外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2018年3月13日(火)

外交・安保カレンダー(3月12-18日)

[ 2018年外交・安保カレンダー ]


先週は駆け足でシカゴからインディアナポリス、サンフランシスコ、ロサンゼルスを回って来た。ワシントン以外の米国を訪れるのは久し振りだ。今回の出張で印象深かったことは今週の産経新聞のコラムに書いた。本稿ではそれ以外で今週気になったことを書くことにしよう。

9日のトランプ氏による米朝首脳会談受け入れ発言には、実のところ、あまり驚かなかった。北朝鮮が米朝首脳会談を欲していることは昔から変わらない。経済制裁がある程度効いているのは確かだから、南北対話の中で北朝鮮側がこうした「癖球」を投げてくること、その場合トランプ氏がこれに飛びつくことは当然予想されたからだ。

最新の米内政事情を加味すると、トランプ氏の行動パターンがよりはっきり見えてくる。先週月曜日からトランプ氏は事実上四面楚歌。ロシアゲートの捜査が進み、交際が噂されたポルノ女優への金銭支払い問題が再燃し、ホワイトハウス国家経済会議のコーン補佐官が辞任し、鉄鋼アルミ関税問題で多くの同盟国を敵に回していた。

案の定、トランプ氏はいつもの反応を見せる。すなわち、衝動的かつ素人的独断でメディアの注目を集め、批判を回避する、お得意の「目くらまし戦略」だ。今回はたまたまそれが北朝鮮との首脳会談に対する同意だった。説明した韓国側高官もさすがに驚いたのではないか。米国の外交安保チームにとっても寝耳に水だったらしい。

12日現在、気の早い内外メディアはもう会談場所の予測を始めているが、本当に米朝首脳会談が実現するかは「お手並み拝見」。英語の格言に「悪魔は詳細に宿る」というのがある。トランプ氏に関する限り、あれだけ衝動的に決めたものは、同じく衝動的に中止される可能性がある。これだけは忘れてはならない。

以上を前提に、現時点での筆者の分析を書こう。以下は政策提言ではなく、あくまで将来起こり得る可能性のマトリクス分析だ。まず、米朝の誠意・本気度が高い場合を〇、不誠実で欺瞞である場合を×としよう。可能性は4つ、すなわち①米朝ともに誠実である〇〇、②共に不誠実な××、一方が不誠実な③〇×と④×〇である。

①であれば対話成功で「非核化」が実現するが、その可能性は低いだろう。また、北朝鮮は誠実だが米国が誠実でない②のケースもちょっと考えにくい。いくら経済制裁が効果を持ち始めたとしても、現時点で北朝鮮が米国に白旗を掲げる可能性は高くないと思うからだ。個人的にはこうした分析が間違っていることを祈るしかない。

それでは北朝鮮が不誠実である場合はどうか。③の如く米国が誠実なら、トランプ氏はいずれ騙されることになる。下手をすれば、北朝鮮が主導する条件で「非核化」が進むが、実際に北朝鮮は核開発を断念せず、単に米国に届くICBMの開発が一定期間凍結されるといった事態で決着する可能性すら否定できない。

最後が②の米朝双方とも不誠実、すなわち相手の言うことを基本的に信用しない立場を続ける場合だ。当然対話の決裂は時間の問題となり、状況は昨年の12月31日の段階まで戻る。しかも、今後米朝間にこれ以上の対話の可能性はなくなり、事実上「外交的手段は尽きた」と判断されるかもしれない。

以上は単なる頭の体操である。米朝関係を複雑に考えるのも良いが、基本的にはこれら①~④の可能性しかない。この問題はある程度単純化して考えても良いのではないか。以上が現時点での筆者の分析だが、ここでは政策提言は行わない。もう暫く関係諸国の動きを見た上で、いずれ政策面の議論を進めていくことにしよう。

〇欧州・ロシア
EU関連の会合は相変わらず。12日にはユーロ圏諸国がギリシャ債務問題など経済問題について議論する。15日にはドイツでメルケル首相が再選される。同日にはベルリンで欧州諸国と米国の関係者がイラン核合意に関する会合を開く。トランプ氏による合意破棄とならないよう、米欧間での駆け引きは続いているのだろう。
気になるのは、先週S・バノン前ホワイトハウス首席戦略官が欧州諸国、しかも各地の極右系ナショナリスト・ポピュリスト勢力の会合に参加し、バノン主義を欧州に広げようとしていることだ。欧州の連中も基本的に大歓迎らしい。米国では日和ったトランプ氏との関係が微妙になっているバノン氏は欧州に活路を見出しつつあるようだ。

〇東アジア・大洋州
中国の全人代は憲法改正等を粛々と議決し、20日に終わる。11日から韓国のエネルギー大臣がサウジアラビアを訪問、2基の原子力発電所売り込みを図る。16日に米国内法である「台湾訪問法」が発効し、法律上、米台間のハイレベルの相互訪問が慫慂される。内容的にはsense of Congressに過ぎないが、中国は怒り狂うだろう。
個人的には南北朝鮮の対話に関する中国の不気味な沈黙が気になる。中国はこれらの動きにどこまで関与しているのか、それとも蚊帳の外なのだろうか。もし後者であれば、中国の影響力は低下しつつあるという一部報道が正しいということになるが、北京が黙って情勢を見ているだけとは思えない。いずれ動きが出るはずだが。

