外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2018年7月4日(水)

外交・安保カレンダー(7月2-8日)

[ 2018年外交・安保カレンダー ]


今週7月3日に外務省主催で秋野豊・元国連タジキスタン監視団(UNMOT)政務官(元筑波大学助教授)没後20年シンポジウムが開かれる。秋野さんがタジキスタンで殉職されてから早くも20年が経った。同シンポジウムは中央アジアを含むユーラシア地域を広く研究しておられた秋野豊さんの功績を再評価するものだ。

秋野さんのことはよく覚えている。当時筆者は外務省中東アフリカ局の中近東第一課長だった。直接の担当ではなかったが、中東と中央アジアはお隣さんだ。秋野さんは平和構築・国際貢献の分野では日本のパイオニアの一人。タジキスタン内戦の犠牲となった同氏の貢献の尊さを思い、改めて心から哀悼の意を表したい。

秋野さんは北海道小樽市生まれ、北海道大学大学院法学研究科で第二次世界大戦中の英ソ関係を研究し、1983年に法学博士号を取得している。その後、秋野さんは在モスクワ日本大使館専門調査員を務めてから1986年から筑波大学で教えるようになったが、1998年に外務省に入り国連タジキスタン監視団に参加した行動派だ。

秋野さんが亡くなったのは同年7月20日、ドゥシャンベの東方の山岳地帯を走行中に武装集団による襲撃に遭い、同乗者とともに犠牲になった。もちろん、筆者も中東屋の端くれだから、彼の死は他人事ではない。実際に筆者もその6年後、イラクで犠牲となった故奥克彦大使の後任として、イラク戦争後のバグダッド勤務を経験した。

中東にせよ、中央アジアにせよ、あの手の地域には絶対に安全な場所などない。商社マンだろうが、外交官だろうが、そもそも開発途上国勤務を経験したことのない輩を筆者は信用しないことにしている。先進国勤務ばかりのサラブレッドも良いが、駄馬には駄馬の良さがある。本当の外交交渉には「修羅場」の経験が不可欠だと思うからだ。

〇欧州・ロシア
2-4日にイラン大統領がスイスとオーストリアを訪問する。当然議題はイラン核合意と原油生産量の行方だが、イランは核合意についてEUの支持を必要としている。トランプ政権とイランとの間では今後EUに対する働きかけをめぐる綱引きが激化するのだろうが、どうやら欧州に譲る気はなさそうだ。

〇中東・アフリカ
4日にヨルダン外相が訪露し、外相会談を行う。5日にはトルコが大統領選挙と議会総選挙の結果を発表し、8日には新議会の第一回会合が開かれるという。このところトルコからの選挙関連追加情報は乏しいが、エルドアン大統領は欧米諸国との関係をどうするつもりなのだろう。改善するなら今がベストだと思うのだが。

〇東アジア・大洋州
米有力紙が米専門家による衛星写真分析の結果、北朝鮮が北東部にあるミサイル製造施設の拡張工事を進めていると報じた。専門家によれば「北朝鮮が核開発やミサイル計画を廃棄する考えがないことを示している」のだそうだが、別に驚かない。そもそも北朝鮮がたった一回の首脳会談で核兵器廃棄を約束するはずがないからだ。
もう一つ気になるニュースがある。米国務省が米国の対台湾窓口機関である「米国在台協会(AIT)」の事務所警護のため米海兵隊に要員派遣を要請したそうだ。海兵隊を派遣しても、それが直ちに「大使館」となる訳ではないが、これも米国の中国に対する意図的な揺さぶりなのだろう。米台・米中関係も要注意である。

〇南北アメリカ
4日は米国独立記念日だが、6日に米国が追加関税賦課に踏み切れば、米中貿易戦争が本格化する。更に、来週9日には保守派最高裁判事の引退に伴う後任人事が発表される可能性もある。このようにして、トランプ氏は次から次へと新しい話題を提供し、辻褄の合わない話を過去のものにしていく。この能力は大したものだ。
そういえば、先週トランプ氏はツイッターで「サウジのサルマン国王とたった今、話をした。イランとベネズエラでの混乱のため、サウジアラビアには穴埋めとして最大200万バレル程度の原油増産を要請したいと説明した。原油価格は高すぎる!国王は同意した!」と述べた。ホワイトハウスは撤回したが、では一体何を信じれば良いのか。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

