キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2015年2月3日(火)
[ 2015年外交・安保カレンダー ]
「イスラム国」人質事件は名実ともに日本版の9.11となった。二人の同胞が中東アラブの地で散った。中東屋の筆者にとっては決して他人事ではない。改めてお二人に対し心から哀悼の意を表したい。
今後二人については様々なことが書かれるだろうが、いかなる理由があるにせよ、見知らぬ中東の地で一人、それも野蛮な外国人に殺害されるなんて、さぞ無念だったに違いない。今週は「イスラム国」の話が長くなってしまうことをご容赦願いしたい。
〇欧州・ロシア
今週欧州では欧州議会各種委員会・ミニ総会、欧州中央銀行理事会、欧州エネルギー大臣会議などが開かれるが、何といっても目玉はミュンヘン安保会議だろう。毎年2月上旬にミュンヘンで開かれる国際会議で70か国以上から政府の要人、軍や市民団体の代表者などが集まる、欧州安保分野では最も重要な国際会議の一つだ。ところで国会開催中の日本からは一体誰が出席するのだろう。
〇アメリカ両大陸
2月3-5日にアルゼンチン大統領が訪中する以外、あまり大きな動きはない。
〇東アジア・大洋州
2月5日に米国防省の東アジア担当次官補代理が中国側カウンターパートと防衛政策調整会合をワシントンで開く。2月6-9日には韓国の退役軍人大臣が訪日するとの英語情報がある。7-8日には中台両岸関係者が金門島で会談を行う。小さなニュースばかりだが、これがそれぞれの関係拡大につながるかどうかは未知数だ。個人的には8日からのタイ暫定首相訪日の方により関心がある。ここでは日本と米国で温度差の生じる可能性があるからだ。
〇インド亜大陸
今週はあまり大きな動きはない。
〇中東・アフリカ
先週東南アジアに出張したが、人質事件については「人命の関わる事件で取り得る具体的選択肢に詳しく言及することは無責任だから一切コメントしない」との立場を貫いた。真の理由はその時点で既に今回の悲劇的結果をある程度予測していたからだ。
申し訳ないことをしたが、仕方がない。人質生還について万一の望みがある限り、余計なことは言いたくなかったのだ。しかし、実際にはイスラム国がビデオを作り始めた段階で事件が最終段階に入ったことを覚悟すべきなのだろう。
イスラム国の戦略的目的は聖戦の継続とカリフ国家の樹立だ。そのために彼らはカネを取るか、ヒトを奪還するか、敵にショック・動揺を与えるかを適宜使い分けてきた。要するに、水面下の交渉が暗礁に乗り上げた時点でビデオを作り始めるのだろう。
この仮説が正しければ、イスラム国との話し合いの詳細を検証すること自体あまり意味はないかもしれない。不可能に近い条件を提示し、それが成就しなければ人質殺害を正当化する。こんな手法は野蛮人のやることだ。どうしても怒りが収まらない。今週はこのくらいにしておこう。
2月2日 EU欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
2日 オバマ米大統領、2016年度予算教書議会提出
2日 TPPに関する日米の農産品関税協議(ワシントン)
2-3日 ギリシャ財相、イギリス、フランス、イタリア歴訪
2-13日 強制失踪委員会第8回会期(ジュネーヴ)
2日-3月20日 大陸棚限界委員会第37回会期(ニューヨーク)
3日 ブラジル2014年12月鉱工業生産指数発表
3-4日 EU雇用・社会政策・健康・消費者問題担当相理事会(ブリュッセル)
4日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(フランクフルト)
4日 ヤルタ会談から70年
4-5日 米国務長官、ロシア、ウクライナ歴訪
4-6日 アジア風力発電博覧会2015(韓国・済州)
4-6日 SEMICON Korea 2015(ソウル)
4-13日 国連社会開発委員会第53回会期(ニューヨーク)
5日 ギリシャ新議会招集
5日 第2回EU・米国定例貿易会議(ブリュッセル)
5日 EU欧州議会委員会会議(ブリュッセル)、欧州委員会経済見通し発表
5日 連合15年春闘総決起集会(都内)
5-9日 インドネシア大統領、マレーシア、ブルネイ、フィリピン歴訪
5-15日 ベルリン国際映画祭
6日 米国2014年12月貿易統計発表、2015年1月雇用統計発表
6日 EUエネルギー担当相エネルギー同盟会議(ラトビア・リガ)
6-8日 ミュンヘン安全保障会議
7日 スロバキアで同性婚の是非を問う国民投票
7日 台湾立法委員補欠選
8日 1月の中国貿易統計
8日 タイのプラユット暫定首相来日
8日 グラミー賞授賞式(ロサンゼルス)
【来週の予定】
9日 EU外相理事会(ブリュッセル)
9-10日 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議(イスタンブール)
9-12日 欧州議会本会議(ストラスブール)
9-12日 アフリカ鉱業投資会議「マイニング・インダバ」(南ア・ケープタウン)
9-12日 トルコ大統領、コロンビア、キューバ、メキシコ歴訪
10日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
10日 1月の中国消費者物価指数(CPI)、卸売物価指数(PPI)
11日 ブラジル2014年12月月間小売り調査発表
12-13日 欧州理事会(ブリュッセル)
13日 米国1月小売売上高統計発表
13日 14年10-12月期のユーロ域内総生産速報値
14日 ナイジェリア大統領選、議会選
14-17日 ブラジルでカーニバル期間(全国)
15日 カンボジア農業センサス2013の最終報告
15日 自動車道路の安全性、農林業トラクターの安全性に関するEEU技術規則施行
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問