外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2019年9月3日(火)

外交・安保カレンダー(9月2-8日)

[ 2019年外交・安保カレンダー ]


 先週末はまたまた地獄の出張日程を組んでしまった。金曜日は朝一番でニッポン放送のラジオ生出演。終了後直ちに大阪に向かい、番組二本を録画収録し終わったのが17:00過ぎ。それから東京に戻り、そのまま羽田空港へ。深夜便で香港に向かった。帰国は月曜日早朝羽田着だから香港滞在は48時間未満。ホントよくやるよ、と思う。

 香港は久し振りだが、当然お目当ては民主化要求デモだ。確か先週末が連続で13週目となるはず。立場上、取材記者ではないのでPressと書かれた黄色のジャケットは着れないし、かといって最早外交官ではない。要するに、ただの一般市民の野次馬に限りなく近いのだから、当然あまり危険な所へは行かない、というか、行けない。

 元外務省職員の宮家が「のこのこ」香港にやってきて、万一警察に拘束でもされたら、それこそ笑い者だ。かといって、せっかくのチャンスは無にしたくない。という訳で、今回は湧き上がる好奇心を最大限の自制心で抑えた、というのが正直なところだ。詳細は今週の産経新聞JapanTimesのコラムを読んでほしい。

 今回最も印象深かったのは、最近の香港のデモと、1960年代、70年代の日本の学生運動との違いだった。香港の若者と一緒に行進していると、1969年か70年か忘れたが、高校生なのに鎌倉から東京まで出かけたことを思い出す。怖いもの見たさで、連合赤軍の集会場所である新宿の小さな公園に近付いた。彼らは本当に怖かった。

 当時の東京に比べれば、今の香港のデモはまだまだ非暴力的だ。確かに火炎瓶が飛び、放水車や催涙ガス弾も投入されたが、70年安保の新宿騒動などを目撃した者にとっては、香港のデモなど可愛いものだ。他方、正直なところ、当時の日本の学生運動の参加者には今の香港の若者のような本当の危機感、切迫感はなかったと思う。

 理由は簡単、当時の東京では言論の自由も集会の自由も完全に認められていたからだ。一方、今の香港では一度中国の軍事介入を許したら、今享受している様々な自由など一瞬にして失われる可能性がある。その意味で、香港の若者は真剣そのもの、1970年前後の日本の甘っちょろい学生運動とは全く異なるのだなぁと実感した。

 もう一つ、コラムに書けなかったことを書いておこう。現地の事情通から聞いて初めて納得したのが、香港の財界というか、エリート層のデモに対する対応ぶりだった。日本の学生運動は「反権力、反資本、反大企業」だったが、こちらはちょっと違う。彼らは犯罪人引渡条例の対象が自分たちであることを正確に理解しているようだ。

 勿論、香港の本当の大金持ちはとっくにカナダやアメリカの市民権を得て、既に香港を去っているかもしれないが、それ以外の財界関係者にとって新条例は死活問題なのだろう。なるほど、彼らが若い民主活動家を支援するのも当然だ。正に、百聞は一見に如かず、である。人口750万の都市(国家?)だが、ここの内政は実に奥深い。

〇アジア
 現地からの最新情報によると、香港では2日から新学期が始まった中学生や高校生が授業をボイコットしているそうだ。中高生だけでなく、大学生らによる授業ボイコットやストライキも呼び掛けられている。そう言えば、先週末も、2日からゼネストをやると言っていたっけ。でも、香港はこうした混乱に耐えられるのだろうか。

 2日から中国の国務委員兼外相が訪朝するらしい。これは北朝鮮外務省が主導権を握りつつあることを示すのか、それとも中国の単なるポーズなのか、気になるところだ。常識的にみれば、現時点で中国外交が活発に動きだす可能性は低いと思われるのだが・・・。様々な頭の体操をやっておく必要があることだけは確かだろう。

 もう一つ、スキャンダル疑惑が報じられた韓国大統領側近が2日に会見、娘の不正入学疑惑などをめぐり、「国民に大きな失望を与えた。自身の周辺に厳しくできなかった点を深く反省し、謝罪する」、「国民から機会を与えられれば、必ずやらねばならない使命がある」などと述べ、法相指名は辞退しないらしい。これは見物である。

〇欧州・ロシア
 英首相のEU離脱が更なる波乱を招いている。同首相は与党・保守党内の造反議員を厳正に処分する方針だそうだ。英政界の気の早い向きは、既に総選挙の可能性に言及し始めた。だが、身内すら制御できない首相が総選挙に勝てるのか。厳正処分とは英保守党の更なる縮小を意味するのではないのか。お手並み拝見である。

〇中東
 週末、イスラエル軍がレバノンの武装組織ヒズボラの拠点に砲撃を加えたという。中東専門家は、仏大統領が働き掛けている国連総会での米イラン首脳会談に反対するイスラエルが、米イラン接近を潰すためにイランに近いヒズボラを攻撃した、と分析しているようだが、真相は分からない。中東では「敵の敵もまた敵」かもしれないからだ。

〇南北アメリカ
先週末は米国では「レーバーデイ」週末と呼ばれ、基本的にこの週で米国の夏季休暇は終わる。1日、トランプ政権は中国製家電、衣料品等への制裁関税「第4弾」を発動、中国も報復措置で対抗した。米中貿易戦争は泥沼化しているが、現時点でCNNは、国内政治よりも、巨大ハリケーン「ドリアン」の動向に注目しているようだ。

