キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2020年10月27日(火)
[ 2020年外交・安保カレンダー ]
今年も残り8週間となった。来週には米大統領選挙の投票日が来る。今年はどちらが勝つか、と4年ごとに聞かれる。昔は結構予測し易かったのだが、4年前から俄然難しくなった。多くの専門家がトランプ現象の広がりを予測できなかったからだ。勿論、今回も逆張りする手はあるのだろうが、それは邪道だ、と筆者は思う。
おそらく多くの専門家は今年どちらが勝つか、心の中では分かっているが、言えないのだろう。4年前の苦い教訓からか、今年は両論併記でお茶を濁す人が多いのではないか。しかし、彼らは競馬の予想屋ではない。真に議論すべきは、米国内政、特にアメリカ保守主義の行方ではないか。この点を今週のJapanTimesに書いた。
要約すれば、ホワイトハウス、上院、下院を民主、共和両党が支配する可能性は8通りある。それぞれについてその蓋然性と東アジアへの影響を簡単にまとめたものだが、実は9つ目のシナリオがある、というのがミソだ。お時間のある方は、英語で申し訳ないが、ご一読願いたい。
先週触れなかった菅首相のインドネシア訪問は概ねうまくいったようだ。首脳二人だけの会談(テタテと呼ぶ)も、中身は知らないが、良かったと側聞する。いずれにせよ、筆者の仕事は具体的会談内容に立ち入ることではないし、筆者の見解が政府を代表することもない。この点についてはくれぐれも誤解のないようお願い申し上げる。
今週筆者が注目するのは中国のいわゆる「五中全会」だ。正式には中国共産党第19期中央委員会第5回全体会議という。いつから「五中全会」と呼ばれるようになったかは知らないが、考えてみれば、この「重要会議」が26日から始まり、「2021年から5年間の経済運営方針を示す第14次5カ年計画」を議論するというから不思議だ。
いくら「中国の特色ある」市場経済とはいえ、今時、しかもコロナ禍の真っ最中に、五か年計画で長期の目標成長率を設定するなんで余りにアナクロではないか。しかも、今回は「2035年まで15年間の長期目標も話し合う」と報じられた。習近平総書記の長期政権だけが決まる可能性すら噂されている。
中国の内政に茶々を入れるつもりはないが、「党の指導」で経済成長率が決まる経済システムを我々は如何に評価すべきか、真剣に考えるべき時期に来ているのではないか。問題が単なる経済貿易の話ではなく、国家安全保障の領域に迫りつつあるからだろう。この傾向は米国だけでなく、欧州でも顕著になりつつある。
〇アジア
タイのバンコクで大学生主導の反政府デモが行われた。非常事態宣言解除後、中心部の商業施設周辺を占拠してのデモは初めてだという。学生たちの要求は「現政権退陣と憲法改正、王室制度改革」なので、政府が対応を一つでも間違えると騒乱は一層深刻化しかねない。要注意である。
〇欧州・ロシア
アルメニアとアゼルバイジャンアが米国の仲介で26日午前8時からの停戦で合意した。9月27日以来停戦合意は3回目だが、過去2回は、予想通り、いずれも長続きしなかった。停戦に向けまずロシアが試み、米国がそれに続いたが、両国が努力しても纏まらないこの紛争、当分続きそうである。
〇中東
2017年8月、アラブ首長国連合(UAE)の若い王族や兵士を乗せたヘリコプターがイエメンで墜落し、UAEが米軍に救出支援を要請、数時間後に米特殊部隊がUAEの王族と兵士を救出した話をWSJが報じている。こうした米軍とUAEの信頼関係がUAE・イスラエル関係正常化につながったのだそうだ。なるほど、凄い話ではないか。
〇南北アメリカ
直接アメリカではないが、ローマ教皇が13人の枢機卿を新たに発表し、その中でアフリカ系米国人を初めて指名したという。アフリカ系は初めてというが、元々キリスト教はローマに伝わる前に中東アフリカで広がった宗教で、アフリカのエチオピアには今も多数の「コプト(エジプト)系」キリスト教徒がいる。アフリカ系枢機卿など当然だ。
〇インド
ロイターによれば、米アップルの委託製造業者である台湾3社がインドでのスマートフォン生産に総額9億ドルを投じる計画だという。インドの補助金制度を活用するというのだが、先端技術の世界ではインド、中国、台湾、米国の競争が激化しつつあるようだ。今週はこのくらいにしておこう。
