キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2018年1月30日(火)
[ 2018年外交・安保カレンダー ]
今週は海外ニュースに見るべきものがないので、日本国内の話をしよう。今年も幸い全国各地で講演する機会を頂いているが、日本海側の地方自治体では東アジア情勢、特に北朝鮮の動きに対する関心が極めて高い。中でも地上型ミサイル迎撃システムであるイージスアショアについては山口と秋田で関心が高まっている。
配備が噂されているのだから当然だろうが、具体的には、どんな施設か不安だ、強力な電磁波が怖い、北朝鮮ミサイルの標的になる、米国人が運用するのではないか、同システムは迎撃だけでなく攻撃もできるのではないか、秋田市の候補地は人口密集地にあまりに近い、といった不安や懸念があるようだ。
これらはいずれも情報不足や誤解に基づくものと思われるが、万一放置すれば問題は一層拡大するだろう。詳しくは今週の産経新聞のコラムをご一読願いたい。地元への事前の説明はその内容とタイミングをよく考えないと逆効果だが、中国ではこんなことあり得ない。民主主義のコストは実に高いのだ。
欧州では29日から英国のEU離脱交渉が本格化しつつある。離脱時期は2019年の3月29日で、移行期間は2020年末に終了するそうだ。おいおい、英国は本当に離脱するらしいぞ。これがEUの終わりの始まりなのか、それともEUは英国なしでも生きていけるのか。歴史的な実験が始まったというべきか。
〇欧州・ロシア
英国でも30日から上院でEU離脱法案の審議が本格化する。つい数年前まで、EUは拡大し、多少ユーロ圏諸国の混乱があっても、EU自体は結束を維持できると漠然と思っていた。これが、今やブラッセルで大の大人が本気で離脱の時期や対応を議論している様は、正直なところ、今でも信じられない光景だ。
〇東アジア・大洋州
中国の中銀総裁の去就が噂になっている。しかし、周小川氏が引退しても、中国中銀の役割は変わらないだろう。その中国を31日から英国首相が公式訪問する。中国の対欧州外交は着々と進んでいるようだ。一方、朝鮮半島の南北対話は一進一退なのだ、考えてみれば当然だろう。これこそ北朝鮮の常套手段に他ならない。
〇中東・アフリカ
29日にイスラエル首相が訪露し、モスクワで首脳会談を行う。その後、29-30日にロシア主催でシリア和平会合がソチで開かれる。IS(イスラム国)は放逐されたが、このところシリア情勢はロシアが主導権を握っている。トランプ政権は何をしているのか、さっぱり分からない。大統領に関心がないか、ロシアの動きがあまりに巧みなのか。
〇南北アメリカ
30日にトランプ氏が大統領就任後初のState of the Union演説を行う。なぜこれを一般教書と呼ぶのかはよく分からない。憲法上、大統領は議会に出席する権利を持たないが、文書の形でmessageを議会に送付することが認められており、これが日本では一般教書、年頭教書と呼ばれるようになったようだ。
このところ、トランプ氏への評価が少し上向きになりつつあるような気がする。別に起死回生の一打はないのだが、これだけ目茶苦茶をやり続けると、たまに真面なことをやるだけで、「結構やるじゃないか」という評価が出てくるのかもしれない。慣れとは実に恐ろしいものだと痛感する。
〇インド亜大陸
29日から2月3日までインドとベトナムの両陸軍がインド中部で共同訓練を行うという。一方、パキスタンは29-30日に中国とグワダル港フリーゾーンの第一期竣工式を共同で祝うらしい。印パキ関係は今年も相変らずのようである。今週はこのくらいにしておこう。
15-2月2日 子どもの権利委員会 第77回会合(ジュネーブ)
22-30日 対日理解促進交流プログラム・アフガニスタン、インド、スリランカ、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、ブータン及びモルディブの社会人が訪日
22-3月30日 ジュネーブ軍縮会議(CD) 第1会期(ジュネーブ)
23-30日 対日理解促進交流プログラム・カナダ人高校生一行が訪日
23-30日 対日理解促進交流プログラム・米国の社会人一行が訪日
23-2月1日 対日理解促進交流プログラム・韓国青年沖縄経済産業視察団が訪日
24-2月1日 対日理解促進交流プログラム・大洋州のキリバス、クック諸島、ツバル、トンガなどから大学生らが訪日
