キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2017年10月3日(火)
[ 2017年外交・安保カレンダー ]
今週筆者が最も気になったのは米国務長官の訪中だった。予想通り、北朝鮮問題で大きな進展はなかったようだ。米大統領は国務長官に「時間の無駄」だと伝え、長官は長官で大統領のツイート発言などが米国政府の基本的政策から逸脱しないよう、必死でバランスを取ろうとしている。驚くべきことだが・・。
考えてみれば当然だろう。中国が今、核ミサイル問題で北朝鮮に対し態度を硬化させる可能性は低い。5年に一度の党大会を18日に控え、米国からの圧力に簡単に屈する訳にはいかないからだ。少なくとも10月は、そして恐らくは年内は、米中間で朝鮮半島の将来に関する妥協が成立する可能性は低いだろう。
一方、今週日本での最大のハイライトは衆議院解散後の民進党に起きたゴタゴタではなかろうか。この政治現象、どうやら新しい要素と古い要素が混じり合っているようだ。それらを区別せずに議論するから、混乱が一層拡大しているのだろう。筆者の現時点での見立ては次の通りだ。
まずは、古い要素から始める。「新党ブーム」といえば、1990年代と2000年代にそれぞれ起きたが、その後一体何が改善したか。90年代には新政権が短期間続いた後、自民党・社会党の連立が始まった。2009年にも政権交代が実現したが、新政権では3人の総理大臣が生まれたものの、3年しか続かなかった。
新しい要素は、何と言っても、戦後の「左派リベラル」勢力がその歴史的役割を終え、本格的な淘汰の時代に入ったらしいことだ。左右の様々な勢力が合体して出来た民主党・民進党は、結果的に、本格的な統治能力を示すことができなかった。されば、同党の事実上の分裂は時間の問題だったのだろう。
「新党ブーム」自体、悪いとは言わない。問題は「二度あることは三度ある」を避け、如何にして「三度目の正直」を実現するかだ。最近の一連の動きはポピュリズムだが、それ自体悪いとも思わない。問題は現在日本で起きているポピュリズムがここ数年欧米で起きているポピュリズムとは異なっていることだ。
〇欧州・ロシア
10月1日のスペイン・カタルーニャ自治州で行われた住民投票について混乱が続いている。スペイン中央政府は違憲と判断された同州の住民投票阻止に向け現地警察がとった行動は「模範的」と賞賛した。カタルーニャの独立派指導者らが数日内にも独立を宣言する可能性があるというから、まだ問題は解決していない。
先週はイラク・クルド自治区での住民投票が逆に同地域の安定を損なう可能性に言及したが、この種の住民投票や国民投票は必ずしも適切なものとは限らない。英国のEU離脱しかり、イタリアの憲法改正しかり。この種のことを国民投票で決めようとするとロクなことは起きないということなのだろうか。
〇東アジア・大洋州
今週中国と朝鮮半島は休日。2日からミャンマーがロヒンギャ問題に関する国連の調査団を受け入れる。一度は拒否したミャンマー政府だが、今回は拒否できなかったということか。6日からは10日間の予定で、カンボジア、ブルネイ、ラオス、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムと日本の沿岸警備隊が共同訓練を行う。
〇南北アメリカ
ラスベガスで1日、再び銃の乱射があり、多数の犠牲者が出た。犯行の詳細は不明であり、現時点で即断はできない。だが、もしこれがイスラム国などの犯行でなければ、米国ではいわゆるイスラム主義者・聖戦主義者のテロよりもはるかに多くの犠牲者が銃規制の不備で生まれていることになる。どう考えても異常だ。
〇中東・アフリカ
4日にトルコ大統領がイランを訪問する。最近のエルドアンの欧米離れは顕著であり、今回もトルコ独自の中東外交の一環なのだろう。中東ではアラブも大事だが、非アラブ、すなわちペルシャ、トルコ、ユダヤにも注目すべしというのが筆者の持論だが、今回のような非アラブ二カ国の連携は潜在的脅威だ。
〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。
9月27日-10月3日 外務省がスポーツ外交促進事業でチェコのパラバドミントン選手及び指導者を招へい
9月27日-10月3日 外務省がスポーツ外交促進事業でモルディブのサッカー女子代表チーム指導者を招へい
10月1-4日 英国保守党大会(マンチェスター)
1-8日 中国国慶節、中秋節休暇
