外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

  • 当サイト内の署名記事は、執筆者個人の責任で発表するものであり、キヤノングローバル戦略研究所としての見解を示すものではありません。
  • 当サイト内の記事を無断で転載することを禁じます。

2017年8月1日(火)

外交・安保カレンダー(7月31日-8月6日)

[ 2017年外交・安保カレンダー ]


先週7月28-29日深夜に北朝鮮が2度目のICBM発射実験を行った。直後の29日早朝、某公共放送から電話が入り、翌日の日曜討論出演が決まった。今回の発射の意味、北朝鮮の意図は、国際社会は何を?いずれも定番の質問だった。

北朝鮮の意図は、軍事的挑発ではなく、交渉上の挑発だ。米国本土に届く核弾頭付きICBMを実戦配備し、力の立場から米国に北朝鮮を核兵器保有国として認めさせ、対北朝鮮平和条約を締結させ、その上で生き残りたいのだ。

しかし、それは自殺行為ではないか。核弾頭付きICBMが米本土に届けば、米国のホームランドセキュリティとなるから、米国は本気で自衛権行使を考える可能性が出てくる。北朝鮮はそれで本当に良いのか。

今回のICBMは3725キロ上空まで達し、47分12秒=2832秒で998キロ飛んだという。ネット上には便利な計算サイトがあり、放物運動の高度と距離から初速を計算し、その初速で打ち出し角度を45度にすれば最大射程が計算できる、http://keisan.casio.jp/exec/system/1204505768ハズだったのだが、どうやっても計算が合わない。重力係数は間違いなさそうだが、空気抵抗の誤差か、速度が変化するから実際の飛行時間とは違うのか。北朝鮮問題の詳細は今週木曜日の産経新聞コラムをお読み頂きたい。

今週はトランプ氏の「中国には大いに失望した、口だけで何もしない、このままでは許さない」発言と習近平氏の「人民解放軍を世界一流の軍隊にする(どちらも7月30日)」発言に笑った。米中首脳の発言は意外に軽いのだ。

〇欧州・ロシア
8月1日にイタリア政府が難民の流入を止めるためリビアに艦船を派遣する案を議会に送付するという。そういえば、地中海はもう夏だから、また難民が殺到しているのだろうか。犠牲者が出ないとニュースにならないのか。考えただけでも胸が痛む。

〇東アジア・大洋州
8月1日に習近平・党中央軍事委員会主席が建軍90周年演習を視察する。前日には軍事パレードに出席し、「人民解放軍を世界一流の軍隊にする」と述べたそうな。ということは、人民解放軍はまだ「世界一流」ではないということか。
8月2~8日にマニラで第50回ASEAN外相会議が開かれる。拡大外相会議には日米中露韓と北朝鮮が参加する。もう50回になったか。昔は、アトラクションをやったり、お遊びのような会議だったが、今はどうなのだろう。

〇中東・アフリカ 
7月31日にサウジアラビアにイラン巡礼団の第一陣が到着する。これからハッジが始まるのか。イランといえば、4日から北朝鮮の金永南・最高人民会議常任委員会委員長がテヘランを訪問し、5日にはローハニ大統領と会談する。
イランといえば、北朝鮮にミサイル技術を提供しているはずだが、まあこのレベルで核兵器の詳細が議論されるとは思わない。それにしても、金永南氏は大したものだ。あの国で粛清されないとは、それだけで偉大である。

〇南北アメリカ
過去3カ月の中国・北朝鮮関連のトランプ氏発言は右往左往した。
習氏はとても良い人で、何かしたいようだが、できない可能性もある(4月27日)、北朝鮮は中国や尊敬すべき習近平国家主席の思いに敬意を払わない(4月28日)、習氏は友人だが、北朝鮮でもう少しやってくれるはず、様子を見たい(7月14日)、中国には大いに失望、喋るだけで何もしない、このままでは許さない(7月30日)。
中国については「友人」から「失望」に180度変わった訳だが、これで本当に外交になるのか。ホワイトハウスの首席補佐官が元軍人に交代するが、これを機に、トランプさん、こんな発言はもう止めて、もっと仕事をしたらどうですか。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

24日-8月2日 武井外務大臣政務官が米国、カナダ、パナマ及びホンジュラスを訪問
25日-8月3日 対日理解促進交流プログラムJENESYS2017で韓国青年訪日団が訪日
27日-8月4日 アブラアム国際司法裁判所所長が訪日
30日-8月2日 ペンス・米副大統領がエストニア、ジョージア、モンテネグロを訪問
30日-8月5日 ビデガライ・メキシコ合衆国外務大臣が訪日
31日 外務省及び国土交通省がASEAN設立50周年記念シティ・ツアーを開催(東京)
31日 長征3B(航法測位衛星第3世代北斗2機)の打ち上げ(四川省・西昌衛星発射センター)
31日 中国製造業PMI発表(国家統計局)
31日 EU・6月失業率発表(EU統計局)
31日-8月11日「核兵器用核分裂性物質生産禁止条約」第1回ハイレベル準備会合(ジュネーブ)
31日-8月18日 国際海底機構(ISA)第23回総会(ジャマイカ・キングストン)
8月1日 ブラジル6月鉱工業生産指数発表
1日 4-6月期のユーロ圏GDP速報値(EU統計局)
1日 米国・6月個人所得、個人消費支出(PCE)発表(商務省)
2日 7月の消費動向調査発表(内閣府)
2日 地方創生支援のための外務大臣及び岡山県知事共催レセプションを開催(飯倉公館)
2日 ヴェガ(環境モニタリング衛星など)の打ち上げ(仏領ギアナ基地)
2-8日 第50回ASEAN外相会議(マニラ)
3日 アトラスV(データ中継衛星TDRS M)(ケープカナベラル空軍基地)
4日 6月の毎月勤労統計調査発表(厚労省)
4日 米国・6月貿易統計(商務省)、7月雇用統計発表(労働省)
4日 ルワンダ大統領選挙
4日か7日 ロシア7月消費者物価指数(CPI)発表
4-13日 陸上世界選手権(ロンドン)
5日 イラン新内閣発表
5日 モーリタニア国で改憲国民投票
6日 広島市原爆死没者慰霊式並びに平和記念式(広島市平和記念公園)
6-9日 カンボジア・フン・セン首相が日本を訪問

【来週の予定】
7-11日 第19回人権理事会諮問委員会(ジュネーブ)
8日 中国7月貿易統計発表
8日 ケニア大統領選・国民議会選挙
9日 長崎原爆犠牲者慰霊平和記念式典(長崎市平和公園ほか)
9日 中国7月消費者物価指数(CPI)発表
9日 ブラジル7月拡大消費者物価指数(IPCA)発表
9日 メキシコ7月消費者物価指数(CPI)発表
11日 米国7月消費者物価指数(CPI)(労働省)
11日 メキシコ6月鉱工業生産指数発表
11日 ロシア第2四半期GDP成長率(速報値)発表
11日 「みちびき3号機」(準天頂衛星)の打ち上げ(種子島宇宙センター)
11-13日 CRT(ココナッツ、ゴム、紅茶)国際展(コロンボ)
13日 西アフリカ経済通貨同盟(UEMOA)首脳会議(ベナン)
13-18日 ペンス・米副大統領をコロンビア、アルゼンチン、チリ、パナマを訪問


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問