外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2017年11月28日(火)

外交・安保カレンダー(11月27-12月3日)

[ 2017年外交・安保カレンダー ]


今週はあまり大きなニュースがない。11月22日の米国による北朝鮮の「テロ支援国家」再指定後も、北朝鮮は予想以上に静かだし、米中とも不気味な沈黙を守っている。こういう時の方が、何かが水面下で起きている可能性は高いのかもしれないが、筆者にはそれを知る術がない。

それよりも今週筆者が気になるのはエジプトで300人以上の犠牲者が出たテロ事件だ。起きたのはシナイ半島北部、カイロから200キロ離れた地中海沿岸の村のモスクだ。白昼約30人の武装集団がモスクに乗り付け、1人が自爆した後、無差別銃撃で少なくとも305人が死亡したという。

この中には子供約30人も含まれていたそうだから、ひどい話だ。何時からエジプト人はかくも血生臭い残忍な行動をとるようになったのか。少なくとも筆者がアラビア語を研修していた1970年代にはそんなことはなかった。こうしたやりかたは、エジプト的というより、イラク的な東洋古代専制政治型だ。

場所がシナイ半島で、標的がイスラム神秘主義(スーフィズム)らしいことも象徴的だ。広大なシナイ半島はモーゼの時代から、エジプト中央政府に対抗する勢力の絶好の隠れ家だった。スーフィーも異端だとはいわないが、主流のイスラームとは異なる。歴史は繰り返さないが、押韻するのだろうか。

〇欧州・ロシア
27日からドイツ大統領が連立政権に向けた調整を行うが、見通しは暗い。キリスト教民主同盟と大連立を組むたびに支持率を減らしてきたドイツ社民党にとって、メルケル首相との連立解消は既定路線なのか。遂にドイツでも政治的混乱が長期化する可能性が出てきた。万一、メルケル政権が倒れれば、EUの弱体化が進むだろう。

〇東アジア・大洋州 
中国の国務院総理が26日からハンガリーを訪問し、その後、30日にロシアで開かれる上海協力機構首脳会議に参加する。ブダペストでは第六回の中東欧・中国首脳会議に出席する。ハンガリーといえば、欧州地域で中国の南シナ海での活動に最も同情的な国の一つだ。中国は欧州でもやるべきことをやっている。恐るべし!

〇南北アメリカ
NYTによれば、ホワイトハウスにおけるトランプ氏の娘婿クシュナー氏の役割が縮小しつつあるそうだ。確かに彼のメディアへの露出度が大幅に低下したことは事実だ。但し、その理由は彼が失敗しつつあるからではなく、むしろ成功したからこそだ、という見方がある。
つまり、Rプリーバス首席補佐官やSバノン首席戦略官をホワイトハウスから追放することに成功した結果だという。一方、このことはケリー新首席補佐官の権威が確立した結果と見る向きもある。いずれにせよ、ニューヨークの田舎者の娘と娘婿がホワイトハウスを闊歩する姿は決して正常ではない。

〇中東・アフリカ 
30日にOPEC会合がある。報道によれば、最近ロシアとサウジアラビアは30日の会合で減産延長を発表することが必要という点で合意に至ったそうだ。一方、OPEC関係者は、サウジ・カタール対立により、湾岸アラブ諸国が恒例の非公式の事前協議を見送ったと述べたという。
世界的に好況が続いており、エネルギー価格についても強気の読みが出始めているようだ。しかし、値段が上昇すれば、したで、別の思惑も交錯するだろうから、先行きは見通しにくい。それにしても、欧州や日本が産油国関係者の動きに一喜一憂するようになって45年、こんなこといつまで続くのだろう。

〇インド亜大陸
米大統領の娘が米印共催の国際中小企業サミットに米国代表団を率いて参加するそうだ。ローマ法王はミャンマー訪問後、30日からバングラデシュを訪れる。ロヒンギャ問題が進展することを祈ろう。今週はこのくらいにしておこう。

