キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2016年3月22日(火)
[ 2016年外交・安保カレンダー ]
今週のコラムは沖縄の那覇空港内で書いている。19日から3日間、沖縄本島中部のブセナで開かれたG1(ジーワン)サミットという興味深い会合に参加したのだ。サミットといっても、G7のような国際会議ではなく、参加者はあくまで日本人が中心。
日本国内の「政治・経済・ビジネス・科学技術・文化など様々な分野の第一線で活躍する同世代異業種の仲間が、互いに学び、立場を超えて議論し、・・・リーダーとして参加者自身も周囲も成長していくこと」を趣旨とする非公式の集まりだ。
今回G1サミットの様々な会合に参加し、(失礼ながら)日本の若手政治家、経営者も捨てたものではないと実感した。悲しいかな、筆者自身は参加者の中では「長老組」の一人になり果てていたのだが・・・。
これらエネルギー溢れる日本の若い(といっても4-50代中心だが)世代の時代が来るのはいつのことだろうか。参加した米国人の友人が、「日本は年寄りが頑張っているので、日本の若者も大変だなぁ」と述べていたのが印象に残った。
一方、筆者が沖縄でこのような知的贅沢を堪能している間も、世界は大きく動いている。筆者が一番気になるのはやはり中東情勢だ。最近あの地域では良いニュースを聞いたことがないのだから。
〇中東・アフリカ
先週末イスタンブールの繁華街でまた自爆攻撃が発生した。トルコ内相は自爆攻撃実行犯が過激派組織「イスラム国」(IS)のメンバーであるトルコ人男性だと発表。トルコ国内でこの種のテロは今年既に4度目。イスラエル政府は死亡者の内3人が同国民であることを確認し、トルコ当局は残る1人がイラン人だと発表しているそうだ。
何と奇妙な組み合わせか。トルコでのISテロの犠牲者がユダヤ系とペルシャ系とは。果たして偶然なのか。今のトルコ情勢は(トルコ帝国再興の)「生みの苦しみ」か、それとも(オスマン朝の)「最終崩壊の始まり」なのか、後世の歴史家はどう書くのだろう。
〇アメリカ両大陸
今週、大統領選関連コメントは小休止。21日からオバマ大統領がキューバを訪問する。一体この訪問のどこが歴史的偉業なのか、理解に苦しむ。ハバナに行く時間があるぐらいなら、シリアを何とかしてほしいと思う。
トルコの混乱も「シリアの内戦」と「イラクの混乱」を抜きには語れない。そのシリア内戦を事実上黙認したのは、他ならぬオバマ政権ではなかったのか。22日に米国務長官はシリア問題でモスクワを訪問するというが、一体どうなることやら。
〇欧州・ロシア
欧州はイースター(今年は3月27日)が近づき、仕事どころではない。ちなみにこのイースター、日本では一般に「復活祭」と呼ばれるが、日付は毎年変わる。イースターは「春分の日の後の最初の満月から数えて最初の日曜日」と決まっているからだ。
グレゴリオ暦を採用する西方教会では2016年は3月27日、ユリウス暦の東方教会では2016年は5月1日となる。だからだろうか、この聖なる週にケリー長官がロシアに行く。これ自体に違和感を感じる。やはり、今の米露関係はロシアのペースのようだ。
〇東アジア・大洋州
このところ中国で国有企業などで賃金未払いに抗議するデモが相次いでいる。最近も陝西省で国有石炭企業従業員200人が給料数か月分の支払いを求めデモを行ったのに対し、警察が参加者を殴るなど力で弾圧しているという。
相変わらずだが、最近は映像や写真が「ウェイボー」に投稿される。ネット上で政府批判が拡大するか否かはちょっと気になる。それにしても、国有石炭企業の経営はそれほど酷いのか。こんな状態で業界再編や構造改革など本当にできるのだろうか。
〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。
3月21日 米大統領がラウル・カストロ国家評議会議長と会談
21日か22日 ロシア1月貿易統計発表
21-22日 第4回アフリカCEOフォーラム(コートジボワール・アビジャン)
21-22日 米大統領がキューバ訪問
21-23日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
21-24日 山田美樹外務大臣政務官がサウジアラビア、オマーン訪問
22日 米大統領予備選挙(アリゾナ、ユタ州)
22日 米国民主党党員集会(アイダホ州)
22日 WTO物品貿易理事会(ジュネーブ)
22-25日 セネガル「SIAGRO(食品加工)」見本市
22-26日 日ロ漁業合同委員会第32回会議及びロシア連邦の200海里水域における日本国の漁船によるロシア系さけ・ますの2016年における漁獲に関する日ロ政府間協議(日ロさけ・ます漁業交渉)(東京)
22-27日 パラグアイ共和国外相が訪日
23日 ブラジル2月月間雇用調査発表
23日 コロンビア政府とコロンビア革命軍(FARC)の最終的和平合意期限
23日 ドイツ外相、ロシア訪問
23日か24日 ロシア2月雇用統計発表
23-24日 米大統領がアルゼンチン訪問
23-24日 米国務長官、ロシア訪問
23日-4月3日 ニューヨーク国際自動車ショー
24日 ユーロ圏3月PMI(速報値)
24日 ECB経済報告
24日 旧ユーゴ国際刑事裁判所(ICTY)でカラジッチ被告に判決
25日 米国2015年第4四半期、年間GDP発表(確定値)
25日 能登半島地震から9年
25-26日 イラン大統領がパキスタン訪問
25-27日 マイ・カラチ・エキシビション(カラチ)
26日 米国共和党党員集会(アラスカ、ハワイ州)
26日 米国民主党党員集会(ワシントン州)
26日 台湾国民党主席選挙
26日 北海道新幹線開業
26-27日 EU競争担当相理事会(ブリュッセル)
27日 熊本県知事選投開票
27-31日 ジンバブエ共和国大統領が訪日
【来週の予定】
28日 米2月個人所得・消費
28-29日 中国国家主席がチェコ訪問
29日-4月21日 障害者権利委員会第15回会期(ジュネーヴ)
30日 ニュージーランド国旗最終決定
30-31日 EU教育・若年・文化・スポーツ相理事会(ブリュッセル)
30日-4月2日 マレーシア国際ハラール展示会(MIHAS)2015(クアラルンプール)
31日 ベナン大統領選(第2ラウンド)(日程未定)
31日-4月1日 核安全保障サミット(ワシントン)
中旬 ブラジル1月月間小売り調査発表
下旬 ブラジル2月月間雇用調査発表
下旬 インドのモディ首相、EUサミット出席のためベルギー訪問
3月末 第13期第11回ベトナム国会
3月末 ギニア地方選挙
3月末 ミャンマー新政権発足
3月末 アゼルバイジャンのアリエフ大統領が米国訪問
3月中 ウクライナのポロシェンコ大統領が米国訪問
3月中 エジプトのシシ大統領がアゼルバイジャン訪問
3月中 パレスチナのアッバス議長がロシア訪問
3月中 インド1月卸売物価指数、CPI、鉱工業生産指数発表
3月中 スリランカのシリセナ大統領、バングラデシュ公式訪問
3月中 ラオス第8期国民議会議員選挙
3月中 共和党大統領候補者討論会(場所未定)
4月1日 米国3月雇用統計発表
1日 ブラジル2月鉱工業生産指数発表
1日か4日 ロシア2015年経済活動別・需要項目別GDP統計発表
1-4日 ASEAN財務相会合(ラオス・ビエンチャン)
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問