外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2018年2月27日(火)

外交・安保カレンダー(2月26-3月4日)

[ 2018年外交・安保カレンダー ]


先週末、国家主席の三選を禁止する中国憲法の改正問題が急浮上した。同憲法第79条第3項は国家主席・副主席の任期につき「2期を超えて連続して就任することはできない」と定めている。ところが25日、中国共産党中央委はこの規定を削除して国家主席・副主席の任期の上限を事実上廃止する提案を発表したと報じられた。

同改正案は3月5日に始まる全人代で審議・可決される見通しという。それにしても何とも簡単な憲法改正だろうか。日本では考えられない簡素な手続きで習近平国家主席の長期政権が実現するのだから。それにしても中国国内は異様に静かだ。当初ネットに「我々も北朝鮮になるのか」との投稿もあったが、直ぐに削除されたらしい。

中国国内よりも興味深いのはこのニュースを聞いた日本の中国専門家の反応だった。習近平氏の権力集中を批判的に見てきた人々は、「そら見たことか」と溜飲を下げた。これに対し、習氏の権力集中を「限定的であくまで中国改革のため必要」と好意的に見てきた向きには想定外の事態だったらしく、彼らは少なからず狼狽していた。

習近平氏の権力集中は、個人独裁禁止の要請と国家経済改革の必要性の狭間で絶妙のバランスをとるものという従来の説明は今や空しい。「権力は腐敗し、絶対的権力は絶対に腐敗する」と言ったのは英国の歴史家ジョン・アクトンだが、この格言は筆者の学生時代にも左翼系活動家が自民党政権に対し再三使っていたものだ。

歴史は繰り返さないが、押韻する。今回の憲法改正で習近平氏の権力基盤が一時的に強化されることは間違いなかろう。問題はそのような絶対的権力が何時まで続くかだ。北京の指導者たちが中国という存在を如何に認識しているのか、これを変えようとしているのか否か。これらが分かるには今暫く時間がかかりそうである。


 
〇欧州・ロシア
今週の欧州は忙しい。25日にはスペイン国王がバルセロナを訪れる。カタルーニャ騒動が始まって初だが、これで和解が進むのだろうか。今週EUはイギリスの離脱に関する合意案を発表するらしいが、大丈夫なのか。また、3月2日には英国首相がEU・英国関係につき立場を明らかにする予定だが、これも前途多難だろう。
26日にはドイツの与党CDUが大連立案を承認する見込みと一部で報じられたが、メルケル首相が求心力を維持できるのか注目される。同じく26日にはギリシャの債権国がアテネで、ギリシャ債務問題の解決につき4回目の会合を始めるそうだ。おいおい、あの問題はまだ解決していなかったのか。
3月1日にはロシア大統領の施政方針演説があり、3日からは3月18日のロシア大統領選挙に向け親プーチン陣営の選挙活動が活発化するという。更に、4日にはイタリアで総選挙がある。あまり目立たないが、今週以降、欧州では政治イベントが続くので要注意だ。

〇東アジア・大洋州
中国圏の春節が終わり、3月3日から13期全国政協第1回会議が、5日からは第13期全人代第1回会議がそれぞれ始まる。韓国ではオリンピックが終わり、パラリンピックのための最終準備が始まる。韓国大統領は南北対話のモメンタムを維持したいのだろうが、こうした姿勢が吉と出るか、凶と出るかは未だ判らない。

〇中東・アフリカ
今週の中東も静かだ。トルコ大統領が26日から5日間でアルジェリアなどアフリカ諸国4カ国を訪問する。

〇南北アメリカ
メキシコと米国の関係が再び悪化している。トランプ氏はメキシコ大統領との電話会談で「国境の壁」建設の費用をメキシコが負担しないことを公に認めることを拒否したため、既に発表されていたメキシコ大統領訪米が中止になったと報じられた。慣れっこになってしまったとはいえ、こんな外交的失態を常態化させてはならないのだが。

