外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2018年10月10日(水)

外交・安保カレンダー(10月8-14日)

[ 2018年外交・安保カレンダー ]


3週間前は米国の三都市、先々週は台湾に出かけたが、先週末からはここ沖縄に来ている。沖縄本島の南端に「百名伽藍」という素晴らしい隠れ家的宿があり、今回もそこにお邪魔している。宿泊料は決して安くなく、そう何回もは行けない所だが、お値段以上の価値はある。時間的、財政的余裕があれば、是非一度お勧めしたい。

さて、沖縄といえば先週知事選挙があり、普天間移設反対派の候補が勝利した。終わったばかりだからか、まだ大きな動きは見られない。嵐の前の静けさなのだろう。実は先週、日本の沖縄県の県知事選挙を台湾の台北から眺めるという、ある意味では主観的でも、客観的でもない視点で、小論を書いた。その一部をご紹介しよう。

台湾は1972年のニクソン訪中以降、その島の安全保障そのものが重大な危機に陥ったが、現在もその状態は基本的に変わっていない。特に近年は、台湾との外交関係を打ち切る国が再び出るなど、この島は中国大陸からの有形無形の強力な圧力に晒されている。先日は台湾の在大阪事務所長(事実上の総領事)が中国からのフェイク情報が原因で自殺に追い込まれるという痛ましい例すら見られた。

今この島は米国との関係なしに現状を維持できなくなっている。米中国交正常化までは米華安保条約により米国はこの島を防衛する義務を負っていた。しかし、今米国の台湾防衛義務は、国際合意ではなく、台湾関係法という米国内法により担保されている。逆に言えば、この島から見ると、沖縄は国際約束である日米安保条約の下で米軍が駐留するという実に羨ましい存在に見えてくる。

今その沖縄には、米軍のプレゼンスがもたらす抑止効果を弱体化させようとする声がある。しかし、これを台湾から見れば、せっかくの抑止効果を自ら弱値化させることは自殺行為にすら思える。更には、日本本土の人々も日本全体の対外抑止効果に関する責任を応分に負担せず、沖縄県民だけに負荷がかかっていることも事実だ。

狭い台湾には「沖縄」も「本土」もない。しかも、距離的に沖縄より圧倒的に中国大陸に近いというハンディを負っている。こうした台湾の人々が、民主主義の下で、島の将来、特にその安全保障について真剣かつ現実的な議論を繰り返し、総統を選んでいる(以下略)。・・・・・やはり、沖縄と台湾では状況が異なるのだろうか。

〇欧州・ロシア
今週も欧州で大きなニュースはない。EU関連の定例会合は開かれるが、外交面ではウズベク大統領が訪仏するぐらいが目玉か?内政面では14日にドイツ・バイエルン州議会選挙とルクセンブルク議会総選挙がある。個人的には、民族主義的・大衆迎合的反エリート運動がどれだけ票を伸ばすかに関心がある。

〇中東・アフリカ
サウジアラビアの政府批判で有名なジャーナリストがイスタンブールのサウジ総領事館内で行方不明になったとの第一報が入った。未確認情報では総領事館内で殺害されたというが、本当なのか。事実であれば、サウジにとって大チョンボである。こんなミステリー映画のような話が最近増えているのは不気味ですらある。

〇東アジア・大洋州
ミステリーといえば、中国では元インターポール総裁が収賄の疑いで国家監察委員会から取り調べを受けているそうだ。先週も有名女優が行方不明になるなど、この種の事件が続いている。さすがは中国だ、贈収賄については完全に民主主義で、誰もが平等にその容疑から逃れることはできないようだ。
中国の外相が訪中した米国務長官に、「米国は間違った言動を正せ」と迫ったらしい。もうここまで来ると、米中関係も外交的手段では修復不能になりつつあるのかもしれない。それにしても、ポンペイオ長官が北朝鮮でトップに会えて、中国で習近平国家主席に会えないというのも、実に面白い現象である。

〇南北アメリカ
学生時代のスキャンダルの噂が流れた最高裁判事候補がようやく議会承認された。これで中間選挙は「女性差別問題」が大きな争点になるだろう。それにしても、日本でこの点が十分詳しく報じられないのは何故だろう。単なる偶然か、それとも、日本は米国以下ということか。そうは信じたくないのだが。

