の結果待ち理由だから、ご理解いただけると思う。幸い多くのテレビ局、ラジオ局からお声が掛かったが、今年ばかりは、「どちらが勝つか」「どちらが日本にとって良いか」といったご質問には、全て「申し訳ないけど、立場上、お答えできないんです」で通させてもらった。

昨日はある大先輩のジャーナリストとご一緒する機会があった。米主要メディアの予測はバイデン有利だったが、番組中に「トランプ俄然優勢」なる速報が流れ、「これで(激戦州は)みんな真っ赤(共和党勝利)になるぞ」と豪語されていた。だが、お気の毒にも状況は急変、日付が変わる頃には「バイデン勝利の可能性」が急浮上した。

これでは「みんな真っ赤」どころか、今頃は「真っ青」かもしれない。しかし、ワシントンで人脈を作るならともかく、東京にいて「トランプ再選」を予測できることに、一体どの程度の価値があるのか。良く分からない。「勝者が決まらない」ことを「予測」して「的中」させた人がいるとの話も聞いた。勝者なんて「いつか必ず決まる」ものだが・・・。

いずれにせよ、今回のトランプの振る舞いはある意味で予測通りの展開だ。トランプ候補が勝つには、2016年に民主党から奪取したラストベルトの激戦州で今年も勝つ必要がある。だが、投票率の上昇その他の理由で、郵便投票や都市部の開票が始まれば、トランプ票は伸び悩む。勝利宣言するなら、あの時しかないのだろう。

先週は「逆張り」は「邪道」であり、「多くの専門家は今年どちらが勝つか、心の中では分かっているが、言えないのだろう。4年前の苦い教訓からか、今年は両論併記でお茶を濁す人が多い」と書いた。これが最も実態に近かったと思う。いずれにせよ、大事なことは「予想が当たる」ことよりも、選挙後の米国と世界がどうなるかの方だ。

今週JapanTimesでは、先週書いた9つのシナリオのうち、実現可能性があるのは上下両院が現状維持で、大統領が再選か、交代するかの2シナリオしかないと書いた。9つ目のシナリオである「地滑り的勝利」は幻だった。これにより米内政の劣化が回復不能になることを強く危惧する。英語で申し訳ないが、時間があればご一読願いたい。

〇アジア
トランプ政権は風前の灯火かもしれないが、アジアには意外に多くのトランプファンがいる、という話をBBCが報じていた。そうしたファンは香港、台湾、ベトナム、日本にいるというのだが、何のことはない「中国はけしからん」と思っている人々の多い国ばかりではないか。異常なほどの親トランプがいるのは日本だけではないのだ。

〇欧州・ロシア
英国イングランドでは5日から、2度目のロックダウンが始まったという。ロンドンでは4日夜最後の外食を楽しむ人達で賑わったそうだが、それって駄目じゃないのか?仏独に続く措置だそうで、期間は12月2日までというが、これでは欧州出張も当分難しそうだ。

〇中東
先月末、トルコとギリシャ沖のエーゲ海でマグニチュード7.0の地震が発生したが、発生から4日経って崩れ落ちた建物の中から1人の少女が救出された。本当に良かったが、あの地域は意外に地震が多いことに気付かされた。ギリシャ、トルコ、キプロスとイスラエル、レバノン、シリアの位置関係を時間があったら地図で確かめてほしい。

〇南北アメリカ
米大統領選挙の話はキリがないので、今週はやめておく。

〇インド
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。


2-6日 第38回ASEANエネルギー相会合および関連会合(ダナン)
3日 ユーログループ(ブリュッセル)
3日 米国大統領・連邦上下院選挙
3日 パラウ国民投票および上下院選
3日 グアム立法院および合衆国議会下院に議決権のない代表選
3日 プエルトリコ知事および上下院選
4日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
4日 米国9月貿易統計発表
4日 ブラジル9月鉱工業生産指数発表
4日 米連邦地裁が政権のTikTok利用全面禁止措置について審理
4-5日 米国FOMC
4-5日 51st International JVE(コロンボ)(第51回国際JVE会議)
5-10日 第3回中国国際輸入博覧会(上海)
6日 米国10月雇用統計発表
6日 ブラジル10月IPCA発表
6日 ロシア10月CPI発表
6日 ファルコン9(通信衛星 SiriusXM-7)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
6日 長征6(ÑuSat 10機)打ち上げ(山西省太原衛星発射センター)
7日 中国10月貿易統計発表


<9-15日>
9日 メキシコ10月自動車生産・販売・輸出統計・CPI発表
10日 中国10月CPI発表
11日 ブラジル9月月間小売り調査発表
11日 メキシコ9月鉱工業生産指数発表
11-15日 第37回ASEANサミット(ハノイ)
12日 米国10月CPI発表
12日 インド9月鉱工業生産指数発表
14-21日 インド第40回インド国際貿易フェア(ニューデリー)


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問