外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2019年8月13日(火)

外交・安保カレンダー(8月12-18日)

[ 2019年外交・安保カレンダー ]


 今週はお盆休みだが、この原稿だけは書くことにした。北半球各地は夏休みで大きなニュースはないが、それでも気になることが少なくない。今週は事務レベルで日米貿易協議がある。双方ともうまくまとまれば8月中にも大筋合意させたいのではないか。トランプ氏は農業分野での成果が欲しいだろうし、9月には内閣改造もあるし。

 日韓の情報戦は相変わらずだ。日本のメディアは「徴用工問題に関する日本の主張を米国が複数回支持した」と報じたが、韓国大統領府は「報道について事実と異なることが確認された」と発表した。「米韓の国家安全保障会議で確認したところ、事実ではなかった」としている。泥仕合とは正にこのことだが、肝心の米国は沈黙だ。

 ホルムズ海峡がらみの「有志連合」について日本政府の対応が徐々に固まりつつあるようだ。新法は難しいし、既存の「建付けの悪い」法令を使おうとしても限界がある。それにしても、今回の米国の「有志連合作り」は実にお粗末だ。英国は当初提唱した「欧州連合」から乗り換えたが、他の欧州諸国は全く乗って来ていない。

 この件では8月初頭、日経新聞のインタビューがあり、筆者は次の通り述べた。

●ホルムズ海峡への自衛隊派遣は古くて新しい問題だ。1991年の湾岸戦争より前、イラン・イラク戦争時の87年も米国がタンカー防護へ有志連合を呼びかけた。日本は施設建設など資金援助しかできなかった。

●日本が今回の有志連合について「米国から詳細な計画を聞かないと自衛隊の派遣を具体的に検討できない」というなら、32年間怠慢だったと言わざるを得ない。日本のタンカーがいつでも攻撃され得る状況で、必要に応じ機敏に動ける法律が今もないからだ。

●自国の船を自国で守るのは当然だ。米国の計画を待つまでもなく自衛隊派遣の可能性を検討すべきだ。イランとの伝統的友好関係も重要だが、自国の権益を守るための活動と説明するしかない。

●2015年に成立した安全保障関連法は自衛隊のできることしか書かないポジティブリストで制約が大きいが、現行の自衛隊法でも海上警備行動などは検討可能だろう。派遣して支障があれば検証し新たに法整備すればよい。

 この考え方は今も変わらない。ところで、イランといえば面白い記事を最近見かけた。確か、National Interest誌だったと思うが、昨年3月、イスラエルの最新鋭ステルス戦闘機F35がイランの上空に侵入し、テヘランからイスファハン、バンダルアッバースまでロシア製S300防空システムに全く検知されずに偵察飛行を行ったと報じていた。

 直ちにハーメネイ最高指導者は調査を命じたが、イラン空軍司令官は事実を隠蔽しようとしたらしい。また、ハーメネイはロシアがイスラエルにイラン防空システムの機密を提供したと疑ったそうだ。昨年3月末、クウェート紙Al-Jaridaがこれを報じたが、シリアの反体制派系サイトなどは「イスラエルのプロパガンダだ」と一蹴していた。

 ところが今年5月末に件の空軍司令官が更迭され、イスラエル機のイラン上空隠密飛行が事実だった可能性が再び浮上した。最新のF35、しかもイスラエル用に改良された機体だから、ロシア製対空ミサイルシステムに検知されなかった可能性はある。だが、空中給油なしでどうやって飛ぶのか、誰が支援したのか、謎は深まるばかりだ。

 今週はこのくらいにしておこう。



7月29-9月13日 ジュネーブ軍縮会議(CD)第3部(ジュネーブ)
5-20日 米韓合同軍事演習開始
12日 インド6月鉱工業生産指数発表
12日 第1回カスピ海経済フォーラム(トルクメニスタン・アワザ)
12-18日 河野外務大臣がブルガリア、スロベニア、クロアチア、セルビア訪問及びイタリア・ベネチアの国際会議「ダイアローグ」出席
13日 米国7月消費者物価指数(CPI)発表
13-14日 日米貿易協定をめぐる事務レベル会合(ワシントン)
13-24日 鈴木外務大臣政務官がフィジー、ツバル、ソロモン諸島及びカンボジアを訪問
14日 EU4-6月期GDP改定値
14日 中国7月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
14日 慰安婦の日(韓国)
14-16日 第74回投資調整委員会(CCI)〕(マレーシア)
14-16日 第8回ハノイ部品調達展示商談会(ハノイ)
15日 米国7月小売売上高統計発表
15日 北朝鮮祖国解放記念日・韓国光復節
15日 インド・独立記念日
15日か16日 ロシア1-7月鉱工業生産指数発表
15-16日 APEC医療イノベーションフォーラム(チリ・プエルトバラス)
15-30日 APEC閣僚会合(プエルトバラス)
16日 エレクトロン(Electron)打ち上げ(ニュージーランドマヒア半島)
16-18日 「ウッドストック・フェスティバル」50周年記念野外コンサート(米ニューヨーク州)
16-18日 ニュージーランド ベビーショウ(オークランド)


<19-25日>
19日 EU7月CPI発表
19日 長征3B(APStar 6D)打ち上げ(四川省 西昌衛星発射センター)
20-21日 インド・ジャイシャンカル外相がバングラデシュ・ダッカを訪問
21日 メキシコ6月小売・卸売販売指数発表
21-23日 エアギター世界選手権(フィンランド中部オウル)
22日 FOMC議事要旨(FRB)
22日 ソユーズ2(国際宇宙ステーション用ソユーズMS-14)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)
22日 デルタ4(GPS 3-SV02)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
22-23日 ASEANスマートシティネットワーク年次総会(バンコク)
23日 メキシコ第2四半期GDP発表
23-24日 APEC食料安全保障担当相会合(プエルトバラス)
23日か26日 ロシア7月雇用統計発表
23日か26日 ロシア1-6月貿易統計発表
24日 ナウル議会選
24-26日 G7首脳会議(フランス・ビアリッツ)
25日 埼玉県知事選
25-28日 ASEANコネクティビティ調整委員会(バンコク)
25日-9月1日 モザンビーク国際見本市(FACIM)(マプト)


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問