キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2016年10月11日(火)
[ 2016年外交・安保カレンダー ]
米大統領選も遂に終盤戦に入った。9日には大統領候補による第二回テレビ討論会が開かれた。一回目討論会の結果については別のコラムに、アリvs猪木並みの凡戦であり、CNN世論調査など当てにならない。準備不足のトランプがスタイルを変えられず、準備万端のヒラリーに有権者の期待値を超える言動はなかった、などと書いた。
要するに、第一回は互角というより、両者とも既得支持層を超える得票拡大に失敗したということだ。では第二回目はどうだったか。第一回よりも更に酷い出来だったとしか言いようがない。米大統領選を追い始めて40年、これほどバラエティショーとしては出来が悪く、政治討論会としては低レベルの、TVイベントは見たことがない。
トランプ候補は、意味のない突っ込み、議論のすり替え、責任転嫁の開き直り、を繰り返すだけ。つまり、トランプはトランプのままなのだが、結局ヒラリーも泥仕合にのめり込んでいった。恐らく第三回目も似たり寄ったりだろうから、もう見る気もしなくなった。それでも、11月の投票日に何が起きるかについて予測できる自信は今もない。
〇南北アメリカ
筆者の個人的経験では、米国の無党派層が投票態度を決めるのは最後の一カ月間だ。今回は、トランプにもヒラリーにも疑念を抱く名もない庶民たちが、どちらの候補を「やむを得ない次善の選択」として選ぶか、言い替えれば、「どの程度の変化までなら許容できるか」が最終的に決め手となるだろう。常識的な結果になると良いが。
〇欧州・ロシア
10日にユーロ加盟国がギリシャの財政救済パッケージについて会合を持つ。次回ギリシャが受け取る額は28億ユーロだそうだ。こんなことを何時まで繰り返すのか。何時まで続くのかといえば、13日には、英国EU離脱プロセスを開始するために英政府が議会承認を必要とするか否かにつき英国の高等法院が審議を始めるそうだ。
〇東アジア・大洋州
10日には北朝鮮労働党が建党71周年を祝う。再びミサイル発射や核実験を実施するのではないかとの噂が絶えないが、筆者は何も起きなくても全く驚かない。北朝鮮は建党記念日に合わせて戦略核ミサイル部隊を作っているのではなく、その核開発計画の節目がたまたま●●記念日の前後だったにすぎないと思うからだ。
13日に日本の外務次官が訪露する。12月のロシア大統領訪日準備の一環だろうが、噂される解散総選挙の日程も絡むので大いに注目したい。また、同日からは中国国家主席は就任後初めてカンボジアを訪問するという。これまで訪問がなかったということは、中国にとってカンボジアの優先順位が低いということだろう。
〇中東・アフリカ
10日にロシア大統領がトルコを訪問する。一時はロシア軍機撃墜事件で険悪化した両国関係だったが、トルコ側の譲歩で正常化された経緯がある。今回のトルコ訪問はロシア側も両国関係の現状を評価している証拠だろう。個人的にはシリアの将来について両首脳が何を話すのかに強い関心がある。
12-13日にはイラク・クルド自治政府大統領がイランを訪問する。この動きもシリア問題の将来を見る上では見逃せない。13日にはイスタンブールで世界エネルギー会議が開かれ、OPECと非OPEC諸国の関係者が集まる。今後の原油価格を占う上でも注目すべきだろう。
〇インド亜大陸
15-16日にインドでBRICS首脳会議が開かれる。BRICSが注目されたのは一昔前の話。今は経済的苦境にある国が多いのだが、今回の首脳会議では一体何が議論されるのだろうか。今週はこのくらいにしておこう。
10月10日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ルクセンブルク)
10日 ロシアのプーチン大統領がトルコを訪問
10-11日 EU農水相理事会(ルクセンブルク)
10-12日 シンガポールのトニー・タン大統領がノルウェーを訪問
