キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2017年12月5日(火)
[ 2017年外交・安保カレンダー ]
今週もトランプ氏が絶好調だ。先週1日にNSC担当だったフリン元大統領補佐官がFBIへの虚偽供述容疑で起訴、ワシントンの連邦地裁で有罪を認めた。この司法取引により、フリン氏は特別検察官の捜査に協力する見込みだ。今後は政権の中枢にまで捜査が及ぶ可能性がある。当然、ワシントンは大騒ぎだ。
ところが、何を血迷ったのか、トランプ氏は2日、「フリン氏を解任した理由は、彼が副大統領とFBIに嘘をついたからだ。彼はその嘘について有罪を認めた。残念なことだ。」などとツイートした。これが事実なら、トランプ氏は今年2月の段階でフリン氏がFBIに嘘をついた事実を知っていたことになる。
おいおい!当時トランプ氏はフリン氏解任理由として「副大統領に対する嘘」にしか言及していない。しかも、その頃彼はFBI長官にフリン氏に対する捜査を打ち切るよう働きかけていたとの疑惑がある。更に、事実関係を混乱させたこのツイートは何とトランプ氏ではなく、彼の弁護士が書いたものだそうだ。
トランプ政権は一体どうなっているのか。これが司法妨害でなくて何なのか。疑問は尽きない。更に、トランプ氏は近くエルサレムをイスラエルの首都と認める可能性があると報じられた。こうした中で、トランプ氏の支持率は下がるどころか、再び上昇したという。「慣れ」だとすれば、実に恐ろしい。
〇欧州・ロシア
4日に英国首相が欧州委員会委員長と会談する。同日、ベルギーの判事がスペインのカタルーニャ「大統領」の引き渡しについて判断する。カタルーニャ自治州の州議会選挙は12月21日に予定されている。世論調査によれば、独立を望む同州住民は24%であるのに対し、スペインに残留する合意を望む人が71%に上ったそうだ。
この他にも欧州では重要な会合が目白押しだ。今週の欧州は忙しい。もうすぐクリスマス休暇が始まるからだろうか。一方、4-8日に米国務長官がベルギー(EU)、オーストリア、パリを訪問し、5日にはEU諸国外相との会談が予定されている。それにしてもティラーソン氏はいつまで国務長官をやるのだろう。
〇東アジア・大洋州
4-8日に米韓空軍による共同演習が行われる。過去最大級というが、北朝鮮の態度は変わらないだろう。5-8日に日EU経済連携協定交渉が開かれる。3-7日にはカナダ首相が訪中する。8日にはモロッコ国王がインドネシアを訪問する。目立たないが、こういったイスラム圏の外交があることも忘れてはならない。
〇南北アメリカ
最近の報道にトランプ氏は相当苛立っているそうだ。日本の一部には、トランプ氏が「疑惑の"目くらまし"のため、北に対して軍事オプションを選択する恐れ」があり、「『予防的先制攻撃』に打って出る危険性」があると見る向きもある。だが、推測だけで、あまりいい加減なことは言わない方が良い。
「予防攻撃」は国際法上、正当化が難しい。米国がこうした攻撃で生ずる最悪数十万人もの犠牲者につき主たる責任を負うような事態をマティス、ケリー、マクマスターの3将軍が容認するとは思えない。米国の軍人は、日本の自衛隊と同様、意外に法的な詰めはきっちりやる、というのが筆者の経験則だからだ。
〇中東・アフリカ
5-6日にトルコ首相がロシアを訪問し、ロシア首相、大統領と会談する、このところ、ロシアとトルコの関係改善が進んでおり、今回は経済問題を話し合うのだろう。7-8日にはトルコ大統領がギリシャを訪問する。一方、5-6日にクウェートがGCC首脳会議を主催するが、カタルとサウジは一体何を話すのか。
〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。
3-10日 対日理解促進交流プログラム「カケハシ・プロジェクト」によりアジア系カナダ人4名が訪日
3-12日 JENESYS2017・キリバス、ナウル、バヌアツ、フィジー、マーシャル及びミクロネシアの大学生らが訪日
4日 ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)(ブリュッセル)
4-5日 EU運輸・通信・エネルギー相担当理事会(ブリュッセル)
4-6日 国連環境計画(UNEP)第3回国連環境総会(ナイロビ)
4-7日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
4-8日 米・ティラーソン国務長官がブリュッセル、ウィーン、パリを歴訪
4-8日 第158回国連食糧農業機関(FAO)理事会(ローマ)
