キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2017年9月5日(火)
[ 2017年外交・安保カレンダー ]
9月3日昼過ぎ、北朝鮮が第6回目の核実験を「強行」した。広島出張中だったこともあり、これまで以上に強い怒りを覚えた。しかし、核実験の実施自体は驚くに当たらない。先代の金正日時代は2006、09、13、16年とほぼ三年おきの実施だったが、正恩時代では既に三回目。明らかに計画は加速されている。
正恩は一体何を焦っているのだろう。経済制裁が効いてDPRK(朝鮮民主主義人民共和国)の将来を悲観視するからこそ核開発を急ぐのか。それとも、核弾頭付きICBMの完成が間近となったので、加速させているだけなのか。筆者は正恩の空威張りに、徐々に追い詰められた独裁者の悲壮感の裏返しを見る。
これまで各当事者は合理的な判断を繰り返してきた。北朝鮮は核兵器保有国という「力の立場」からの米国との和平を望み、中国は緩衝国家DPRKを見捨てられず、韓国は半島が焦土となる戦争に踏み切れず、同じく軍事行動に踏み切れない米国は中国に対する経済制裁を通じて北朝鮮に圧力を掛けている。
筆者はこうした状況を「合成の誤謬」と呼ぶ。米国は今後も対話より圧力を重視していくだろう。トランプを囲む将軍たちは暴走などしない。軍人は戦争に最も慎重だからだ。最大の懸念は北朝鮮、というより正恩自身の「誤算」による朝鮮戦争の再勃発だろう。カギとなるのは北朝鮮軍の士気である。
誤解を恐れずに言おう。このまま北朝鮮包囲網が狭まり、原油供給まで制裁の対象となれば、状況は1940年代のABCD包囲網に似てくる。その時、北朝鮮軍は「国体護持」のため「最後まで戦う」のか、それとも、2003年のイラク軍のように、独裁者のために死ぬくらいなら、脱走と敵前逃亡を繰り返すのか。
後者であれば、米国による先制攻撃は成功し、戦意を失った北朝鮮軍は米軍の敵ではないだろう。だが、もし前者であれば、第二次朝鮮戦争は再び凄惨な戦場となる。北朝鮮の誤算は米国の「レッドライン」の読み違いで起きるが、米側に誤算が生ずるとすれば、それは北朝鮮軍の士気の読み違いかもしれない。
〇欧州・ロシア
6-8日にロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプラインNord Stream2計画について欧州委員会にロシアとの交渉権限を付与するか否かにつきEU外相会議が開かれる。7日には金融政策を議論するため欧州中銀の政策理事会がフランクフルトで開かれる。漸く欧州が仕事を再開したということか。
〇東アジア・大洋州
6-7日にウラジオストクで東方経済フォーラムが開かれ、日露、露韓首脳会談が開かれる。日露については何度も会っているが、韓国新大統領が参加する露韓首脳会議は初めてだろう。4日には福建省アモイでBRICS首脳会議が開かれたが、さしたる成果はなかったようだ。一時は脚光を浴びたBRICSは今や黄昏なのか。
〇南北アメリカ
米国はテキサス州を襲ったハリケーンの話ばかり。降水量はテキサス州の一部で1250ミリを超えたという。このハリケーンは上陸後失速し湾岸寄りの地域にとどまったため、海面から湿気を吸い上げ内陸に雨を降らせる時間が長かったらしい。但し、地球温暖化の結果だと断言するのは時期尚早のようだ。
〇中東・アフリカ
4日にイスラム教の「犠牲祭(Eidul-Adha)」が終わる。7日にはクウェート首長が訪米し米大統領と会談する。欧州は仕事を再開したが、中東の方はまだなのか、今週はあまり大きな動きがないようだ。
〇インド亜大陸
インド首相はBRICS首脳会議出席後、7日までミャンマーを訪問する。今週はこのくらいにしておこう。
8月29日-9月7日 対日理解促進交流プログラム・日韓学術文化青少年交流事業訪韓団
1-5日 北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉第2回会合(メキシコ市)
1-8日 佐藤外務副大臣がレバノン、バーレーン、アラブ首長国連邦及びオマーンを訪問
3-5日 第9回BRICS首脳会議(中国・アモイ)
4日 レーバーデー(労働者の日)でニューヨーク市場休場
4-7日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
4-9日 国連世界観光機関(UNWTO)第22回総会(四川省・成都)
4-10日 第49回ASEAN経済相会議(マニラ)