〇インド亜大陸
特記事項なし、今週はこのくらいにしておこう。

2-9日 対日理解促進交流プログラム・ASEAN招へいプログラムでシンガポールの高校生・大学生らが訪日
3-10日 対日理解促進交流プログラム・カンボジア、ラオス、ミヤンマー、タイ、ベトナムの青少年及び各国サッカー協会役員らが訪日
3-17日 UNESCO 執行理事会 第205回会合(パリ)
7-9日 インド・コヴィンド大統領がタジキスタンを訪問
8日 米・コロンブスデー(為替、債券市場が休場)
8日 ファルコン9(SAOCOM 1A)打ち上げ(ヴァンデンバーグ空軍基地)
8-9日 第10回日・メコン地域諸国首脳会議を開催(東京)
8-10日 第131回EU地域委員会(CoR)(ブリュッセル)
8-11日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
8-11日 岩屋防衛相が日豪2プラス2(10日)に出席するためにシドニーを訪問
8-12日 第57回アジア・アフリカ法律諮問委員会年次総会の開催
8-11月2日 自由権規約人権委員会 第124回会合(ジュネーブ)
9日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(フランクフルト)
9日 EU環境相理事会(ルクセンブルク)
9日 メキシコ9月CPI発表
9日 故翁長前沖縄県知事の県民葬(那覇市)
9-12日 化学兵器禁止機関 第89回執行理事会(ハーグ)
9-13日 第8回日中与党交流協議会(北海道)
9-13日 リトアニア・スクバルネリス首相が訪日
9-16日 河野外務大臣がオーストラリア、東ティモール、ニュージーランドを訪問
9-19日 国際原子力機関の海洋モニタリング専門家が訪日
10日 朝鮮労働党創立記念日(73年)
10日 辛亥革命記念の双十節(建国記念日)
10日 日豪外務・防衛閣僚協議(シドニー)
11日 G20財務相・中央銀行総裁会議(インドネシア・バリ島)
11日 EU雇用・社会政策・健康・消費者問題担当相理事会(ルクセンブルク)
11日 米国9月消費者物価指数(CPI)発表
11日 ブラジル8月月間小売り調査発表
11日 ソユーズFG(第57次および第58次長期滞在ミッション用ソユーズMS-10)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)
11-12日 EU司法・内務相理事会(ルクセンブルク)
11-12日 レバノン・アウン大統領がアルメニアを訪問
12日 EU男女同権担当相非公式会合(ウィーン)
12日 メキシコ8月鉱工業生産指数発表
12日 中国第3四半期貿易統計発表
12日 トルコで軟禁中の米国人牧師の審理
12-13日 チェコ上院3分の1議席改選(第2次)
12-14日 IMF・世界銀行年次総会(インドネシア・バリ)
12-21日 TECH MART(ラオス)
13日 世界銀行・IMF合同開発委員会(バリ島)
14日 ドイツ・バイエルン州議会選挙
14日 ルクセンブルク議会総選挙
14日 長征3B(航法測位衛星第三世代北斗、MEO16 2機)打ち上げ(四川省西昌衛星発射センター)

【来週の予定】
15日 EU外相理事会
15日 EU議会委員会会議
15日 米国9月小売売上高統計発表
15日か16日 ロシア1-9月鉱工業生産指数発表
15-16日 EU農水相理事会(ルクセンブルク)
16日 中国9月CPI、PPI発表
16日 EU基本条約第50条(加盟国の離脱)に関する一般問題理事会(ルクセンブルク)
16-18日 ハノーバ・メッセ・インダストリアル・トランスフォメーション・アジアパシフィック(シンガポール)
17日 EU9月CPI発表
17日 APEC財務相会合(パプアニューギニア・ポートモレスビー)
17日 カナダが大麻合法化
18日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
18日 インド8月鉱工業生産指数発表
18日 FOMC議事要旨
18日 ブータン国会議会選挙
18-19日 WTO一般理事会(ジュネーブ)
18-19日 欧州理事会(ブリュッセル)
18-19日 第12回アジア欧州議会(ASEM)首脳会合(ブリュッセル)
18-20日 第12回ASEAN国防相会議
19日 中国第3四半期マクロ経済統計(GDP、CPI、固定資産投資、社会消費品小売総額など)発表
19日 アリアン5(水星探査ペピ・コロンボ)打ち上げ(仏領ギアナ基地)
19-22日 Armageddon Expo 2018(アニメ、映画、ゲーム関系)
20日 アフガニスタン下院選挙


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問