1-9日 外務省が米国人元戦争捕虜及びそのご家族等を招へい
2日 EU統計局(ユーロスタット)、8月失業率発表
2日か3日 ロシア第2四半期需要項目別GDP統計(速報値)発表
2-4日 国連人権理事会 第9回 intersessional forum on economic, social and cultural rights(ジュネーブ)
2-5日 包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)第49回アドバイザリーグループ(ウィーン)
2-5日 欧州議会本会議(ストラスブール)
2-6日 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)第68回執行委員会(ジュネーブ)
2-8日 体操世界選手権(モントリアール)
3日 米タイ首脳会談(ワシントン)
3日 第5回中小企業協力に関する日露会合、日露中堅中小企業ビジネス交流会(東京)
3日 ブラジル8月鉱工業生産指数発表
3-5日 世界液化石油ガス(LPG)フォーラム(モロッコ・マラケシュ)
3-6日 韓国秋夕(旧盆)休暇
4日 トルコ・エルドアン大統領がイランを訪問
4-8日 サウジ・デザインウイーク2017
4-18日 ユネスコ第202回執行委員会(パリ)
5日 米国8月貿易統計発表
5-10日 食品加工機械・設備展「Vietnam Print Pack Foodtech」(ホーチミン)
5日か6日 ロシア9月CPI発表
6日 世界貿易機関(WTO)サービス貿易理事会(スイス・ジュネーブ)
6日 米国9月雇用統計発表
6日 ブラジル9月拡大消費者物価指数(IPCA)発表
6-7日 APEC第10回交通相会合(パプアニューギニア・ポートモレスビー)
6-10日 オークランドホームショー
6-28日 サッカーU17W杯(インド)
8日 シカゴマラソン(米イリノイ州シカゴ)
8日 自動車F1日本GP決勝(三重・鈴鹿サーキット)
8日 ファルコン9(通信放送衛星SES11/エコースター105)(ケネディ宇宙センター)
8-12日 情報通信技術(ICT)関連展示会「GITEX」(UAE・ドバイ)
【来週の予定】
9日 メキシコ9月CPI発表
9日 ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)(ルクセンブルク)
9日 ファルコン9(イリジウム・ネクスト10機)(ヴァンデンバーグ空軍基地)
9-10 EU農業・漁業理事会(ルクセンブルク)
9-11日 EU地域委員会(COR)125回本会議(ブリュッセル)
9-12日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
9-12日 デンマーク・フレデリック皇太子夫婦が来日
10日 CIS外相会議(ウズベキスタン・タシケント)
10日 リベリア大統領及び下院議員選挙
10日 北朝鮮の朝鮮労働党創建72年
11日 CIS首脳会議(ロシア・ソチ)
11日 ブラジル8月月間小売り調査発表
11日 中国共産党第18期中央委第7総会(北京)
11か12日 米FOMC議事要旨
11-13日 国際グリーンテック・エコプロダクト展示会「IGEM2017」(クアラルンプール)
11-13日 第5回国際精密機械、工作機械および金属加工展示会「MTA Hanoi 2017」(ハノイ)
11-13日 第12回インド国際鉄道展示会「IREE2017」(ニューデリー)
11-15日 北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉第4回会合(ワシントン)
12日 メキシコ8月鉱工業生産指数発表
12-13日 G20財務省・中央銀行総裁会合(ワシントン)
12-14日 ベトナム工作機械・金属加工ソリューション展「METALEX VIETNAM 2017」
12-14日 フランチャイジング・アンド・ライセンシング・アジア2017「FLAsia2017」(シンガポール)
13日 中国第3四半期貿易統計発表
13日 米国9月消費者物価指数(CPI)、小売売上高統計発表
13-15日 IMF・世界銀行年次総会(ワシントン)
14-15日 G7農業相会合(イタリア・ベルガモ)
15日 キルギス大統領選挙
15日 オーストリア下院選挙
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問