18-7月6日 国連人権理事会 第38回会合(ジュネーブ)
24-7月4日 第42回ユネスコ・世界遺産委員会(バーレーン・マナーマ)
25-7月13日 国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)第51回会合(ニューヨーク)
25-7月2日 第31回アフリカ連合(AU)首脳会議(モーリタニア)
26-7月5日 JENESYS2018・韓国大学生訪日団が訪日(第1-4団)
2日 EU5月失業率発表(EU統計局)
2日か3日 ロシア第1四半期需要項目別GDP速報値発表
2-3日 国連経済社会理事会 実質会期(ニューヨーク)
2-4日 包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)第50回会合(ウィーン)
2-5日 欧州議会本会議(ストラスブール)
2-5日 宮腰内閣総理大臣補佐官が英国、ベルギー及びフランスを訪問
2-6日 第120回国際海事機関(IMO)理事会(ロンドン)
2-15日 テニス・ウィンブルドン選手権(英・ウィンブルドン)
2-27日 自由権規約人権委員会 第123回会合(ジュネーブ)
3日 「中央アジア+日本」対話・第11回東京対話が開催(外務省)
3日 秋野豊・元国連タジキスタン監視団政務官没後20年シンポジウムの開催(外務省)
3日 カズオ・イシグロさんに長崎県などが顕彰状授与(ロンドン)
3-6日 MTA Vietnam 2018(ホーチミン)
3-8日 第42回日米大学野球選手権大会(米)
4日 米・独立記念日で米市場休場
4日 ブラジル5月鉱工業生産指数発表
4日 ヨルダン・サファディ外相がロシアを訪問
4日 南北が山林協力に関する実務協議
4-5日 第130回EU地域委員会(CoR)本会議(ブリュッセル)
4-5日 東方石油・ガスフォーラム2018(ロシア・ウラジオストク)
5日 米・FOMC議事録(FRB)
6日 米国5月貿易統計、6月雇用統計発表
6日 ブラジル6月拡大消費者物価指数(IPCA)発表
6日か9日 ロシア6月CPI発表
8-12日 シンガポール国際水週間「SIWW」
8-12日 クリーン・エンバイロ・サミット・シンガポール「CESS」

【来週の予定】
9日 メキシコ6月CPI発表
9日 南スーダン共和国総選挙
9-12日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
9-12日 産業総合博覧会「イノプロム2018」開催(ロシア・エカテリンブルク)
9-12日 香港ファッション・ウィーク(春/夏)
10日 中国6月CPI発表
10日 長征2C(パキスタンのリモートセンシング衛星等)打ち上げ(甘粛省・酒泉衛星発射センター)
10日 ソユーズ2.1a(ISS無人補給機プログレスMS9)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)
11日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策、フランクフルト)
11-12日 第536回欧州経済社会評議会(EESC)本会議(ブリュッセル)
11-12日 NATO首脳会議(ブリュッセル)
11-13日 日・トルコ経済連携協定交渉第10回会合の開催(アンカラ)
11-18日 安倍首相がベルギー、フランス及び中東を歴訪
12日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ブリュッセル)
12日 欧州委員会、夏季経済予測発表
12日 インド5月鉱工業生産指数発表
12日 ブラジル5月月間小売り調査発表
12日 メキシコ5月鉱工業生産指数発表
12日 米国6月消費者物価指数(CPI)発表
12日 パリで日本博「ジャポニスム2018」開会式(パリ)
12-13日 EU司法・内務相理事会 非公式会合(オーストリア・インスブルック)
13日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
13日 米・トランプ大統領が訪英
13日 中国第2四半期貿易統計発表
15-16日 オバマ元大統領がケニアを訪問


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問