キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2015年6月30日(火)
[ 2015年外交・安保カレンダー ]
先週末から日本マスコミはトップニュースで女子サッカー・ワールドカップ、自民若手勉強会での「報道圧力」発言や新安保法案の行方を報じていた。その間、欧米マスコミはチュニジア、フランス、クウェートでの同時テロ事件やギリシャ債務不履行問題で大騒ぎ。このギャップ、如何ともし難いのか。どちらが良い・悪いの問題ではないが・・・。
チュニジアのリゾートでの銃乱射事件で同国の観光産業は致命的打撃を受ける恐れがある。フランスでの斬首事件は個人的恨みが原因かもしれない。むしろ、クウェートのシーア派モスク攻撃の方が深刻だ。湾岸地域でシーア派施設が狙われ始めたのだとしたら、今後もこの種の事件は続くだろう。
〇欧州・ロシア
29日に中国とEUの首脳会議がある。EU-China 2020 Strategic Agenda for Cooperationの実施状況を話し合うという。そもそも欧州は中国との政治的懸案がないので、経済に専念できる。これに対し、日米は東アジアの主要政治勢力であり、欧州のような態度はとれない。
30日にはギリシャの対IMF債務(15億ユーロ以上)が期限を迎える。それにしてもギリシャ政府の態度は異常だ。この時点で国民投票をやるなんて、責任転嫁も甚だしい。EU側の堪忍袋の緒は切れつつある一方、ギリシャを破綻させる訳にもいかない。来週も、救済でも破綻でもない状態が続くのではないか。
〇東アジア・大洋州
29日、アジアインフラ投資銀行(AIIB)設立協定の調印式が開かれたが、フィリピン、マレーシア、タイを含む7か国が国内手続きの遅れなどを理由に設立協定への署名を見送ったそうだ。他人事ながら気になるところだが、お手並み拝見で良いだろう。
7月4日は北朝鮮による日本人拉致被害者らの再調査開始一周年だが、何かが動いているようには見えない。また、北朝鮮にやられた、ということなのか。そうだとしたら、彼らは一体いつまでこんなことを続けるのだろう。
〇中東・アフリカ
モルシ前大統領の就任から三周年の30日にエジプトの反政府勢力が大規模な抗議活動を行うという。その前日には同国の検事総長に対する暗殺未遂事件もあった。チュニジアで起きたことはエジプトでも起こり得る。いずれも観光立国だが、観光ほどテロに対し脆弱な産業はないからだ。
7月1日にイラン核問題に関する最終合意の期限が来る。枠組み合意ですらできないのに、最終合意もないだろうが、オバマ政権は努力を続けるしかないのだろう。イスラエルやサウジだけでなく、オバマ政権内にも異論が絶えないと聞く。当面は期限延長で誤魔化すしかないだろうが、いずれこの問題には運命の日が来るはずだ。
〇アメリカ両大陸
30日にブラジル大統領が訪米する。元々は2013年10月訪米予定だったが、米国家安全保障局(NSA)によるブラジルでの通信傍受が発覚し中止されていた。1年8か月ぶりの大統領訪米で両国関係は修復に向かう可能性が出てきた。
〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。
6月29日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
29日 EU・中国首脳会議(ブリュッセル)
29日 アジアインフラ投資銀行(AIIB)設立協定署名式(北京)
29日 ブルンジ議会選
29日-7月1日 国連軍縮諮問委員会第64回会期(ニューヨーク)
29日-7月2日 欧州大使会議(外務省)
29日-7月3日 国際海事機関(IMO)第114回会期(ロンドン)
29日-7月3日 北朝鮮核問題で米国のソン・キム北朝鮮担当特別代表が韓国、日本訪問
29日-7月4日 シンガポール大統領、訪中
29日-7月16日 国連国際商取引法委員会第48回会期(ウィーン)
29日-7月24日 自由権規約人権委員会第114回会期(ジュネーブ)
30日 ユーロスタット、5月失業率、6月消費者物価指数発表
30日 ブラジル大統領訪米(ワシントン)
30日 米国輸出入銀行授権法失効
30日-7月1日 アフリカ鉄道会議・展示会「Africa Rail」(ヨハネスブルク)
30日-7月1日 アフリカ港湾会議「Africa Ports&Harbours」(ヨハネスブルク)
7月1日 ルクセンブルクがEU議長国に就任(2015年12月まで)
1日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(フランクフルト)
1日 イランとP5+1による核協議交渉期限
1日 日中民間緑化協力委員会第16回会合(東京)
1日 中国6月製造業PMI
1日か2日 ロシア第1四半期需要項目別GDP統計発表(速報値)
1-3日 ナノコリア2015(ソウル)
2日 米国6月雇用統計発表
2日 ECB議事録発表
2日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
2日 ブラジル5月鉱工業生産指数発表
2-3日 第10回太平洋同盟首脳会合および閣僚会合(ペルー・クスコ)
3日 ロシア無人補給船プログレス打ち上げ
4日 台湾で抗日戦勝70年の軍事パレード(台湾・新竹)
4日 日本・メコン地域諸国首脳会議(東京)
4日 北朝鮮による日本人拉致被害者らの再調査開始から1年
5日 群馬県知事選投開票
5日 ギリシャ、財政緊縮策の賛否を問う国民投票実施
【来週の予定】
6日か7日 ロシア6月CPI発表
6、8日 EUに関するWTO加盟国通商政策レビュー(ジュネーブ)
6-9日 ファッションウイーク(春/夏)(香港)
6-9日 欧州議会本会議、委員会会議(ストラスブール)
6-24日 国連女性差別撤廃員会第61回会期(ジュネーブ)
6日-8月7日 国連国際法委員会第67回会期第二部(ジュネーブ)
7日 米国5月貿易統計発表
7日 ギリシャ大統領、ドイツ訪問
7-8日 インドのモディ首相がカザフスタン訪問
8日 ブラジル6月IPCA発表
8-9日 EU地域委員会第113回本会議(ブリュッセル)
9日 中国6月CPI発表
9日 第7回BRICS首脳会議(ロシア・ウファ)
10日 上海協力機構首脳会議(ウファ)
10日 インド5月鉱工業生産指数発表
11日 インド・モディ首相がトルクメニスタン訪問
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問