外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2016年8月23日(火)

外交・安保カレンダー(8月22-28日)

[ 2016年外交・安保カレンダー ]


リオ・オリンピックが終わって8月も下旬となり、国際政治が再起動しそうなのだが、今週最も気になるのは欧州情勢だ。EU離脱の是非を問う国民投票が英国で実施されたのは6月23日。あれから二カ月、件のBrexit騒動はどうなったか。当時はフランスやイタリアでの反EUの動きも懸念されたが、あの話は一体どうなったのだろう。

実は、どちらも全く解決していない。あれだけ問題だと叫ばれていたのに、欧州はさっさと夏休みに入ってしまう。この精神的「余裕」には脱帽するばかりだが、筆者が特に気になるのはイタリアの状況だ。今レンツィ政権は、上院の権限を大幅に縮小する一方、下院には新たな投票方式を導入する一連の政治改革案を提唱している。

改正選挙法では、下院議員選挙で40%を得た政党に下院議席の54%が割り当てられる。また、現政権は、上院議員数を3分の1以下に削減し、予算承認権や内閣不信任権を剥奪するなど、上院の国政関与を制限する憲法改正案も検討中だ。レンツィ首相はこれらを「イタリアの政治的安定性を確保する」ための改革だと説明している。

憲法改正の是非を問う国民投票は本年10月以降にも実施される。当初レンツィ首相には勝算があったのだろうが、今や野党側、特に排外ナショナリズム傾向の強い「五つ星運動」などが優勢とも伝えられ、こうした勢力が下院で主導権を握る可能性すらあるという。英国のキャメロン首相と同じ誤りを犯しかねないということか。

今懸念されているのはレンツィ首相がこの国民投票に破れる可能性だ。同首相は国民投票前イタリアに減税と財政支出増を認めるようEU各国に働きかけているが、果たしてうまく行くだろうか。この政治的賭けに失敗すれば、レンツィ内閣退陣だけでなく、イタリア全体の政情不安が懸念される。今年後半は仏伊が要注意のようだ。


〇欧州・ロシア 
レンツィ首相が22日に独仏首脳と、31日には再び独首相と、それぞれ会談する理由は既に述べた。欧州ではかくも懸案が山積みのはずなのに、休暇は仕事より大事なのだろうか。ちなみに、独首相は26-27日にポーランド、オランダ、スウェーデンなど9カ国の首脳と会談する。同時期にジュネーブで米露外相会談も開かれる。

〇東アジア・大洋州
24日に日中韓三カ国外相会談が開かれることが、22日漸く発表された。日中は尖閣、日韓は慰安婦、中韓はTHAADと、問題は目白押しだから、今回は一連の会談開催だけで良しとしなければならないかも。22日から恒例の米韓合同軍事演習が行われる。当然、北朝鮮は反発しているが、彼らの出来ることには限りがある。

〇中東・アフリカ
米国が精力的に動き出した。23日からは司法省高官をトルコに派遣、ギュレン師の「引き渡し」について議論する。24-25日にはケリー国務長官がGCCの外相らと会談するためジェッダを訪問するが、議題はシリアとイエメンらしい。前述の通り、ケリー長官はこの後ロシア外相との会談を予定しているが、劇的な進展があるとは思えない。

〇アメリカ両大陸
トランプ陣営でまた選挙戦責任者が交代した。この時期のこうした人事は普通ならその陣営の「負け戦」の証明なのだが、今年はどうだろうか。それにしても、最近のトランプには精彩がない。「紙を読む」トランプは退屈だし、「即興で喋る」トランプは危なっかしいのだが、つい「怖いもの見たさ」で聞いてしまう。こんなこと、いつまで続くのか。

〇インド亜大陸 
22日から米空軍省長官が訪印する。同長官はその後インドネシア、シンガポール、フィリピンを訪問する。米外交は実に判り易くて良い。今週はこのくらいにしておこう。

8月22日 メキシコ第2四半期GDP発表
22日 メルケル独首相、オランド仏大統領、レンツィ伊首相、トゥスクEU大統領が会談
22-23日 小田原外務大臣政務官が国連安全保障理事会公開討論に出席のため米国を訪問
22-26日 平成28年度日中韓ユース・サミット(東京都及び石川県)
22-10月14日 「アフリカ施設部隊早期展開プロジェクト:ARDEC」2016年第2回訓練(ケニア・ナイロビ)
23日 ノルウェーのソールベルグ首相がスロバキアを訪問
23日 メキシコ6月小売・卸売販売指数発表
23日 外務省がセミナー「メガFTA時代と日本企業」を開催(神戸)
23日か24日 ロシア7月雇用統計発表、上半期貿易統計発表
24日 南ア7月CPI発表
24日 ブルガリアのボリソフ首相がトルコを訪問
24日 ポーランドのドゥダ大統領がウクライナ独立25周年祭中にキエフを訪問
25日 香港7月貿易統計発表
25-27日 米カンザスシティー地区連銀主催の経済シンポジウム(ワイオミング州ジャクソンホール)
26日 メキシコ7月貿易統計発表
26日 米国第2四半期GDP(改定値)発表
26日 ロシア第1四半期外国直接投資統計発表
26日 日露平和条約締結交渉
26-29日 カンボジア国際機械工学展&カンボジア繊維産業展(プノンペン)
27日 オーストラリア北部準州総選挙
27日 ガボン大統領選挙
27-28日 第6回アフリカ開発会議(ナイロビ)
28-30日 春のギフト&ホームウエア・フェア(オークランド)

【来週の予定】
8月29日 エストニア大統領選挙(国会で選出)
29日 メキシコ7月雇用統計発表
30日 ブラジル7月全国家計サンプル調査発表
30-31日 ブラジル中銀、Copom
31日 ユーロスタット、7月失業率発表
31日 ブラジル第2四半期GDP発表
31日 南ア第1四半期金融統計発表
31日 国連安全保障理事会開催
下旬 シンガポール首相独立記念集会(ナショナルデー・ラリー)演説
下旬 中国の王毅外交部長が日本を訪問(予定)
8月中 南部アフリカ開発共同体(SADC)サミット(スワジランド)
8月中 アジア中南米協力フォーラム(FEALAC)高級事務レベル会合(グアテマラ)

9月1日 韓国通常国会開会
1-4日 アジアの食と飲料の展示会(Food and Drinks Asia)(マニラ)
2日 米国7月貿易統計発表、8月雇用統計発表
1-18日 生活雑貨見本市「Feria del Hogar 2016」(コロンビア・ボゴタ)(ジェトロがジャパンブースを設置)
2日 ブラジル7月鉱工業生産指数発表
2-3日 東方経済フォーラム(ロシア・ウラジオストク)
4日 香港立法会選挙(香港)
4-5日 G20首脳会議(中国・杭州市)


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問