外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2017年4月27日(木)

外交・安保カレンダー(4月24-29日)

[ 2017年外交・安保カレンダー ]


先週末の日曜日にフランス大統領選挙の投票があった。結果は、ある程度予測されていたこととはいえ、既存二大政党の敗北と二人のアウトサイダー候補の決選投票進出が決まったということ。気の早い連中は、5月7日の第二回投票でのマクロン候補の勝利をもう予測し始めている。

ルペンとメラションの一騎打ちとなれば反EU候補同士の決選投票となっていた。そんな最悪の事態だけは回避できたと安堵している人も多いというが、問題はそれに止まらない。既存政党の不甲斐なさは目を覆うばかり。39歳のマクロンが大統領になってもフランスの政治社会状況が改善するとは思えない。問題はポスト・マクロンだ。

以前から気になっていたことがある。ルペン候補が「極右」と呼ばれるのに対し、極端な左派のはずのメラション候補はなぜ「極左」ではなく、「急進左派」と呼ばれるのだろう。フランス語で使い分けているのか、それとも日本メディアに別の理由があるのか。英語の記事でもメラションをfar-leftと紹介する記事があった。それなら「極左」だろう。

アジアではやはり北朝鮮問題が焦点だ。25日は朝鮮人民軍創建日だから、今度こそ核実験かICBM発射があるのでは、と囁かれている。最悪の事態は北朝鮮が暴発し、トランプ氏が第二次朝鮮戦争を始めることだろうが、その可能性は低いだろう。むしろ気になるのは、北朝鮮の核実験やICBM発射があった場合の米国の対応だ。

下手な米国の軍事行動は全面戦争の引き金を引く可能性がある。されば、米国は「無為無策ではないが、戦争には絶対に至らない」ような強制力を伴う行動を適切にとれるのか。この対応はデリケートで決して容易ではない。強すぎても弱すぎても、米国は誤ったシグナルを北朝鮮に送ることになるからだ。何事もなければ良いのだが。

〇欧州・ロシア
既に触れた通り、23日の仏大統領選挙で極右候補と中道系独立候補が決選投票に進んだ。これでフランスのEU離脱は遠のき、独仏の枢軸も当面維持されるとの見通しが大勢となりつつある。しかし、これで欧州の政治危機が一段落し、各国で中道志向が強まると見るのは時期尚早ではなかろうか。

〇東アジア・大洋州
25日に東京で日米韓の六者会合首席代表会合が開催される。最近の北朝鮮情勢や日米韓の連携について議論する予定だが、このタイミングは絶妙だ。しかし、今更六者会合なのか。六者会合は中国抜きの北朝鮮問題協議を封ずるという、北京にとって最も有利な会議だ。これに戻っても展望は開けないだろう。

〇中東・アフリカ
25-26日、イラン国防相がロシアを訪問する。26-27日にモスクワで国際安全保障フォーラムが開催されるのでこれにも参加するのだろう。このフォーラム、2012年が最初で今回が6回目。「国際テロとの戦い」「欧州・アジア太平洋地域の安全保障」などが議論されるというが、日本からは誰が参加するのだろう。

〇南北アメリカ
25日、イヴァンカ・トランプ大統領補佐官がドイツを訪問する。W20サミットという女性リーダーの集まりに参加するのだそうだ。オランダ女王、IMF専務理事、カナダ外相、ドイツ家庭担当大臣等も参加する。あれだけネポティズムだと厳しく批判されたが、メラニア夫人の代役をやっていると思えば、それはそれで良いのかもしれない。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

4月21-24日 アブダッラー・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン アラブ首長国連邦外務・国際協力大臣が訪日
24日 2025年万博の大阪誘致に向け、大阪府知事らが事務局に立候補届け出(パリ)
24日 モゲリーニEU外相がロシアを訪問
24日か25日 ロシア3月雇用統計発表
24-25日 スペイン・ラホイ首相がブラジルを訪問
24-25日 米・ペンス副大統領がハワイ州を訪問
24-27日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
24-28日 国連人権理事会(ジュネーヴ)
24-28日 第156回国際連合食糧農業機関(FAO)理事会(ローマ)
24-5月12日 国際民間航空機関 第211回 Committee Phase(モントリオール)
25日 EU一般問題理事会(ルクセンブルク)
25日 香港3月貿易統計発表(香港)
25日 イヴァンカ米大統領補佐官がドイツを訪問(ベルリン)
25日 朝鮮人民軍創建85周年
25日 北朝鮮の核問題をめぐる日米韓の六者会合首席代表会合(東京)
25日 中国・ニュージーランド二国間のFTA格上げに向けて交渉開始(ウェリントン)
25-26日 EU環境相理事会非公式会合(バレッタ)
25-26日 イラン国防相がロシアを訪問
26日 トランプ米大統領が税制改革案を公表
26日 豪・第1四半期消費者物価指数の発表
26日 メキシコ2月小売・卸売販売指数発表
26日 欧州安全保障協力機構(OSCE)のザニエル事務総長がロシア訪問
26-27日 欧州議会本会議(ブリュッセル)
26-27日 国連欧州経済委員会(ジュネーヴ)
26-27日 日銀金融政策決定会合
26-27日 第6回モスクワ国際安全保障フォーラム
26-27日 EU防衛相理事会非公式会合(バレッタ)
26-29日 第30回ASEAN首脳会議(フィリピン・マニラ)
27日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(フランクフルト)
27日 米アルゼンチン首脳会談(ワシントン・ホワイトハウス)
27日 アフガニスタン・ガーニ大統領がインドを訪問
27日 メキシコ3月貿易統計発表
27日 経済・物価情勢の展望リポート公表(日銀)
27-5/5日 安倍首相がロシア、イギリス、北欧4カ国を訪問
27-28日 安倍首相がロシアを訪問し、首脳会談(ロシア・モスクワ)
28日 北朝鮮の非核化に関する国連安保理閣僚級会合(ニューヨーク)
28日 ブラジル3月全国家計サンプル調査発表
28日 米国第1四半期GDP(速報値)発表
28日 イギリス1~3月期GDP(速報値)発表
28日 ロシア中央銀行理事会
28-29日 EU外相理事会非公式会合(バレッタ)
28-29日 安倍首相がイギリスを訪問し首脳会談(ロンドン)
28-29日 ローマ法王がエジプトを訪問
29日 EU首脳会議でイギリス離脱交渉指針を採択(ブリュッセル)
30日 ジャパン・ハウス サンパウロの開館(ブラジル・サンパウロ)
30日 自動車F1ロシアGP決勝(ロシア・ソチ)


<5月>
5月1日 3月の米個人所得・消費(商務省)
1-12日 国際人権理事会(ジュネーヴ)
1-26日 国連総会第5委員会(ニューヨーク)
1-6月2日 第69回国連国際法委員会(ジュネーヴ)
2日 ドイツ・メルケル首相がロシア訪問
2-3日 米国連邦公開市場委員会(FOMC)
2-4日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
2-5日 第48回包括的核実験禁止条約機関準備委員会(ウィーン)
2日- 2020年核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議第1回準備委員会
3日 ユーロ圏第1四半期GDP速報値(EU統計局)
3日 ブラジル3月鉱工業生産指数発表
4日 米国3月貿易統計発表
4日 アルジェリア国民議会選挙(アルジェリア)
4-7日 アジア開発銀行(ADB)第50回年次総会(日本・横浜)
5日 米国4月雇用統計発表
5日 GSLV MK2ロケットの打ち上げ(インド・サティシュ・ダワン宇宙センター)
5日か10日 ロシア4月CPI発表
6日 ニウエ議員選挙 (ニウエ)


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問