外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2019年7月16日(火)

外交・安保カレンダー(7月15-21日)

[ 2019年外交・安保カレンダー ]


 今週は先週書けなかった問題を取り上げよう。日本が半導体製造に不可欠な化学物質3品目の対韓輸出管理体制を変更する方針を発表して早くも2週間が経った。先週韓国経済官庁の課長が二人訪日し、経産省で6時間近く「説明会」を行った。敢えて普通の(小汚い)会議室で、ご丁寧に「事務的説明会」という張り紙までしてあった。

 これに対し、韓国では「日本側の場所の設定や基本的な応対で韓国に対する冷遇が強く感じられた」などと批判的に報じられた。あれだけ「あからさま」にやれば一目瞭然だろう。日本側担当者たちが意図的にああせざるを得ないのは理解する。それにしても、申し訳ないが、外交的には稚拙だ。筆者ならもっと「慇懃無礼」にやるだろう。

 この問題については今週のJapanTimesに英文のコラムを書いた。日本語版はないので、ここで簡単に内容をご紹介する。全体の詳細は水曜日掲載の英語版をご一読願いたいが、要は、精緻に組み立てられたWTO協定と整合性のある貿易措置を発動するのは良いが、最大の問題はその目的と実現可能性だということだろう。

 先ほど、今回の一連の動きは「外交的に稚拙」と書いたが、その意味は「ジャケットとネクタイがなかった」「会議室が汚かった」「お茶も出なかった」「名札もなかった」などといった形式的理由ではない。これだけのことをする以上、その最終目的が明確であり、それに至る流れについても事前に十分検討していたかどうかが気になるのだ。

 日本が緊密な関係にある友好国に対して今回ほど厳しい措置をとるのは恐らく第二次大戦後初めてではないか。あまりに長い間「平和国家」を自任し強硬措置を自制してきたからか、どうやら日本は効果的な「喧嘩」の仕方を忘れてしまったのではないか。それが筆者の率直な印象である。一言で言えば、長期的戦略がないのだ。

 そもそも、経済的圧力はあまり効果がない。そのことは今の米イラン関係を見ていれば一目瞭然である。昔なら、こうした措置を発動する可能性を示唆するだけで効果があったかもしれないが、今の韓国への強硬措置発動は逆効果となる可能性の方が高いだろう。その最大の理由はこの10年間で韓国外交が変わりつつあるからだ。

 これまで何度も書いてきたことだが、中国の台頭と北朝鮮の核武装化により、韓国は冷戦時代の事実上の韓米日三国同盟による「基軸外交」から、より新しく、かつ自主的と言えば聞こえは良いが、何のことはない伝統的な「バランス外交」に回帰しつつある。このような韓国との付き合い方には従来とは異なる新たな知恵が必要だ。

 日本が韓国と同様の「場外乱闘」をやって我々は一体何を得るのか。韓国大統領が自己の非在来型外交政策を正当化するために最も必要なのは「強硬で頭の固い日本」だ。一昔前の米国のネオコン、イスラエルの超正統派とイランの革命防衛隊最強硬派は不思議な「共存関係」にあった。このままでは日韓関係もそうなるだろう。

 米国は真面目に仲介する気はないだろうし、仮に試みても今のトランプ政権には実現不可能だろう。米国自体のクレディビリティが低下している時に、米国ができることは限られる。韓国は米国頼みのワシントン詣を繰り返すだろうが、あまり効果は期待できない。今の日本に必要なのは戦略であり、ワシントン詣ではないはずだ。