24-2月11日 在中日本国大使館などが日本産飲食品を使用した「地域の魅力海外発信支援事業」を開催(北京・上海)
26-30日 中根外務副大臣がベトナム及びカンボジアを訪問
28-2月3日 グスタフソン国連食糧農業機関(FAO)事務局次長が訪日
28-2月4日 堀井外務大臣政務官がフィジー、ナウル及びオーストラリアを訪問
28-2月4日 「Juntos!!中南米対日理解促進交流プログラム」による「日本祭り」関係者の訪日
29日 欧州農水相理事会(ブリュッセル)
29日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
29日 日・トルコ安全保障協議(アンカラ)
29日 17年12月米個人消費支出(PCE)物価指数(商務省)
29日か30日 ロシア2017年1-11月貿易統計、12月雇用統計発表
29日-2月1日 平成29年度アジア大洋州・国際機関大使会議の開催(東京)
29-2月2日 国連人権理事会 ワーキンググループ第21回会合(ジュネーブ)
29-2月2日 国連先住民族のための自主基金第31期理事会
29-2月2日 日中平和友好条約締結40周年記念事業として第22回中国教育関係者代表団が来日
29-2月2日 日中平和友好条約締結40周年記念事業として2017年度中国青年代表団が訪日(東京都・群馬県)
30日 米国大統領一般教書演説(ワシントン)
30日 EU17年10-12月期ユーロ圏GDP(域内総生産)速報値(EU統計局)
30-31日 国連経済社会理事会ユースフォーラム(ニューヨーク)
30-31日 米国連邦公開市場委員会(FOMC)
30-2月1日 日・トルコ経済連携協定(EPA)交渉第8会合が開催(アンカラ)
31日 EU12月失業率発表(EU統計局)
31日 ファルコン9(SES16など)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
31日 第14回アジア不拡散協議を開催(ASTOP)(東京・三田共用会議所)
31-2月1日 EU地域委員会第127回本会議(ブリュッセル)
31-2月2日 英・メイ首相が訪中
1月下旬 ブラジル12月全国家計サンプル調査発表
1月下旬 メキシコ11月小売・卸売販売指数、12月貿易統計発表
2月1日 インド2018年度政府予算案発表
1日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
1日 ソユーズ2.1a(カノープスなど)打ち上げ(ボストチヌイ基地)
2日 米国1月雇用統計発表
2日 長征2D(地震電磁観測試験衛星など)打ち上げ(甘粛省酒泉衛星発射センター)
3日 イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長任期満了
3日 SS-520 5号機(超小型衛星TRICOM-1R)打ち上げ(内之浦宇宙空間観測所)
3-5日 IOC理事会(韓国・平昌)
4日 山口県・長崎県知事選、沖縄県名護市長選
4日 コスタリカ大統領選
【来週の予定】
5日 トルコ・エルドアン大統領がバチカンを訪問、フランシスコ・ローマ教皇と会談
5-8日 欧州議会本会議(ストラスブルグ)
5-9日 国際麻薬統制委員会(INCB)121回会合(ウィーン)
6日 米国12月貿易統計発表
6日 モンテネグロ・マルコビッチ首相がコソヴォを訪問
6日か7日 ロシア1月CPI発表
6-7日 ドイツ・シュタインマイヤー大統領が訪日
6-7日 ブラジル中央銀行、金融政策委員会(Copom)
6-9日 ユニセフ(UNICEF)執行理事会 第一定例会合(ニューヨーク)
7-10日 カナダ・トルドー首相がアメリカ合衆国(ロサンゼルス、サンフランシスコ、シカゴ)を訪問
8日 英国中央銀行が金融政策発表
8日 メキシコ中央銀行が金融政策発表
8日 外務省・日本及び東京商工会議所の共催でセミナー「FTA・EPA時代のビジネス戦略~FTA・EPAのメリット・活用法〜」を開催(東京都内)
9日 米・ペンス副大統領が平昌冬季オリンピックの開会式に出席
9-12日 インド・モディ首相がパレスチナとUAE、オマーンを訪問
9-25日 第23回冬季オリンピック(韓国・平昌)
10日 ファルコン9(地球観測衛星PAZなど)打ち上げ(ヴァンデンバーグ空軍基地)
11日 ソユーズ2.1a(ISS無人補給機プログレスMS8)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問