キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2016年9月13日(火)
[ 2016年外交・安保カレンダー ]
今週の注目は何と言っても、北朝鮮の核実験強行だろう。これまではほぼ三年に一度の頻度だったが、今回の実験は前回から8カ月しか経っていない。このタイミングに驚いた専門家は少なくなかった。9月9日09時のゾロ目に注目する識者もいる。しかし、筆者はむしろ、北朝鮮の声明が言及した「戦略核兵器部隊」に興味がある。
夏祭りの打ち上げ花火じゃあるまいし、北朝鮮は建国記念日のため核実験を続けているのではない。同国は1990年代から一貫して「戦略兵器」、すなわち「国家の生き残りのための核ミサイル」の開発を目指してきた。今回も、核兵器開発のスケジュールが、運良く、建国記念日に間に合ったに過ぎないと見るべきだろう。
今回の実験の真の恐ろしさは、北朝鮮が従来の非難声明、経済制裁やその延長上の措置では方針を変えそうもないことが明確になったことだ。中国は北朝鮮の生命維持装置を外す気がないし、韓国も本気で北朝鮮の核開発を武力で阻止するつもりなどない。米国だって、北の南進でもない限り、北朝鮮問題には軍事介入しないだろう。
〇欧州・ロシア
16日に非公式EU首脳会議がスロバキヤの首都で開かれるが、何故か、というよりも当然ながら、英国は参加しない。17日にはドイツで大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定(Transatlantic Trade and Investment Partnership、TTIP)に反対するデモが開かれる。これだけ見ても欧州の混乱は当面続きそうだ。
〇東アジア・大洋州
北朝鮮の核実験に関する本邦各紙の社説はどれも似たり寄ったり。暴走阻む抑止力強化を(産経)、暴走脅威に冷静対処を(讀賣)、体制脅かす強い制裁を(日経)、自らを窮地に導く暴挙(朝日)、国際包囲網もっと強く(毎日)、核武装は断固許さない(東京)・・・。どの新聞も戦争を恐れてか、最終究極の手段については沈黙している。
これは典型的な「宥和政策」なのだが、古今東西、宥和政策だけで敵対者の邪悪な意図を翻意させることは出来なかった。武力による解決しかないなどと言うつもりはない。中国が北朝鮮を緩衝国として維持する限りは、武力による解決もあり得るという強いメッセージなしに、宥和政策だけで北朝鮮の核開発を止めることは不可能に近いだろう。
〇中東・アフリカ
12日はイスラム暦でイード・アル=アドハーに当たる。イードとは祝祭日で、アドハーは犠牲を意味する。アブラハムが息子イシュマエルを神に犠牲として捧げた聖書の記述にちなんだもので、この日がハッジ(巡礼)の最終日となる。こんな日にテロが起きないことを祈る必要があるなんて、一体誰が想像し得ただろう?
〇アメリカ両大陸
ヒラリー候補が9月11日ニューヨークで「倒れた(?)」という。原因は肺炎らしいが、これでまた大統領選挙は増々混沌としてきたと米メディアは報じている。さてどうか、ヒラリー陣営が本当のところを明かすとは思えない。一方、米国の大統領選挙は世界一激務だから、誰だって一時的に疲れが出ても不思議はない。ご苦労様なことだ。
13日には国連総会が始まる。14-15日にはミャンマーのアウンサンスーチー外相・大統領府相・国家顧問が訪米する。それにしても、彼女は外相等でありながら、事実上の国家指導者だそうだ。こんな不健全なねじれ体制は一刻も早く解消すべきだろう。これが長く続けば、ミャンマーの政治改革も一層難しくなるだけだ。
〇インド亜大陸
12日にアフガニスタン大統領が、15日からはネパール首相がそれぞれ訪印する。今週はこのくらいにしておこう。
9月12日 インド7月鉱工業生産指数発表
12日 仏のオランド大統領がルーマニアを訪問
12-16日 欧州議会本会議(ストラスブール)
12-16日 欧州議会委員会会議(ストラスブール)
13日 ブラジル7月月間小売り調査結果発表
13日 中国8月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
13日 EU農水相理事会(スロバキア・ブラチスラバ)
13-14日 EU農水相理事会(ブラチスラバ)
13-18日 非同盟諸国首脳会議(ベネズエラ・マルガリータ島)
13-19日 稲田防衛相がワシントン(米国)、ナイロビ(ケニア)、南スーダンを訪問
13-20日 第71回国連総会(ニューヨーク)
13-30日 第33回国連人権理事会(ジュネーブ)
14-16日 韓国秋夕(旧盆)休暇
14-16日 第2回レギュラーセッション国連児童基金執行理事会(ニューヨーク)
15日 米国8月小売売上高統計発表
15日 CIS外相会議(キルギス・ビシケク)
15日 ユーロスタット、8月CPI発表
15日か16日 ロシア1~8月鉱工業生産指数発表
15-17日 中国中秋節休暇
15-18日 フィリピン建築・建設展示会(Philippine Building & Construction Exposition)(セブ)
16日 米国8月CPI発表
16日 CIS首脳会議(キルギス)
16日 ロシア中銀理事会
16日 欧州理事会〔ブラチスラバ(英国を除くEU27ヵ国)〕
16-18日 第14回ケニア国際トレードショー(ケニア・ナイロビ)
18日 ロシア下院選挙
【来週の予定】
9月19-23日 IAEA理事会(ウィーン)
19-25日 コロンボ国際ブックフェア
20日 ヨルダン下院選挙
20日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
20日か21日 ロシア1~7月貿易統計発表
20-21日 米国FOMC
21日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(フランクフルト)
21-24日 ベトナム医療設備・薬品・健康食品展(PHARMEDI2016)(ホーチミン)
22日 ECB一般理事会(フランクフルト)
22-23日 EU外相理事会(ブラチスラバ)
23日 メキシコ7月小売・卸売販売指数発表
23日 ISS第49次/第50次長期滞在ミッションのためソユーズMS-02を打ち上げ(カザフスタン・バイコヌール)
23日か26日 ロシア8月雇用統計発表
24日 アジア貿易振興フォーラム(ATPF)CEO会議(ラホール)
24-25日 G7交通相会合(長野県軽井沢町)
24-29日 DLDテルアビブ国際イノベーション見本市(イスラエル・テルアビブ)
25日 スイス国民投票
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問