10-14日 World Culture Forum 2016(インドネシア・バリ)
10-14日 欧州議会委員会会議(ベルギー・ブリュッセル)
10-15日 ベルギー王国のフィリップ国王陛下及び同王妃陛下が訪日
11日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ルクセンブルク)
11日 ケンブリッジ公爵夫人が社会問題について話し合うためオランダを訪問(ロッテルダム)
11-12日 イスラエル贖罪(しょくざい)の日(ヨム・キプール)
11、13日 WTO、韓国に関する貿易政策レビュー(スイス・ジュネーブ)
11-14日 北方四島周辺水域における日本漁船の操業に関する協定に基づく政府間協議及び民間交渉の開催(ロシア・モスクワ)
12日 メキシコ8月鉱工業生産指数発表
12-13日 世界輸出開発フォーラム(スリランカ・コロンボ)
12-14日 メディク西アフリカ(ヘルスケア関連展示会・学会)(ナイジェリア・ラゴス)
12-19日 JENESYS2.0 中国各民族青年友好交流団の訪日(テーマ:民族・文化)
13日 EU雇用・社会政策・健康・消費者問題担当相理事会(ルクセンブルク)
13日 中国第3四半期貿易統計発表
13-14日 EU司法・内務相理事会(ルクセンブルク)
13-15日 フランチャイジング&ライセンシング・アジア2016(シンガポール)
13-16日 香港エレクトロニクス・フェア(秋)(香港)
13-16日 エレクトロニック・アジア(electronicAsia)(香港)
14日 中国9月CPI発表
14日 米国9月小売売上高統計発表
14-15日 第23回APEC財務相会合(ペルー・リマ)
14-15日 チェコ上院選挙(決選投票)
15日 オーストラリア首都特別地域議会選挙
15日 アフガニスタン下院選挙
15-16日 BRICSサミット(インド・ゴア)
15-16日 EU一般問題理事会(ベルギー・ブリュッセル)
15-19日 ポルトガルのソウザ大統領がスイスを訪問
16日 モンテネグロ議会選挙
16日 インド8月鉱工業生産指数発表
16日 新潟県知事選挙
16-20日 情報通信技術展示会(GITEX 2016)(ドバイ)
16-24日 イスラエル仮庵(かりいお)祭(スコット)
【来週の予定】
10月17日 EU環境相理事会(ルクセンブルク)
17日 ユーロスタット、9月CPI発表
17日 EU外相理事会(ルクセンブルク)
17日か18日 ロシア1~9月鉱工業生産指数発表
17日-11月4日 第118回自由権規約委員会(スイス・ジュネーブ)
18日 EU一般問題理事会(ルクセンブルク)
18日 ブラジル8月月間小売り調査発表
18日 米国9月CPI発表
18-19日 ブラジル中銀、Copom
19日 米第3回大統領候補者討論会(ネバダ州ラスベガス)
19日 中国第3四半期マクロ経済統計(GDP、CPI、固定資産投資、社会消費品小売総額など)発表
19日 南ア9月CPI発表
19日 ISS第49次/第50次長期滞在ミッションのためソユーズMS-02を打ち上げ(カザフスタン・バイコヌール)
20日 南ア8月自動車製造・販売統計発表
20日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)(ドイツ・フランクフルト)
20日-11月18日 第14期第2回ベトナム国会
20日か21日 ロシア1~8月貿易統計発表
20-21日 欧州理事会(ベルギー・ブリュッセル)
20-22日 カムフード・カムホテル・アグリライブストック2016(カンボジア・プノンペン) ※異なるテーマの小規模の展示会が同時開催(食品・ホテル・農畜産)
21日か24日 ロシア9月雇用統計発表
21-24日 ゲーム展示会「アルマゲドンエキスポ」(ニュージーランド・オークランド)
23日 岡山県知事選挙
23日 チリ統一地方選挙
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問