5日 国連世界観光機関(UNWTO)第106回執行理事会(四川省・成都)
5日 ブラジル7月鉱工業生産指数発表
5-6日 ブラジル中央銀行、金融政策委員会(Copom)
5日か6日 ロシア8月CPI発表
5-7日 高村総理特使がイランを訪問
5-7日 第27回経済フォーラム(ポーランド・クリニツァ・ズドルイ)
5-7日 インド・モディ首相がミヤンマーを訪問
5-11日 UNDP, UNFPA, UNOPS 執行理事会second regular session(ニューヨーク)
5-12月19日 国連行財政問題諮問委員会 fall session(ニューヨーク)
6日 ブラジル8月拡大消費者物価指数(IPA)発表
6日 米国7月貿易統計発表
6日 南アジア地域協力連合(SAARC)投資フォーラム2017(コロンボ)
6日 アリアン5(インテルサット37eとBSAT 4a)打ち上げ(仏領ギアナ基地)
6日 長征2D(ベネズエラの地球観測衛生VRSS-2)打ち上げ(甘粛省・酒泉衛生発射センター)
6-7日 東方経済フォーラム(ロシア・ウラジオストク)
6-7日 安倍首相が東方経済フォーラムに出席
6-7日 韓国・文大統領がロシア訪問及び露韓首脳会談
6-9日 豪州主催「拡散に対する安全保障構想」海上阻止訓練へ参加
6-11日 フランシスローマ法王がコロンビアを訪問
6-14日 対日理解促進交流プログラム・中国高校生訪日団第1陣訪日
7日 日露首脳会談(ウラジオストク)
7日 欧州中央銀行(ECB)定例理事会
7日 メキシコ8月CPI発表
7日 EU統計局(ユーロスタット)が第2四半期実質GDP成長率発表
7日 ハイレベルフォーラム「平和の文化」総会(ニューヨーク)
7-8日 フランス・マクロン大統領がギリシャを訪問
7-9日 SAARC貿易フェア2017(コロンボ)
7-9日 第13回国際トラベルエキスポホーチミン「ITE HCMC 2017」(ホーチミン)
8日 中国8月貿易統計発表
8日 日中国交正常化45周年記念式典(北京)
9日 中国8月CPI発表
9日 第74回ベネチア国際映画際授賞式
9日 北朝鮮建国記念日
9日 国連世界観光機関(UNWTO)第107回執行理事会(四川省・成都)
9日 プロトン(通信衛星Amazonas 5)打ち上げ(バイコヌール基地)
9-10日 第9回ジャカルタ日本祭2017
【来週の予定】
11日 「一帯一路」サミット(香港)
11日 メキシコ7月鉱工業生産指数発表
11日 ノルウェー議会選挙
11日か12日 ロシア第2四半期経済活動別GDP発表
11-14日 食品見本市「Fine Food Australia」(シドニー)
11-15日 APEC中小企業担当相会合(SMEMM)、関連シンポジウム(ベトナム・ホーチミン)
11-15日 国際原子力機関(IAEA)理事会(ウィーン)
11-29日 第36回国連人権理事会(ジュネーブ)
12日 マレーシア・ラザク首相が訪米
12日 ブルガリア・ラデフ大統領が訪米
12日 ブラジル7月月間小売り調査発表
12-15日 国連児童基金(UNICEF)執行理事会 second regular session(ニューヨーク)
12日-12月中 第72回国連総会(ニューヨーク)
13日 外務省と環境省及び国連広報センターが「気候変動シンポジウム」を開催(千代田放送会館)
13-14日 第121回国際農業開発基金(IFAD)執行理事会(ローマ)
13-15日 第10回電子機器製造用SMT、テスト技術、機器、サポート産業展示会「NEPCON Vietnam 2017」(ハノイ)
13-16日 第11回国際石油・ガス産業展2017(ジャカルタ)
13-16日 第18回国際鉱業展2017(ジャカルタ)
13-16日 第17回国際プラスチック・ゴム産業展「VietnamPlas 2017」(ホーチミン)
13-17日 国際オリンピック委員会総会(リマ)
14日 米国8月消費者物価指数(CPI)発表
14日 中国8月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
14日 EU司法・内務相理事会(ブリュッセル)
15日 ユーログループ(タリン)
15日 米国8月小売売上高統計発表
15日 ロシア中央銀行理事会
17日 マカオ立法会選挙
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問