外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2019年3月12日(火)

外交・安保カレンダー(3月11-17日)

[ 2019年外交・安保カレンダー ]


先週末泊りがけで24時間、キヤノングローバル戦略研究所が政策シミュレーションを実施した。今回のお題は「インド太平洋は新しい戦略空間になるか?」という実にマニアックなもの。インド洋のスリランカ、モルディブだけでなく、アンダマン諸島やココ諸島といった専門家しか知らないような地名が乱れ飛ぶ珍しいゲームとなった。

同シミュレーションの総括は今週のJapan Timesと産経新聞にそれぞれ書いたので関心があれば一読願いたい。2009年に設立されたキヤノングローバル戦略研究所は今年が創立10周年、今回のシミュレーションも第30回目という節目になった。よくぞ30回もできたものだ。ご参加・ご支援くださった皆様には心から御礼申し上げる。

先週あれほど大騒ぎだった北朝鮮問題も、今週ばかりは静かだった。外交実務を経験した筆者から見れば、今回の米朝交渉は全てが異例だ。仮に今回決裂していなくても、いずれ一度は決裂する運命にあったと考える。普通なら相当の冷却期間が必要なのだろうが、何しろ相手はトランプと金正恩だからAnything goes!だ。

トランプ氏といえば、先日共同通信のご好意でSバノン元ホワイトハウス首席戦略官に会えた。大テーブルでの食事会でじっくり話せなかったが、とにかく頭の良い思想家・革命家だと感じた。彼の「反中国」「経済ナショナリスト」「ポピュリスト」的基本姿勢は今も全くブレていない。その意味で、やはり彼は「政治家」ではないのだろう。

彼の中国に対する警戒感は実に強烈だから、日本の保守層にファンが多いのかもしれない。だが、彼の本質は単なる「反中」ではない。彼が「反中」である理由を正確に理解しないと、日本の反中派・嫌中派はSバノンを読み誤ることになる。2020年の米大統領選挙で彼は何をするのか、しないのか。彼の真価が問われるのはその時だ。

〇アジア
北京で全国人民代表大会(全人代)が開かれている。習主席は「2020年末までに全地域を貧困から脱却させる目標を必ず達成する」よう要請し、「衣食の心配がなく、義務教育、医療、住宅が保障されていることが貧困脱却の基準だ。これを引き下げてはならない」と全人代で命令し、背いた幹部は徹底的に取り締まると強調したそうだ。
でも、これって、中間幹部が可哀そう過ぎないか。衣食も、教育も、医療も、住宅も保障なんて出来る訳がないからだ。筆者の短い経験上、中国の指導者が「○○しなければならない」と強調する時は、実際には「○○が実行されていない」ことを意味する。ということは衣食から医療、住宅までまだ貧困地域には問題が山積みということだ。

〇欧州・ロシア
離脱か、残留か、または決断延期か?ハムレット以上に複雑な選択肢が英国首相を悩ませている。しかし、元はといえば、メイ首相自身が打った解散総選挙に敗北したことが全ての始まりだから、自業自得ともいえる。しかし、問題は彼女だけではなく、英国そのものが疑問視され始めたこと。3月29日の期限まで時間はあまりにも短い。

〇中東
理由は不明だが、最近中東からの大きなニュースが少ない。強いて言えば、先週8日、米国の中東和平交渉担当特使の一人がテロリストを支援しているとしてパレスチナ自治政府を厳しく批判したというニュースぐらいか。だが、これも別に目新しくない。米政府がパレスチナ問題に関心を失って久しいが、状況は悪化するばかり。注目すべきは、11日にイラン大統領がイラクを訪問することぐらいか。

〇南北アメリカ
米大統領が相変わらず迷走中だ。今度はメキシコ国境「壁」建設に2020年度予算で86億ドルも要求するそうだ。国家非常事態宣言で使った国防省予算の穴埋めをするのだろう。昨年の要求額57億ドルを大幅に上回るが、昨年は議会側が反発し35日間の米政府一部閉鎖に繋がった。今回の要求により議会との対立再開は必至だろう。

〇インド亜大陸
11日にインドの総選挙日程が発表された。4月11日から5月19日まで7週間かけて全土で実施されるという。最近のパキスタンとの緊張拡大が選挙戦術とは思いたくないが、現首相は再選を狙っている。どうなることやら。有権者9億人の民主主義、というだけで凄いと思う。今週はこのくらいにしておこう。