 先週末は三連休だったので(?)、今週は短め、このくらいにしておこう。



7月1-26日 自由権規約人権委員会 第126回会合(ジュネーブ) 
7月8-8月9日 国際法委員会 第71回会合 second part(ジュネーブ)
7月10-19日 対日理解促進交流プログラムJENESYS2019 韓国青年訪日団(第1団)
11-22日 台湾総統がハイチなどカリブ海諸国を歴訪
14-18日 ASEAN経済高級実務者会議(バンコク)
15日 EU外相理事会(ブリュッセル)
15日 中国第2四半期経済指標(GDP、CPI、固定資産投資、社会消費品小売総額など)発表
15日 中国・鉱工業生産、小売売上高発表(国家統計局)
15日 韓国・元挺身隊員訴訟の原告が三菱重工業に求めた協議期限
15日 米・グアテマラ首脳会談(ワシントン)
15日 台湾国民党、次期総統選公認候補を決める世論調査の結果発表
15日 インド・無人月面探査機(GSLV-Ⅲ Chandrayaan2)打ち上げ(サティシュ・ダワン宇宙センター)
15日か16日 ロシア1-6月鉱工業生産指数発表
15-16日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
15-16日 フランス・マクロン大統領がセルビアを訪問
15-18日 欧州議会本会議(ストラスブール)
15-19日 IMO理事会 第122回会合(ロンドン)
16日 メルコスール首脳会合(アルゼンチン・サンタフェ)
16日 米国6月小売売上高統計発表
16日 欧州議会、欧州委員長人事の採決
16日 米フェイスブックの暗号資産と個人情報保護問題に関する公聴会(上院銀行委)
16日 新潟県中越沖地震12年
16-18日 北太平洋漁業委員会(NPFC)第5回年次会合(都内)
17日 EU6月CPI発表
17日 米国・ベージュブック(FRB)
17日 マレーシア航空機が撃墜されてから5年
17日 モラー元米特別検察官がロシア疑惑めぐり公聴会で証言
17-18日 G7財務相会合(フランス・シャンティイ)
17-18日 EU・カナダ 第17回サミット(モントリオール)
17-20日 マニュファクチュアリング・スラバヤ2019(Manufacturing Surabaya 2019)(スラバヤ)
17-20日 電子機械国際展示会(Vietnam ETE 2019)(ホーチミン)
18日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
18日 米・オランダ首脳会談(ワシントン)
18日 元徴用工問題で、日本政府が韓国に求めた仲裁委員を任命する第三国の選定期限
18-19日 第36回ASEAN経済統合に関するハイレベルタスクフォース会議(バンコク)
18-19日 EU司法・内務相理事会 非公式会合(ヘルシンキ)
18-19日 インドネシア産業機械・システム展示会(Indonesia Smart Industry Expo 2019)(バリ)
18-28日 ガイキンド・インドネシア・国際自動車ショー(GAIKINDO Indonesia International Auto Show)(ジャカルタ)
19日 インド5月鉱工業生産指数発表
20日 アポロ11号月面着陸から50年
20-22日 ロシア・リャブコフ外務次官がベネズエラを訪問
21日 ウクライナ議会選挙
21日 第25回参議員議員選
21日 ソユーズFG(国際宇宙ステーション第60次及び第61次長期滞在ミッション用ソユーズMS-13)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)


<22-28日>
22日 米・パキスタン首脳会談(ワシントン)
22日 ファルコン9(スペースX社商用補給機ドラゴン18号機)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
22日 双曲線一号(未定)打ち上げ(甘粛省・酒泉衛星発射センター)
22-25日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
22-25日 APECビジネス諮問委員会(ABAC)会合(中国・杭州)
22-26日 人権理事会試問委員会 第23回会合(ジュネーブ)
22-8月9日 国連拷問禁止委員会 第67回会合(ジュネーブ)
23日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
23-24日 WTO一般理事会(ジュネーブ)
23日か24日 ロシア1-5月貿易統計発表
23-24日 国連経済社会理事会 management segment (ニューヨーク)
24日 EU経済・財務省(ECOFIN)理事会(予算)(ブリュッセル)
24日 アリアン5(光中継通信衛星EDRS-C/HYLAS-3など)打ち上げ(仏領ギアナ基地)
24-27日 食品・ホテルサービス展示会(FHI Food & Hotel Indonesia 2019)(ジャカルタ)
25日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)(フランクフルト)
25日 デルタ4(GPS 3-SV02)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
25日か26日 ロシア6月雇用統計発表
25-28日 ニュージーランド フードショー(オークランド)
26日 米国第2四半期GDP発表(速報値)
26日 ロシア中央銀行理事会
26日 長征2C(遥感30号-5 A,B,C)打ち上げ(四川省・西昌衛星発射センター)
27日 朝鮮戦争休戦協定締結から66年


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問