外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2019年6月25日(火)

外交・安保カレンダー(6月24-30日)

[ 2019年外交・安保カレンダー ]


 先週は遂に恐れていたことが起きた、というか、起き始めた週となるだろう。イラン革命防衛隊による米海軍無人偵察機の撃墜、これに対するトランプ政権の報復行動検討に関する米国内の協議、トランプ氏による軍事攻撃開始直前の攻撃中止決定、米サイバー軍による革命防衛隊施設に対するサイバー攻撃など・・・。

 どれ一つとっても、恐ろしい事件ばかり。何しろ、イランによる対米軍攻撃と米国による対イラン軍攻撃が実際に起き始めているのだから。だが、これだけ立て続けに起こると、かえって感覚が麻痺してくるから不思議だ。そして6月24日、最も恐れていたトランプ氏の極め付けのツイートが遂に炸裂した。ツイート全文をここに再録しよう。

Donald J. Trump@realDonaldTrump
(ホルムズ)海峡から中国は(全輸入量の?)91%、日本は62%もの原油を、他の諸国も同様だが、得ている。されば、何故我々は長年にわたり、代償もなしに、他国のために輸送路を守っているのか。これら全ての諸国は常に危険な航海を行う自国の船舶を自ら守るべきである。
米国が世界最大のエネルギー生産者となった以上、我々はそこ(湾岸水域)にいる必要すらない。米国がイランに求めるものは単純だ。核兵器を持たないことと、今後テロ行為のスポンサーにはならないことである。
China gets 91% of its Oil from the Straight, Japan 62%, & many other countries likewise. So why are we protecting the shipping lanes for other countries (many years) for zero compensation. All of these countries should be protecting their own ships on what has always been....
....a dangerous journey. We don't even need to be there in that the U.S. has just become (by far) the largest producer of Energy anywhere in the world! The U.S. request for Iran is very simple - No Nuclear Weapons and No Further Sponsoring of Terror!

 トランプ氏の単語綴りミスも相変わらずのようで、海峡(strait)と書くべきところをストレート(straight)と書いている。まあまあ、いいじゃないの!こんなことは日常茶飯事!余り頻繁に起きるので、逆に感覚が麻痺しているのかもしれない。しかし、このツイートばかりは、極めて危険な内容であり、到底看過できないものだ。

 何故か?考えるまでもないだろう。このトランプ氏の発言は、米国が東アジアの同盟国のシーレーンを守る気がないこと、中国が東アジアから湾岸地域までのシーレーン防衛を自前で行う口実を事実上与えることを意味しかねないからだ。申し訳ないが、トランプ氏は安全保障について完全な「音痴」である。

 もう一つ、今週筆者が注目するのはイスタンブール市長選の結果だ。23日実施の市長選挙では、エルドアン大統領率いるイスラム系与党、公正発展党のユルドゥルム候補(元首相)が敗北を認めたという。これはエルドアン政権の「終わりの始まり」を意味するのか。これについては来週にでも詳しく書くことにしよう。


〇アジア
 今週のアジアも香港が気になる。6月24日、中国本土への刑事事件の容疑者引き渡しを可能にする逃亡犯条例改正案の撤回を求め100人以上が政府庁舎を封鎖したと報じられた。学生を中心とする抗議デモはまだ勢いを失っていないようだ。
 デモ隊は今週大阪で開かれるG20サミットで各国首脳にこの問題を認識してもらうよう抗議活動を続けるらしい。香港の若者たちの今の危機感は1989年6月の北京の若者たちの危機感とどこが同じで、どこが違うのだろう。研究に値するテーマである。


〇欧州・ロシア
 英与党・保守党の党首選で最有力候補とされるジョンソン前外相は、EUとの離脱条件合意の有無にかかわらず、10月31日に離脱することを目指すそうだ。同氏はそうした離脱は「大いに実行可能」と発言したらしいが、一体何の根拠で「実行可能」などと言うのか、筆者には全く理解できない。英国の混乱はまだまだ続くようだ。


〇中東
 米イラン関係については今週のJapanTimesと産経新聞に英文と和文のコラムを書いたので詳細はそちらを御一読頂きたいが、ここでは、スペースの関係で両紙の紙面で書けなかったことを補足しておこう。
1. トランプ氏の目的はイランに核合意から事実上離脱させ、新たな核合意を結ぶことであり、イラン政権転覆や対イラン戦争は意図していないと思う。問題はトランプ氏以外の政権安全保障政策チームの「ネオコン」人士たちだ。
2. 今後、米イラン間で対立は激化する。外交面で米国は国連安保理での更なる制裁決議の採択などを画策するだろうが、実現は難しい。軍事面で米国は、不測の事態に備え、当面は対イラン軍事作戦よりも、抑止力・防衛力の強化を図るだろう。
3. しかし、仮に革命防衛隊などイランの最強硬派が更なる対米軍軍事作戦を行えば、それこそボルトンの思う壺。今のイランの最高指導者と革命防衛隊の動きを見ていると、1930年代の日本が対米外交に如何に苦労したか良く分かるような気がする。


