外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2019年4月23日(火)

外交・安保カレンダー(4月22-28日)

[ 2019年外交・安保カレンダー ]


 今週は25日に露朝首脳会談、26日に日米首脳会談がある。3カ月に3回も首脳会談をやって何するのかとも言われるが、トランプ氏にはできるだけ多く会って、日本の考え方を伝えることだけでも意味があるだろう。露朝首脳会談は恐らく同床異夢だろうが、お互いに利用価値は高いのだから、失敗だけはないだろう。

 それよりも、筆者にとって今週の最大の関心事は、ロシアゲートを巡るモラー特別検察官の報告書が一部黒塗りながら400ページ以上公開されたことだ。これほど突っ込み所満載の文書はないが、如何せん、分量が多過ぎて筆者も未だ全容を把握するには至っていない。というわけで、ここではさわりだけを各種報道に基づきご紹介しよう。

    ①報告書は「トランプ陣営関係者がロシア政府と大統領選干渉活動について共謀・連携したとは認めない"did not establish that members of the Trump campaign conspired or coordinated with the Russian government in the election interference activities."」が、「トランプ陣営もロシア政府も相手側が利益を得ると信じていた"both the Russian government and the Trump campaign believed the other would be beneficial."」と判断した。

    ②トランプ候補はヒラリー・クリントンのEメールを探すよう側近に求めた"Trump asked campaign aides to find Hillary Clinton's emails"。

    ③報告書は司法妨害について大統領による犯罪を認めなかったが、同時に無罪放免もしなかった"While this report does not conclude that the President committed a crime, it also does not exonerate him"。

    ④大統領の捜査に対する干渉努力は主として部下により拒否されたため成功しなかった"The President's efforts to influence the investigation were mostly unsuccessful, but that is largely because the persons who surrounded the President declined to carry out orders or accede to his requests."。

    ⑤司法妨害については議会による調査が可能である"Congress may apply the obstruction laws to the President's corrupt exercise of the powers of office accords with our constitutional system of checks and balances and the principle that no person is above the law."。 

      ・・・・・まだ続くが、もうこの位で良いだろう。

       要するに結論は「グレー」ということだ。例によってCNNは報告書の結論を「限りなく黒」に、FOXやトランプ陣営は「限りなく白」に仕立て上げようとしている。これからは下院民主党が報告書の一言一句を取り上げ、公聴会を開き、トランプ一族を含め召喚状を発し宣誓証言を求めギリギリ締め上げていくはず。これが来年まで続くのだ。

       一方、大統領弾劾の是非では民主党内が割れている。ここは一気に弾劾裁判を進めるべきとする強硬派に対し、下院議長などは「弾劾は逆効果」と冷ややかだ。今も民主党の大統領候補者数は二桁に上り、バイデン元副大統領も近く出馬を表明するというから、当面民主党内は星雲状態のまま。このままならトランプ氏再選もあり得る。

      〇アジア
       先週北朝鮮の第1外務次官は「ボルトンは17日、第3回首脳会談に先立って核兵器を放棄するための戦略的決定をしたという真の表しがあるべきだの、トランプ大統領が言った『大きな取り引き(ビッグディール)』に対して論議する準備ができているべきだの、などと生意気なことを言った」などと述べたそうだ。凄いことを言うもんだ。

       彼女はハノイ首脳会談が「決裂」した後、深夜の記者会見で世界のメディアに「放心状態」を曝した女性外交官だが、あのボルトンに喧嘩を売るとは良い度胸だ。単なるブラフなのか、それともトランプ氏の足元を見ているのか。少なくとも彼女が失脚していないことだけは確かなようだが、こんなやり方で外交ができるのか、疑問である。

      〇欧州・ロシア
       先週のウクライナ大統領選決選投票の結果、コメディー俳優候補が7割超を得票し、圧勝する見通しとなったそうだ。コメディアンは頭が良くなければ務まらないが、新大統領の政治力は未知数としか言いようがない。ウクライナを巡る情勢はさらに混乱する可能性の方が高いのではないか。ロシアにとっては絶好のチャンスである。

      〇中東
       今週最大のショックはスリランカでの同時多発大規模連続テロ事件の発生だ。日本人を含む多くの外国人も犠牲になった。現時点で犯行声明等はないが、イスラム系である可能性が高いだろう。それにしても卑劣な奴らだ、彼らのテロは最も脆弱なターゲットに対し最も無慈悲な攻撃を平然と行うのが特徴。やはり中東発のテロなのか。

