キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2015年6月9日(火)
[ 2015年外交・安保カレンダー ]
今週は盛り沢山だ。まずはドイツでのG7首脳会議から。8日発表された首脳宣言では、「中国名指し」こそしなかったが、「東シナ海・南シナ海での緊張を懸念」するとともに、「平和的紛争解決、世界の海洋の自由利用の重要性」に言及した。
更に首脳宣言は、「威嚇、強制または武力の行使、大規模な埋め立てを含む現状の変更を試みるいかなる一方的行動にも強く反対」すると明記。誰が読んでも対象は中国だ。欧州諸国も理解が深まったようだから、ここら辺が落とし所だろう。
〇欧州・ロシア
同じくG7首脳宣言では、昨年のロシアによるクリミア併合を「違法」として非難、すべての当事者に本年2月の停戦合意尊重を求めるとともに、ロシアの対応次第では対露制裁の強化もあり得るとされた。相変わらず欧州の立ち位置は微妙だ。
対露政策ではドイツの「一歩後ろ」あたりが日本の適正な立ち位置だと思う。安倍首相のサミット・パーフォーマンスも板についてきた。G7との協調という戦略的枠組の中で、戦術的に対露対話を進める、というのが正しいアプローチではないか。
12日にはギリシャの対IMF返済と国債リファイナンスの期限が来る。6月だけでも15億ユーロ以上、7-8月は70億ユーロを超える巨額であり、救済されなければギリシャはデフォルトだ。遂にデフォルトのない事実上のデフォルトを考える時が来たのか。
そんな危機的状況の下でも、隣国イタリアでは9日にローマのタクシーが、11日にはピエモンテ州の鉄道が、それぞれストライキを計画している。同日はフランスの労働組合も教育改革反対のストを行うという。やはり、あの欧州は健在のようだ。
〇東アジア・大洋州
14-18日に韓国大統領が訪米する。国内ではMERSで大騒ぎだが、今回米国は彼女を如何にもてなすのか、大いに興味がある。もう一つ、あまり目立たないが11-15日に台湾の「文化大臣」が訪日する。政治以外の関係はどんどん深めるべきだろう。
〇中東・アフリカ
今週最大のニュースはトルコ総選挙で与党が過半数を割ったことだ。エルドアン「大統領」の権力拡大が嫌われたようだが、彼の手法はロシアのプーチン大統領と同じ。ということは、ロシアと異なり、トルコの民主主義はまだ健全ということか。
〇インド亜大陸〇アメリカ両大陸
今週は特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。
6月8日 中国5月貿易統計発表
8日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(ルクセンブルク)
8-9日 日豪印次官協議、第8回日・インド外務次官対話(ニューデリー)
8-11日 欧州議会本会議、委員会会議(ストラスブール)
8-12日 国連海洋法条約締約国会議第25回会期(ニューヨーク)
8-13日 東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉の第8回交渉会合(京都市)
9日 中国5月CPI発表
9日 ユーロ圏第1四半期GDP(改定値)
9-10日 「Connecting West Africa」〔西アフリカ情報通信技術(ICT)フォーラム〕(ダカール)
9-11日 ハラルフード・アジア、フード・テクノロジー・アジア(カラチ)
9-11日 障害者権利条約締約国会議第8回会期(ニューヨーク)
9-12日 スウェーデン雇用相、カナダ訪問
10日 ブラジル5月IPCA発表
10日 米5月財政収支
10日 財務省・IMF財政局・ADBI、国際フォーラム開催
10日 ロシア大統領、バチカン訪問
10-11日 EUとラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)の首脳会議(ブリュッセル)
10-13日 Fieldays/ニュージーランド最大の農業祭
10-13日 第7回釜山国際鉄道・物流産業展(韓国・釜山)
11日 中国5月固定資産投資、社会小売品販売総額発表
11日 米国5月小売売上高統計発表
11-12日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(ブリュッセル)
11-12日 タイ首相、シンガポール訪問
12日 インド4月鉱工業生産指数発表
12日 EU・メキシコサミット(ブリュッセル)
12-28日 第1回ヨーロッパ競技大会(アゼルバイジャン・バクー)
13-20日 北朝鮮職員・学者グループ、インドネシア訪問
14日 モルドバ地方選挙
14-15日 第25回アフリカ連合総会(ヨハネスブルク)
14-17日 韓国大統領、訪米
【来週の予定】
15日 ロシア中央銀行理事会
15日 韓国と北朝鮮の南北共同宣言から15年
15日 EU環境相理事会(ルクセンブルク)
15日 国連食糧農業機関理事会第152回会期(ローマ)
15日 コロンビア大統領選
15日 サブサハラアフリカ国際金融フォーラム(FIFAS)(アビジャン)
15日 キプロス大統領、イスラエル訪問
15日か16日 ロシア第1四半期経済活動別GDP統計発表(速報値)
15、17日 カナダに関するWTO加盟国通商政策レビュー(ジュネーブ)
15-16日 EU司法・内務相理事会(ルクセンブルク)
15-17日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
15日-7月3日 国連人権理事会第29回会期(ジュネーヴ)
16日 ブラジル4月月間小売り調査発表
16日 EU農水相理事会(ルクセンブルク)
16日か17日 ロシア1~5月鉱工業生産指数発表
16-17日 米国FOMC
16-18日 米ゲーム見本市E3(ロサンゼルス)
17日 ユーロスタット、5月CPI発表
17日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(フランクフルト)
18日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ルクセンブルク)
18日 ECB一般理事会(フランクフルト)
18日 米国5月CPI発表
18日 デンマーク議会選
18日 ラマダン(断食月)開始
18日 黒海経済協力機構外相理事会(モルドバ・キシニョフ)
18-19日 EU雇用・社会政策・健康・消費者問題担当相理事会(ルクセンブルク)
18-20日 サンクトペテルブルク国際経済フォーラム(ロシア・サンクトペテルブルク)
19日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ルクセンブルク)
20日 オーストラリア・クイーンズランド州総選挙
20-22日 中国端午節休暇
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問