〇中東・アフリカ
最近の中東は本当に動きが少ない。

〇南北アメリカ
トランプ政権については冒頭書いた通り。

〇インド亜大陸
12日からスリランカ大統領が訪日する。スリランカ中国関係が必要以上に進展しないよう、日本の働きかけが奏功することを期待したい。今週はこのくらいにしておこう。

6-13日 対日理解促進交流プログラム・米国人大学生及びユダヤ系米国人の訪日
6-13日 米・ティラーソン国務長官がアフリカ歴訪
6-14日 対日理解促進交流プログラム・「日ASEAN青少年スポーツ交流(サッカー)」を実施
6-15日 対日理解促進交流プログラム・日本の大学生らが韓国を訪問
8-15日 対日理解促進交流プログラム・ヒスパニック系米国人の訪日
8-18日 ジュネーブ国際モーターショー(一般公開)
9-12日 フランス・マクロン大統領がインドを訪問
9-18日 第12回冬季パラリンピック大会(韓国・平昌)
11-17日 外務省推進MIRAIプログラム・欧州各国から行政官等の若手社会人を招へい
11-17日 ベルギー国王夫妻がカナダを訪問
11-18日 JENESYS2017モンゴル青少年の訪日団が訪日
11-18日 対日理解促進交流プログラム・米国人大学生及び若手研究者の訪日
12日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ブリュッセル)
12-13日 徐薫韓国国家情報院長が訪日、河野外務大臣等と会談
12-13日 EU競争担当相理事会(ブリュッセル)
12-13日 国際労働機関(ILO)理事会及び委員会 第122回会合(ジュネーブ)
12-14日 日・ジョージア投資協定交渉第2回会合の開催
12-15日 スリランカ・シリセーナ大統領が来日
12-15日 欧州議会本会議(ストラスブール)
12-16日 国際商取引法(UNCITRAL)作業部会I(中小企業)第30回会合(ニューヨーク)
12-23日 包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)作業部会B及び非公式・専門家委員会第50回会期(ウィーン)
12-4月6日 自由権規約人権委員会(ジュネーブ)
13日 米国2月消費者物価指数(CPI)発表
13日 米ペンシルベニア州下院補欠選挙
13日 中国全人代に国務院機構改革案計画及び国家監察法案を説明
13日 ブラジル1月月間小売り調査発表
13日 メキシコ1月鉱工業生産指数発表
13日 EU経済・財務省(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
13-15日 世界経済フォーラム・ラテンアメリカ会合(ブラジル・サンパウロ)
13-20日 対日理解促進交流プログラム・ラオス及びタイの高校生と大学生が訪日
14日 米国2月小売売上高統計発表
14日 中国2月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
14日 ドイツ連邦議会(下院)で首相指名選挙
14-16日 第1回ベトナム国際園芸・花生産・加工技術展「HortEx Vietnam 2018」(ホーチミン)
14-16日 ベトナム農業技術および農業機械・設備展「AGRI MACHINERY & TECH VIETNAM EXPO 2018」(ホーチミン)
15日 中国全国政治協商会議 閉幕(北京)
15日 EU雇用・社会政策・健康・消費者問題担当相理事会(ブリュッセル)
15日 長征3B(亜太6C)打ち上げ(四川省・西昌衛星発車センター)
16日 EU2月CPI発表
17日 中国全人代で国家主席・副主席を選出
17-19日 小池東京都知事が訪韓、平昌パラリンピックを視察
18日 ロシア大統領選挙
18日 インド1月鉱工業生産指数発表

<3月19-25日>
19日 EU外相理事会(ブリュッセル)
19日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
19日か20日 ロシア1-2月鉱工業生産指数発表
19-20日 G20財務相・中央銀行総裁会合(アルゼンチン・ブエノスアイレス)
19-22日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
19-22日 香港インターナショナル・フィルム&テレビ・マーケット(フィルマート)
20日 EU「オンライン・コンテンツ・サービスの越境ポータビリティー(携帯性)規則」適用開始
20日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
20日 EU基本条約第50条(加盟国の離脱)に関する一般問題理事会(ブリュッセル)
20日 米国連邦議会予備選挙(イリノイ州)
20日 南ア準備銀行四季報発表
20日か21日 ロシア1月貿易統計発表
20-21日 米国連邦公開市場委員会(FOMC)
20-21日 ブラジル中央銀行、金融政策委員会(Copom)
20-22日 第7回ベトナム国際原材料およびゴム・プラスチック工業技術展「Plastics&Rubber Vietnam 2018」(ホーチミン)
21日 オランダ情報監視に係る法改正案(情報・保安組織法)に関する国民投票
22日 ECB一般理事会(フランクフルト)
22日 ソユーズFG(国際宇宙ステーション長期滞在ミッション用)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)
22日 アリアン5ECA(通信衛星Superbird8等)打ち上げ(仏領ギアナ基地)
22-23日 日・キルギス投資協定交渉第2回会合の開催(ビシュケク)
22-23日 欧州理事会(ブリュッセル)
23日 米連邦政府つなぎ予算期限
23日 ロシア中央銀行理事会
23日か26日 ロシア2月雇用統計発表
24日 米高校乱射事件で生徒らが銃規制強化求めるデモ(ワシントン)
24日 GSLV-Ⅱ F11(GSAT 6A)打ち上げ(サティシュ・ダワン宇宙センター)
25日 トルクメニスタン議会選挙


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問