20-28日 対日理解促進交流プログラム・韓国高校生・校長等が訪日
20-12月1日 外務省主催・韓国若手外交官のための日韓外交官交流プログラムを実施
21-29日 JENESYS2017等招へいでアジア15カ国・地域から文化芸術交流をテーマに訪日
22-12月1日 対日理解促進交流プログラム・韓国の大学生らが訪日(北海道)
25-27日 堀井巌外務大臣政務官が外交関係樹立50周年を踏まえモルディブを訪問
26-30日 オン・シンガポール教育大臣兼第二国防大臣が訪日
27日 スイス国民議会議長及び全州議会議長選挙
27日 メキシコ10月貿易統計発表
27日 EU外相理事会(ブリュッセル)
27日- 「日ソ地先沖合漁業協定」に基づく日ロ漁業委員会第34回会議が開催(モスクワ)
27-28日 核軍縮賢人会議の初会合を開催(広島市)
27-29日 国連人権理事会・第6回ビジネスと人権に関するフォーラム(ジュネーブ)
27-30日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
27-12月1日 第30回国際海事機関(IMO)総会(ロンドン)
27-12月1日 第17回国際連合工業開発機関(UNIDO)総会(ウィーン)
27-30日 フランシスコ教皇がミャンマーを訪問
27-12月5日 対日理解促進交流プログラム・インド、スリランカ、パキスタン、バングラデシュ、ブータン、ネパール及びモルディブの高校生及び大学生が訪日
27-12月10日 米ロサンゼルス国際自動車ショー開幕(報道向けは30日まで)
28日 メキシコ10月雇用統計発表
28日 OECD経済見通し発表
28日 国際開発機構(UNDP)国連人口基金(UNFPA)国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)執行理事会 special session(ニューヨーク)
28日 ソユーズ2.1b(気象衛星Meteor-M N2-1など)打ち上げ(ロシア・ボストチヌイ基地)
28-29日 堀井学外務大臣政務官がエネルギー憲章会議のためトルクメニスタンを訪問
28-30日 Global Entrepreneurship Summit 2017 開催(インド)
28-12月5日 対日理解促進交流プログラム・「日メコン5カ国産業交流」をテーマに5カ国から社会人が訪日
28-12月5日 対日理解促進交流プログラム・「日本語コミュニケーション・日本文化交流」をテーマにインドの大学生・大学院生・社会人が訪日
29日 米国7-9月期GDP(改定値)発表(商務省)
29日 米地区連銀景況報告(ベージュブック)(FRB)
29日 日本・イスラエル・イノベーション・ネットワーク(JIIN)総会(東京)
29-30日 欧州議会本会議(ブリュッセル)
29-30日 第5回EU・アフリカ首脳会議(コートジボワール・アビジャン)
29-30日 第27回国連軍縮会議が開催(広島)
29日-12月7日 対日理解促進交流プログラム・オーストラリア、ニュージーランド、キリバス、サモア、トンガ、バヌアツ、フィジー及びミクロネシアの大学生らが訪日
30日 EU10月失業率発表
30日 第126回EU地域委員会本会議(ブリュッセル)
30日 G20鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバル・フォーラム及び閣僚級会合
30日 石油輸出国機構(OPEC)定例総会(ウィーン)
30日 インド7-9月期GDP発表
30日 ブラジル10月全国家計サンプル調査発表
30日 米・10月個人消費支出(PCE)(商務省)
30日 山口那津男公明党代表が訪中
30-12月1日 EU競争力担当相理事会(ブリュッセル)
30-12月2日 フランシスコ教皇がバングラデシュを訪問
1日 ブラジル第3四半期GDP発表
1日 オバマ元米大統領がインド・ニューデリーを訪問
1日 サッカー2018W杯ロシア大会組み合わせ抽選会(モスクワ)
1日 国連会計監査委員会第47回special session(ローマ)
3日 福岡国際マラソン
3-6日 ラジャオナリマンピアニナ・マダガスカル共和国大統領が訪日

【来週の予定】
4日 ユーログループ(ブリュッセル)
4-5日 EU運輸・通信・エネルギー相担当理事会(ブリュッセル)
4-6日 国連環境計画(UNEP)第3回国連環境総会(ナイロビ)
4-7日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
4-8日 第158回国連食糧農業機関(FAO)理事会(ローマ)
4-8日 第119回国際海事機関(IMO)理事会(ロンドン)
5日 米国10月貿易統計発表(商務省)
5日 ブラジル10月鉱工業生産指数発表
5日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
5日 ファルコン9(スペースX社商用補給機ドラゴン13号機)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
5-6日 ブラジル中央銀行が金融政策を発表(Copom)
6日 スイス連邦大統領・副大統領選挙
6日か7日 ロシア11月CPI発表
7日 EU第3四半期実質GDP成長率発表
7日 メキシコ11月CPI発表
7-8日 EU雇用・社会政策・健康・消費者問題担当相理事会(ブリュッセル)
7-8日 トルコ・エルドアン大統領がギリシャ・アテネを訪問
7-9日 アフリカ2017フォーラム(エジプト・シャルムエルシェイク)
7-10日 フィギュアスケート・グランプリファイナル(名古屋)
8日 ブラジル11月IPCA発表
8日 米国11月雇用統計発表(労働省)
8日 米国連邦債務の上限適用停止期間が終了、2018年度暫定予算終了
8日 中国11月貿易統計発表
8-10日 EU人権年次コンファレンス2017(エストニア・タリン)
9日 中国11月CPI発表
10-13日 WTO第11回閣僚会議(ブエノスアイレス)


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問