〇インド亜大陸

 インドの無人月探査機「チャンドラヤーン2号」が月の周回軌道に乗り、7日にも月面着陸を目指すという。インドが月面着陸を成功させれば米国、中国、旧ソ連に続き4カ国目となるそうだ。意外かもしれないが、インドは日本以上に宇宙大国なのだ。今週はこのくらいにしておこう。



7月29-9月13日 ジュネーブ軍縮会議(CD)第3部(ジュネーブ)
26-9月6日 包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)作業部会B及び非公式・専門家委員会第53回会合(ウィーン)
26-9月7日北方四島の医師・看護師等に対する研修の実施
26-9月8日 テニス全米オープン
26-11月15日「国連PKO支援部隊早期展開プロジェクト(アフリカ)」の実施
28-9月2日 対日理解促進交流2019・日本の大学生訪韓団(スポーツ交流)
28-9月6日対日理解促進交流2019・日本の大学生訪韓団
28-9月7日 ベネチア国際映画祭
29-9月2日 鈴木外務大臣政務官が東ティモール及び韓国訪問
1-2日 G20労働雇用相会合(愛媛県)
2日 第15回ASEAN環境大臣会合(カンボジア)
2日 第16回ASEAN電子商取引に関する調整委員会(バンコク)
2日 米・レーバーデー(労働者の日)(ニューヨーク市場は全て休場)
2-3日OSCE(欧州安全保障協力機構)・外務省共催の会議「デジタル時代の包括的安全保障」の開催(外務省)
2-4日 中国の王国務委員兼外相が訪朝
2-5日欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
2-6日 ASEANエネルギー大臣会合及び関連会議(タイ)
2-6日 APEC中小企業担当相会合(チリ・コンセプシオン)
3日ブラジル7月鉱工業生産指数発表
3-6日 UNDP、UNFPA、UNOPS執行理事会第二定例会合(ニューヨーク)
3-6日 第4回ASEANビジネス諮問委員会および合同ビジネス会議(バンコク)
3-6日中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)北小委(米ポートランド)
3-11日 2019年度中国高校生訪日団第1陣の訪日(日中植林・植樹国際連帯事業)
3-12日 第51回ASEAN経済大臣会議および関連会議(バンコク)
4日 米国7月貿易統計発表
4日 ベージュブック
4日カナダ中央銀行政策金利発表
4-6日 ソウル安保対話(SDD)
4-6日 東方経済フォーラム(滞在中に日ロ首脳会談)(ロシア・ウラジオストク)
4-7日 米・ペンス副大統領がイギリス及びアイルランドを訪問
4-8日 ニュージーランドホームショー(オークランド)
4-10日ローマ法王がモザンビーク、マダガスカル、モーリシャスを訪問
5日か6日 ロシア8月CPI発表
5-7日 15th International Travel Expo Ho Chi Minh City(ホーチミン)
6日 米国8月雇用統計発表
6日 ブラジル8月拡大消費者物価指数(IPCA)発表
6日 EU第2四半期実質GDP成長率発表
6日 ロシア中央銀行理事会
6日 アマゾン近接諸国の緊急首脳会談(コロンビア・レティシア)
6-11日 ドイツ・家電見本市「IFA」(ベルリン)
7日 インド無人月探査機「チャンドラヤーン2号」が月面着陸予定
8日 中国8月貿易統計発表
8日モスクワ市議選
8日 F1イタリアGP決勝(モッツァ)


<9-15日>
9日 メキシコ8月CPI発表
9日 日本・アラブ経済フォーラム(エジプト・カイロ)
9日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
9日 ツバル議会選挙
9日 北朝鮮の建国記念日71周年
9日 国連総会・核兵器の完全廃絶に向けた国際の日に関するハイレベル総会会合(ニューヨーク)
9日か10日 ロシア第2四半期経済活動別GDP統計(速報値)発表
9-10日 UNウィメン執行理事会第二定例会合(ニューヨーク)
9-13日 IAEA理事会(ウィーン)
9-27日子どもの権利委員会第82回会合(ジュネーブ)
9-27日国連人権理事会第42回会合(ジュネーブ)
10日 中国8月CPI発表、PPI発表
10-22日 フランクフルト国際自動車ショー(一般向け12日から)
11日 ブラジル7月月間小売り調査発表
11日 メキシコ7月鉱工業生産指数発表
11日 H-IIBロケット8号機打ち上げ(種子島宇宙センター)
11-12日 IFAD執行理事会第127回会合(ローマ)
11-12日 「一帯一路サミット(Belt and Road Summit)」(香港)
11-13日 UNICEF執行理事会第二定例会合(ニューヨーク)
11-14日 Vietnam International Exhibition on Products, Equipment, Supplies for Medical, Pharmaceutical, Hospital & Rehabilitation(ホーチミン)
12日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
12日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)(フランクフルト)
12日 インド7月鉱工業生産指数発表
12日 米国8月消費者物価指数(CPI)発表
13日ユーログループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ヘルシンキ)
13日 米国8月小売売上高統計発表
13日 中国中秋節
13-14日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会 非公式会合(ヘルシンキ)
13-15日 17th Franchise & License Expo Indonesia(ジャカルタ)
14日 西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)臨時首脳会議(ブルキナファソ・ワガドゥグゥ)
15日 チュニジア大統領選挙


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問