外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

  • 当サイト内の署名記事は、執筆者個人の責任で発表するものであり、キヤノングローバル戦略研究所としての見解を示すものではありません。
  • 当サイト内の記事を無断で転載することを禁じます。

2017年9月19日(火)

外交・安保カレンダー(9月18-24日)

[ 2017年外交・安保カレンダー ]


今週は恒例の国連総会が始まる。トランプ氏にとってはこれが国連デビューだ。先ほどCNNがbreaking newsでトランプ氏の演説を生中継していた。確か、米国の国連総会演説は19日だったはず。一体何を喋るのかと思ったら、国連改革について用意された草案を読み上げていた。正直、これが全然面白くない。

ドナルド・トランプにはバージョン1.0(選挙キャンペーンモード)と2.0(統治行政モード)がある。前者には用意された草案がなく、彼の即興スピーチが主体。ツイッターもその一部だ。今回のトランプ氏は後者だから、当然即興は少ない。暴言を吐くトランプ氏に慣れてしまったことが、我ながら情けない。

今週筆者が最も気になったのはミャンマーのロヒンギャ迫害問題だ。ロヒンギャとは同国の西部ラカイン州に住んでいた少数派で、人口は110万程度、殆どがムスリムで、ミャンマーは彼らに国籍すら与えていないという。19世紀後半英国の植民地政策の一環でベンガル系労働者を移民させたのが始まりだそうだ。

数年前ミャンマーの首都ネピドーを訪問した際、地元のガイドに「これだけ近いのだからベンガル系のイスラム教徒のミャンマー人はいないのか」と聞いたら、答えが「いない」だったことをふと思い出した。当時は嘘だろうと思ったが、彼は正しかった。ロヒンギャはミャンマー国民ですらないのだから。

当然批判はスーチー女史に向かう。国家顧問という名の事実上の国家指導者だと思ったら、実は軍部の傀儡だった、となれば穏やかではないからだ。しかし、誰が彼女を非難できるだろうか。彼女については昔から毀誉褒貶があった。彼女は決してミャンマーのジャンヌダルクではない。これからもそうなのだ。

〇欧州・ロシア
20日にウクライナ大統領が同国への国連PKO部隊派遣につき国連で提案を行う。仏では12日に続き、21日にも労組連合が政府の労働改革に反対するストライキを実施する。22日には英首相がイタリアでEUとの関係について演説を行うそうだ。
いずれも重要な動きではあるが、今週のハイライトは何といっても24日のドイツ議会総選挙だろう。事前の予想では現与党であるキリスト教民主同盟の第一党の地位は変わりそうもなく、緑の党、左翼、右翼等どの政党が第三党となるかで連立政権の枠組みが変わるらしい。恐らくはメルケル首相の再選だろう。

〇東アジア・大洋州 
国連で21日に日米韓首脳会合が開かれる。韓国だけでなく、米国までもがフラフラしないよう、しっかり議論してもらいたいものだ。米政権はこれまでのところ北朝鮮問題では無難にやっているように見える。だが、心配なのはこれからだ。口では威勢が良いが、本当にタフになれるのか?祈るしかない。

〇南北アメリカ
トランプ政権は相変わらずだ。金正恩をロケットマンと呼んだのはご愛敬だが、15日朝のロンドン地下鉄テロにつき英当局未発表情報をツイッターに投稿し、英国官民から強く批判されている。直前に聞いた機密情報をすぐ喋ってしまう癖は直っていないようだ。昔日本にもそんな外相がいたことを思い出した。

〇中東・アフリカ 
トランプ氏の国連総会出席でもう一つ注目されているのが、イスラエル首相との会談だ。オバマ政権時代に両国関係は最悪だったが、今の関心は2015年のイラン核合意の行方である。米国務長官は、イランが技術的に核合意を遵守しているが、一方、地域で不安定化を促進する行動を強化していると非難した。
14日に米財務省は、核開発ではなく、ミサイル計画やサーバー犯罪関与を理由に、イラン人7人と同国企業2社を制裁対象者リストに加えた。イラン側はこれに猛反発しているが、恐らくトランプ政権の態度は変わらないだろう。その意味でもトランプ・ネタニヤフ会談の行方が気になるところだ。

〇インド亜大陸
12日からの安倍首相訪印では安全保障問題もさることながら、両国経済関係に関する合意が目立った。やはり、インドの最大関心は経済だ。今週はこのくらいにしておこう。