5-11月20日 国連総会 第三委員会 第75回会合(ニューヨーク)
5-11月25日国連総会 第二委員会 第75回会合(ニューヨーク)
5-12月14日 国連総会 第五委員会 第75回会合(ニューヨーク)
6-11月4日 国連総会 第一委員会 第75回会合(ニューヨーク)
6-11月20日 国連総会 第六委員会 第75回会合(ニューヨーク)
8-11月10日 国連総会 第四委員会 第75回会合(ニューヨーク)
19-11月12日 第14期第10回ベトナム国会(ハノイ)
25-30日 米・ポンペオ国務長官がインド、スリランカ、モルディブ、インドネシアを歴訪
26日 カナダ・サスカチュワン州選挙
26日 米最高裁判事人事の上院本会議採決
26日 ソユーズ2.1b(ロシア航法測位衛星GLONASS-K 15)打ち上げ(プレセツク宇宙基地)
26-27日 B20サミット
26-29日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
26-29日 中国共産党 第19期中央委員会第5回総会(5中総会)(北京)
27日 メキシコ9月貿易統計発表
27-28日 ブラジル中央銀行、Copom(金融政策委員会)
27-28日 国連人間居住計画 執行理事会 2nd 2020 regular meeting (ナイロビ)
27-11月13日 INCB(国際麻薬統制委員会) 第129回会合(ウィーン)
28日 日本・全国財務局長会議(財務省)
28日 タンザニア大統領および総選挙(投票日)
28-30日 CTBTOワーキンググループA 第58回会合 (ウィーン)
29日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)(フランクフルト)
29日 米国第3四半期GDP発表(速報値)(商務省)
29日 エレクトロン15号機(キヤノン電子のCE-SAT-IIBなど)打ち上げ(ニュージーランド・マヒア半島)
29-30日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会 非公式会合(運輸)(パッサウ/バート・グリースバッハ)
30日 米・9月PCE物価指数(商務省)
30日 EU3四半期GDP発表(EU統計局)
30日 EU 9月失業率発表
30日 ブラジル8月全国家計サンプル調査発表
31日 ジョージア議会選挙
31日 コートジボワール大統領選挙
31日 ベルリン新空港「ベルリン・ブランデンブルク国際空港」開港
31日 長征6(地球観測衛星Qilu-1, 4)打ち上げ(山西省 太原衛星発射センター)
11月1日 モルドバ大統領選挙
1日 青森市長選
1日 米国が冬時間入り(11月第1日曜日)
<11月2-8日>
2-6日 第38回ASEANエネルギー相会合および関連会合(ダナン)
3日 ユーログループ(ブリュッセル)
3日 米国大統領・連邦上下院選挙
3日 パラウ国民投票および上下院選
3日 グアム立法院および合衆国議会下院に議決権のない代表選
3日 プエルトリコ知事および上下院選
4日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
4日 米国9月貿易統計発表
4日 ブラジル9月鉱工業生産指数発表
4日 米連邦地裁が政権のTikTok利用全面禁止措置について審理
4-5日 米国FOMC
4-5日 51st International JVE(コロンボ)(第51回国際JVE会議)
5-10日 第3回中国国際輸入博覧会(上海)
6日 米国10月雇用統計発表
6日 ブラジル10月IPCA発表
6日 ロシア10月CPI発表
6日 ファルコン9(通信衛星 SiriusXM-7)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
6日 長征6(ÑuSat 10機)打ち上げ(山西省太原衛星発射センター)
7日 中国10月貿易統計発表
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問