      〇南北アメリカ
       米国はイースター休暇で大きなニュースなし。米国発ニュースで興味深いのは、米国が対イラン原油禁輸制裁の猶予措置を打ち切ると決めたことだ。日中韓、台湾、インドを含む8か国・地域が対象だが、マーケットの予想を裏切る決定だけに、イラン側の強い反発が予想される。イランの強硬派が台頭するかが気になるところだ。

      〇インド亜大陸

       インドは下院総選挙の真っ最中。今週はこのくらいにしておこう。


      8-29日 国連軍縮委員会 年次会合(ニューヨーク)
      16-25日 上海モーターショー開幕(一般公開は18日から)
      18-25日 モスクワ国際映画祭
      21-24日 パキスタン・クレシ外相が来日
      22日 米・2月個人消費支出(PCE)
      22日 森外務審議官とロシア・モルグロフ外務次官との協議の開催(東京)
      22日 エジプト・憲法改正案の是非を問う国民投票
      22-29日 安部首相 欧州および北米訪問
      22-25日 第17回情報通信に関する高級実務者会議(SOMRI)(シンガポール)
      22-26日 薗浦内閣総理大臣補佐官のブルネイ及び東ティモール訪問
      23日 メキシコ3月雇用統計発表
      23日 米下院歳入委が求めるトランプ大統領の納税記録提出期限
      23日 中国・国際観艦式(山東省青島)
      24日か25日 ロシア3月雇用統計発表
      24-25日 第25回ASEAN非公式経済相会議(AEM)(タイ・プーケット)
      24-25日 ベネズエラ・ロペス国防長官がロシアを訪問
      24-27日 APECビジネス諮問委員会(ABAC)会合(インドネシア・ジャカルタ)
      24-28日 第21回ジャカルタ・インターナショナル・ハンディクラフト・トレードフェア(INACRAFT 2019)(ジャカルタ)
      24-29日 二階自民党幹事長の訪中
      25日 露朝首脳会談(ウラジオストク・ルースキー島)
      25日 メキシコ2月小売・卸売販売指数発表
      25-26日 ASEAN常任委員会議、ASEAN高級実務者会議(ASEAN SOM)、ASEAN合同諮問会議(プーケット)
      25-26日 シリア和平協議再開(カザフスタン・ヌルスルタン)
      25-26日 英・ウィリアム王子がニュージーランドを訪問
      25-27日 シルクロード経済圏構想「一帯一路」に関する国際会議(北京)
      25日-5月5日 インドネシア国際モーターショー(ジャカルタ)
      26日 ASEAN経済高級実務者-欧州貿易担当委員会議(プーケット)
      26日 米国第1四半期GDP発表(速報値)
      26日 メキシコ3月貿易統計発表
      26日 日米首脳会談(ワシントン)
      26日 ロシア中央銀行理事会
      26日 ファルコン9(スペースX社商用補給機ドラゴン17号機)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
      27日 板門店宣言から1年
      27-28日 安倍首相がカナダを訪問
      28日 スペイン総選挙
      28日 ベナン国民議会選挙
      28日 自動車F1アゼルバイジャンGP決勝(バクー)


      <29日-5月5日>
      29日 将来の労働に関するASEAN関係労働相特別セッション(シンガポール)
      29日 米・3月個人消費支出(PCE)(商務省)
      29-5月3日 国連地名専門家会議 First session(ニューヨーク)
      29-6月7日 国際法委員会 第71回会合 first part(ジュネーブ)
      30日 スリランカ中央銀行年次報告書(Annual Report)発表
      30日 EU3月失業率発表
      30日 ブラジル3月全国家計サンプル調査発表
      30日 マリ国民議会選
      30日 EU・1-3月期GDP速報値(EU統計局)
      30日-5月1日 米国FOMC
      30日-5月2日 第5回ASEAN+3の財務相・中央銀行総裁合同会議(フィジー)
      31日 インド第4四半期GDP発表
      5月1日 中国労働節休暇
      1-5日 アジア開発銀行(ADB)年次総会(フィジー・ナンディ)
      2日 英国地方議会選挙
      3日 米国4月雇用統計発表
      3日 ブラジル3月鉱工業生産指数発表
      4日 エレクトロン(地球低軌道実験衛星)打ち上げ(ニュージーランドマヒア半島)
      5日 パナマ大統領選挙
      5-6日 G7環境相会合(フランス・メス)


      宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問