10-19日 対日理解促進交流プログラム・21世紀ユース日本通信使日本の大学生が訪韓
11-22日 国連貿易開発会議(UNCTAD)第64回貿易開発理事会(TDB)(ジュネーブ)
11-29日 第36回国連人権理事会(ジュネーブ)
12-18日 山口公明党代表がマトビエンコ・ロシア上院議長と会談のために訪ロ(モスクワ)
12日-12月中 第72回国連総会(ニューヨーク)
12-19日 堀井巌外務大臣政務官がオーストラリア、マレーシア及びラオスを訪問
12-21日 対日理解促進交流プログラム・日韓学術文化青少年交流事業団が訪韓
13-19日 堀井学外務大臣政務官がアゼルバイジャン及びトルクメニスタンを訪問
14-20日 ロシア軍がベラルーシで大規模演習
17-23日 河野外務大臣が国連総会へ参加するためにニューヨークを訪問
18日 ユーロスタットが8月CPI発表
18日 柳条湖事件から86年
18-19日 佐藤外務副大臣がオマーンを訪問
18-22日 安倍首相が国連総会出席のため訪米
18-22日 第35回ASEANエネルギー相会合(マニラ)
18-22日 第61回国際原子力機関(IAEA)総会(ウィーン)
18-23日 対日理解促進交流プログラム「環境資源を活かした先進的なまちづくりを学ぶ・日韓若者交流リーダー育成事業」日本の大学生等が韓国を訪問
18-10月6日 国際民間航空機関(ICAO)第212回Committee Phase(モントリオール)
19日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
19日 4-6月期の米経常収支(商務省)
19日 スー・チー・ミャンマー国家顧問が国民向けテレビ演説
19日 米大統領が国連総会で演説(ニューヨーク)
19-20日 米国連邦公開市場委員会(FOMC)
19-25日 第72回国連総会一般討論演説(ニューヨーク)
19-26日 対日理解促進交流プログラム「日ASEAN学生会議」の実施
19-28日 対日理解促進交流プログラム「未来につなぐ環境プロジェクト-福島の再生可能エネルギー事業に学ぼう-」韓国の大学生等が訪日(福島県)
20日 安倍首相が国連総会で演説
20日 包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進会議(ニューヨーク)
20日か21日 ロシア1-7月貿易統計発表
20-21日 第528回EU経済社会評議会(EESC)プレナリーセッション(ブリュッセル)
20-21日 外務省が復興庁等と共催で「ふくしま復興フェアin霞が関コモンゲート」開催
21日 日米韓三カ国首脳会談
21日 メキシコ7月小売・卸売販売指数発表
21-22日 APEC第11回防災担当高官会合(SDMOF11)(ベトナム・ビン)
22日 英首相が演説(イタリア・フィレンツェ)
22日 アルバ大統領選挙
22日 ソユーズ2.1b(ロシア測位衛星Glonass-M)宇宙基地(カザフ・バイコヌール宇宙基地)
23日 ニュージーランド総選挙
23-27日 北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉第3回会合開幕(カナダ・オタワ)
24日 ドイツ連邦議会(下院)選挙
24日 フランス上院選挙
24日 スイスで年金制度改革を問う国民投票
24日 ベルリンマラソン
24-27日 英国労働党大会(ブライトン)


【来週の予定】
25日 イラク・クルド自治区で分離独立を問う住民選挙
25日 IAEA理事会(ウィーン)
25日か26日 米・スペイン首脳会談(ワシントン)
25日か26日 ロシア8月雇用統計発表
25-28日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
25-26日 G7産業・デジタル担当相会合(イタリア・トリノ)
25-29日 国連人権理事会第18回「人権と多国籍企業及びその他の企業の問題」に関するワーキンググループ(ジュネーブ)
26-28日 WTOパブリックフォーラム(スイス・ジュネーブ)
26日 メキシコ8月雇用統計発表
26-29日 APEC女性と経済フォーラム(ベトナム・フエ)
27日 メキシコ8月貿易統計発表
29日 日中国交正常化45周年
29日 ブラジル8月全国家計サンプル調査結果発表
29日 ドイツ8月労働市場統計発表
28日 米国第2四半期GDP(確定値)発表
28-29日 G7科学相会合(トリノ)
29日 日中国交正常化45周年
29日 プロトンの打ち上げ(カザフ・バイコヌール宇宙基地)
29日 アリアン5の打ち上げ(仏領ギアナ基地)
30日 長征3B(航法測位衛星第三世代北斗2機)打ち上げ(四川省・西昌衛星発射センター)
30日 長征2D(地震電磁観測試験衛星等)打ち上げ(甘粛省・酒泉衛星発射センター)
30日 長征6(吉林一号)打ち上げ(山西省・太原衛星発射センター)
30日-10月1日 G7労働相会合(トリノ)
9月中 パキスタン中央銀行、金融政策決定会合
9月中 インド7月鉱工業生産指数発表
9月下旬 ヒジュラ暦(イスラム暦)新年
9月下旬 フランス2018年政府予算案・社会保障会計法案発表


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問