4-8日 第119回国際海事機関(IMO)理事会(ロンドン)
4-8日 国際原子力機関(IAEA)が核医学に関する国際医療研修を開催(国立大阪大学大学院吹田キャンパス)
5日 米国10月貿易統計発表
5日 ブラジル10月鉱工業生産指数発表
5日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
5-6日 ブラジル中央銀行、金融政策委員会(Copom)
5-7日 国際オリンピック委員会(IOC)理事会(スイス・ローザンヌ)
5-12日 対日理解促進交流プログラム「カケハシ・プロジェクト」によりカナダ大学生が訪日
5-12日 JENESYS2017・カンボジア、ミヤンマーの大学生ら及びタイの高校生が訪日
5-13日 対日理解促進交流プログラム・中国高校生訪日団第4陣が訪日
6日 スイス連邦大統領・副大統領選挙
6日か7日 ロシア11月CPI発表
6-13日 外務省推進MIRAIプログラム・欧州各国から大学生・大学院生を招へい
7日 メキシコ11月CPI発表
7日 ネパール下院選第2回投票
7日 欧州中央銀行(ECB)一般理事会(フランクフルト)
7日 EU統計局(ユーロスタット)が第3四半期実質GDP成長率発表
7-8日 EU雇用・社会政策・健康・消費者問題担当相理事会(ブリュッセル)
7-8日 トルコ・エルドアン大統領がギリシャ・アテネを訪問
7-9日 アフリカ2017フォーラム(エジプト・シャルムエルシェイク)
7-10日 フィギュアスケート・グランプリファイナル(名古屋)
8日 ブラジル11月拡大消費者物価指数(IPCA)発表
8日 中国11月貿易統計発表
8日 米国11月雇用統計発表
8日 米国連邦債務の上限適用停止期間が終了、2018年度暫定予算終了
8日 エレクトロン試験機(テストフライト)打ち上げ(ニュージーランド・マヒア半島)
8-10日 EU人権年次コンファレンス2017(エストニア・タリン)
9日 中国11月CPI発表
9日 ファルコン9(スペースX社商用補給機ドラゴン13号機)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
10日 ノーベル平和賞・文学賞受賞式(オスロ/ストックホルム)
10-13日 WTO第11回閣僚会議(アルゼンチン・ブエノスアイレス)
【来週の予定】
11日 EU外相理事会(ブリュッセル)
11日 ロシア・インド・中国(RIC)外相会議 (インド・デリー)
11日 長征3B(アルジェリアの通信衛星Alcomsat1)打ち上げ(四川省・西昌衛星発射センター)
11-12日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
11-14日 欧州議会本会議(ストラスブール)
12日 メキシコ10月鉱工業生産指数発表
12日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
12日 EU基本条約第50条(加盟国の離脱)に関する一般問題理事会(ブリュッセル)
12日か13日 ロシア第3四半期経済活動別GDP(速報値)発表
12-13日 米国連邦公開市場委員会(FOMC)
13日 米国11月消費者物価指数(CPI)発表
13日 ブラジル10月月間小売り調査発表
13日 アリアン5(航法測位衛星ガリレオシリーズ4機)打ち上げ(仏領ギアナ基地)
13-14日 国際農業開発基金(IFAD)第122回理事会(ローマ)
14日 米国11月小売売上高統計発表
14日 中国11月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
14日 欧州中央銀行(ECB)定例理事会(独フランクフルト)
14日 プーチン大統領プレス会見
14-15日 欧州理事会(ブリュッセル)
14-15日 欧州理事会(ブリュッセル、参加組織が異なる)
15日 ロシア中央銀行理事会
15日 黒海経済協力機構(BSEC)外相会合(ウクライナ・キエフ)
15日か18日 ロシア1-11月鉱工業生産指数発表
16日 第52回西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)首脳会議(トーゴ)
16-20日 南ア与党アフリカ民族会議(ANC)党大会・総裁選
17日 チリ大統領選挙決選投票
17日 ソユーズFG(金井宣茂飛行士の搭乗)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問