〇インド亜大陸
27日にヨルダン国王がインドを訪問する。3月3日にパキスタンで上院選挙がある。今週はこのくらいにしておこう。

12-3月9日 平和維持活動に関する特別委員会及びグループワーキング 実質会期(ニューヨーク)
19-3月9日 女子に対する差別撤廃委員会 第69回会合(ジュネーブ)
20-27日 対日理解促進交流プログラム・米国高校生らが訪日
20-3月1日 対日理解促進交流プログラム・韓国青年訪日団が訪日
22-26日 ミチェル・バチェレ・ヘリア・チリ共和国大統領が訪日
23-3月1日 堀井外務大臣政務官が英国、ブラジル、ペルー及びニカラグアを訪問
26日 メキシコ12月小売・卸売販売指数発表
26日 欧州外相理事会(ブリュッセル)
26日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(ブリュッセル)
26日 「鶴岡駐英国大使及び水上駐スペイン大使による任国治安情勢講演会」の開催(東京)
26日 H-IIAロケット38号機 (情報収集衛星光学6号機)打ち上げ(種子島宇宙センター)
26日-3月1日 携帯端末国際見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」(バルセロナ)
26日か27日 ロシア1月雇用統計発表
26-27日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
26-3月2日 国連世界食糧計画(WFP)執行理事会 第一定例会合(ローマ)
26-3月16日 国際民間航空機関(ICAO)Council phase 第213回会合(モントリオール)
26-3月23日 国連人権理事会 第37回会合(ジュネーブ)
27日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
27日 EU基本条約第50条(加盟国の離脱)に関する一般問題理事会(ブリュッセル)
27日 メキシコ1月貿易統計、雇用統計発表
27日か28日 ロシア2017年貿易統計発表
27-3月1日 国連経済社会理事会(ECOSOC)実質会期(operational activities for development segment)(ニューヨーク)
27-3月8日 対日理解促進交流プログラム・ベトナムの若手消防行政官及び消防士が訪日
28日 米国2017年第4四半期および年間GDP(改定値)発表
28日 ブラジル1月全国家計サンプル調査発表
28-3月1日 欧州議会本会議(ブリュッセル)
3月1日 ブラジル第4四半期GDP発表
1日 米・1月PCE物価指数(商務省)
1日 EU1月失業率発表
1日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
1日 外務省と国際移住機関の共催・外国人受入れと社会統合のための国際ワークショップを開催
2日 CIS経済理事会(ロシア・モスクワ)
2日 アトラスV(気象観測衛星GOES-S)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
3日 中国第13期全国人民政治協商会議 第1回全体会議(北京)
4日 イタリア議会選挙
4日 第90回米アカデミー賞授賞式(米ロサンゼルス)

【来週の予定】
5日 中国第13期全国人民代表大会 第1回全体会議(北京)
5日 環境理事会(ブリュッセル)
5日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
5日 フランス外相がイランを訪問
5-9日 国際原子力機関(IAEA)理事会(ウィーン)
6日 米国連邦議会予備選挙(テキサス州)
6日 ブラジル1月鉱工業生産指数発表
6日 欧州外相理事会(ブリュッセル)
6日か7日 ロシア2月CPI発表
6-7日 WTO一般理事会(スイス・ジュネーブ)
7日 EU・第4四半期実質GDP成長率発表
7日 ベージュブック(FRB)
7日 米国1月貿易統計発表
7日 ソユーズST-B(通信衛星O3b F4)打ち上げ(仏領ギアナ基地)
8日 英国商工会議所(BCC)年次総会(ロンドン)
8日 メキシコ2月CPI発表
8日 中国2月貿易統計発表
8日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
8日 ECB定例理事会(金融政策発表と記者会見)(フランクフルト)
8-9日 EU司法・内務相理事会(ブリュッセル)
8-18日 ジュネーブ国際モーターショー(一般公開)
9日 中国2月CPI発表
9日 米国2月雇用統計発表
9日 ブラジル2月IPCA発表
9-18日 第12回冬季パラリンピック(平昌)
11日 チリ大統領就任式


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問