18-3月15日 国際民間航空機関(ICAO) Council phase 第216回会合(モントリオール)
25-3月15日 国際海底機構(ISA)総会 first part (キングストン)
25-3月22日 国連人権理事会 第40回会合(ジュネーブ)
3月4-29日 自由権規約人権委員会 第125回会合(ジュネーブ)
5-14日 対日理解促進交流・日本の大学生らが韓国を訪問
7-12日 パラオ・レメンゲサウ大統領が訪日
10-14日 日中植林・植樹国際連帯事業・2019年青島市青年代表団が訪日
10-17日 JENESYS2018モンゴル青少年の訪日
10-17日 日中植林・植樹国際連帯事業・2018年度中国大学生訪日団が訪日
11日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ブリュッセル)
11日 イラン・ローハニ大統領がイラクを訪問
11-12日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
11-12日 OECDデジタル化(Going Digital)会議(フランス・パリ)
11-14日 欧州議会本会議(ストラスブール)
11-15日 第4回国連環境総会(ケニア・ナイロビ)
11-16日 山田外務大臣政務官がフランス、ドイツ及びオーストリア訪問
11-4月5日 国連総会 第5委員会 再開会期第一部(ニューヨーク)
12日 米国2月消費者物価指数(CPI)発表
12日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
12日 ブラジル2月拡大消費者物価指数(IPCA)発表
12日 インド1月鉱工業生産指数発表
12日 英・EU離脱修正案の議会採決期限
12-13日 第35回ASEAN経済統合に関するハイレベルタスクフォース会議(バンコク)
12-13日 「ASEAN日本企業支援担当官会議」の開催(シンガポール)
12-15日 化学兵器禁止機関(OPCW)執行理事会 第90回会合(ハーグ)
12-15日 平成30年度欧州大使会議の開催(外務省)
13日 メキシコ1月鉱工業生産指数発表
13日 ブラジル1月鉱工業生産指数発表
14日 ブラジル1月月間小売り調査発表
14日 中国2月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
14日 パキスタン代表団がシーク教徒の巡礼道を話し合うためインドを訪問
14日 デルタ4(WGS 10)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
14-15日 APEC質の高いインフラ・ハイレベル会議(東京)
14-22日 国連麻薬委員会 第62回会合(ウィーン)
14-28日 国際労働機関(ILO)理事会及びその委員会 第335回会合(ジュネーブ)
15日 EU雇用・社会政策・健康・消費者問題担当理事会(ブリュッセル)
15日 EU2月CPI発表
15日 中国全国人民代表大会(全人代)閉幕、李首相が会見(北京)
15日 ソユーズFG(長期滞在ミッション用ソユーズMS-12)打ち上げ(バイコヌール基地)
16日 スロバキア大統領選
16日 ヴェガ(PRISMA)打ち上げ(仏領ギアナ基地)
17日 兵庫県明石市長選
17-18日 EU外相理事会(非公式会合)(ブカレスト)

【来週の予定】
18日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
18日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
18日 EU外相理事会(ブリュッセル)
18-21日 香港インターナショナル・フィルム&テレビ・マーケット(フィルマート)
18-22日 ASEAN-日本科学技術イノベーション共同研究(バンコク)
18-29日 国際化学物質安全性カード(ICSC) 第88回会合(ニューヨーク)
19日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
19日 EU基本条約第50条(加盟国の離脱)に関する一般問題理事会(ブリュッセル)
19日 米ブラジル首脳会談(ホワイトハウス)
19-20日 米国FOMC
19-20日 ブラジル中央銀行、Copom
20日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(フランクフルト)
20日か21日 ロシア1月貿易統計発表
21日 ECB一般理事会(フランクフルト)
21日 PSLV C45(EMISATと相乗り超小型衛星29機)打ち上げ(サティシュ・ダワン宇宙センター)
21-22日 欧州理事会(ブリュッセル)
21-22日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
22日 ロシア中央銀行理事会
22日か25日 ロシア2月雇用統計発表
23-24日 国際女性会議WAW!(都内)
24日 タイ総選挙投票日
24日 ブルキナファソ・憲法改正を巡って住民投票
24日 コモロ連合・大統領選挙


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問