〇南北アメリカ
 シャナハン国防長官代行に家庭内暴力問題が浮上し、同長官代行は国防長官の議会承認を辞退して長官代行も辞任したため、トランプ政権は現陸軍長官を次期国防長官に指名するらしい。こうなると指名された次期長官候補は長官代行の仕事ができなくなるという記事があったが、本当なのか。それにしても国防総省は一体何をやっているのか。これからイランと戦争するかもしれないというのに・・・。これだけでもマティス前長官が如何に偉大だったか良く分かるだろう。


〇インド亜大陸
 特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。


5月13-6月28日 ジュネーブ軍縮会議(CD)second part(ジュネーブ)
17-25日 米通商代表部(USTR)対中制裁第4弾で公聴会(ワシントン)
17-29日 チャイコフスキー国際コンクール(モスクワ)
20-24日 薗浦内閣総理大臣補佐官がギリシャ及びベラルーシ訪問
22-29日 国連食糧農業機関(FAO)総会第41回会合 (ローマ)
22-7月3日 第26回東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉会合の開催(メルボルン)
24-26日 国連経済社会理事会人道問題segment(ジュネーブ)
24-28日 第37回エネルギー関連ASEAN高級実務者会議(37th ASEAN SOMs' Meeting on Energy and Related Meetings)(バンコク)
24-28日 国連貿易開発会議貿易開発理事会第66回会合(ジュネーブ)
24-30日 米・ポンペオ国務長官がインド、スリランカ、日本及び韓国を訪問
24-7月12日 国連人権理事会 第41回会合(ジュネーブ)
25日 EU一般問題理事会(結束政策)(ルクセンブルク)
25日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(運輸)(エネルギー)
25日 メキシコ4月小売・卸売販売指数発表
25日 ファルコンヘビー(STP-2, COSMIC-2など)打ち上げ(ケネディ宇宙センター)
25日か26日 ロシア5月雇用統計発表
25日- 長征3B(航法測位衛星第三世代北斗M19,20)打ち上げ(四川省・西昌衛星発射センター)
25-26日 第176回OPEC総会(ウィーン)
25-26日 AfDB主催第3回「アフリカ・エネルギー・マーケットプレイス(AEMP)」(コートジボワール・アビジャン)
25-26日 パレスチナへの経済支援に関する国際会合(バーレーン・マナマ)
26日 EU環境相理事会(ルクセンブルク)
26日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(フランクフルト)
26日 第6回OPECと非加盟産油国の閣僚会合(ウィーン)
26日 メキシコ5月貿易統計、雇用統計発表
26-27日 米・民主党の大統領選候補者討論会(フロリダ州マイアミ)
26-27日 欧州地域委員会(CoR)第135回本会議(ブリュッセル)
26-27日 フランス・マクロン大統領夫妻が訪日
26-27日 イノブフェスト・アンバウンド(シンガポール)
26-28日 米州機構首脳会合(コロンビア・メデジン)
26-28日紙関連製品展示会(Paper Vietnam 2019)(ホーチミン)
26-28日 ゴム・タイヤ関連製品展示会(Rubber & Tyre Vietnam 2019)(ホーチミン)
26-28日プラスチック関連展示会(Plastech Vietnam 2019)(ホーチミン)
26-28日 農業関連展示会(Agri Vietnam 2019)(ホーチミン)
26-28日コーティングおよび印刷インキ展示会(Coating Expo Vietnam 2019)(ホーチミン)
26-28日軍縮諮問委員会第72回会合(ニューヨーク)
26-7月1日 ムランボ=ヌクカ国連女性機関事務局長の訪日
27日WTOサービス貿易理事会(ジュネーブ)
27日 ECB一般理事会(フランクフルト)
27日米国第1四半期GDP発表(確定値)
27日 アフガニスタン・ガー二大統領がパキスタンを訪問
27日 日中首脳会談(大阪市)
27日エレクトロン("Make it Rain"ミッション)打ち上げ(ニュージーランドマヒア半島)
27-30日 ハラール・インドネシア・エキスポ2019(ジャカルタ)
27-30日インドネシア国際農業展示会(Indonesia International Modern Agriculture Expo 2019)(ジャカルタ)
27-7月6日 秋篠宮ご夫婦ポーランド、フィンランド公式訪問
28日米・5月個人消費支出(PCE)物価指数(商務省)
28日ブラジル5月全国家計サンプル調査発表
28日 黒海経済協力機構(BSEC)外相会議(ブルガリア・ソフィア)
28日 英仏独中ロとイラン、EUが核合意存続に向け協議(ウィーン)
28日日米首脳会談(大阪市)
28-29日 G20首脳会議(大阪府)
29日 日露首脳会談(大阪市)
29日 G20大阪サミットにおける女性のエンパワーメントに関するサイドイベントの開催(インデックス大阪)
29-30日 米・トランプ大統領が韓国を訪問



<7月1-7日>
1日EU5月失業率発表
1日 フィンランドがEU議長国に就任
1日か2日ロシア第1四半期需要項目別GDP統計(速報値)発表
2日ブラジル5月鉱工業生産指数発表
2-4日 欧州議会本会議(ストラスブール)
3日 米国5月貿易統計発表
4日アルジェリア大統領選
4日 独立記念日で米市場休場
4-5日G7教育・開発担当相会合(パリ)
5日 米国6月雇用統計発表
5日ソユーズ2.1b(ロシア気象観測衛星Meteor-M2-2他40機)打ち上げ(ボストチヌイ基地)
5日か8日ロシア6月CPI発表



宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問