キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2014年12月16日(火)
[ 2014年外交・安保カレンダー ]
今週は17-18日に欧州理事会が開かれ、EU各国の首脳がブラッセルに集まるという。今年の締めくくりということか。同時期に、相変わらずイタリアでは労働組合のストライキが続く見込みだ。どうやら、今週も欧州情勢は異常なしである。キリスト教圏ではもうクリスマスモードに入っているからだ。
ところが、同じキリスト教圏のオーストアラリアでは、シドニーでイスラム過激派のテロ事件が発生した。犯人はイスラム過激派組織「イスラム国」の旗を持ってくることや、アボット豪首相と直接対話させることなどを要求しているという。希望的観測かも知れないが、どうもこの犯人はプロではない気がする。大事に至らなければ良いのだが。
こうなるとやはり今週の大きなニュースは日本での与党圧勝だろう。選挙が終わったので、今週は憂いなく今後の見通しを書こう。確かに、国内メディアの論調は割れた。野党に優しい各社はほとんど茫然自失の中で、安倍政権は「冷めた信任」を自覚せよとか、多数を背景に「白黒をつけるのではなく、丁寧に政策を遂行すべし」などと書いている。
これに対し、与党に優しい各社は「目指すべき道筋を明確にすべし」、「手にした推進力で難題を突破すべし」と論じる。いずれも立派な論調ではある。だが、結局のところ、政治は結果責任ではないか。「分裂する野党の虚を突いた戦術的巧みさ」などと分析してみても、結局選挙は、勝ちは勝ちであり、負けは負けである。
そもそも、負ける側は負ける理由があって負けたのではないのか。そのことは野党側自身が2009年の自民党について思ったことと同じだろう。集団的自衛権など外交安保分野での政策変更は今回の選挙で大きな争点となっておらず、今回の選挙で与党の政策が信任された訳ではないとの意見もある。
それでは問うが、野党側はそうした問題を前面に出して選挙を戦ったのではなかったのか。それだけ訴えても民意が動かなかったのは、野党側の反対論に有権者が与しなかったからではないのか。有権者は一部のマスコミが言うほど愚かではない。それどころか、彼らはもっと冷静に日本の政治を見ているのではないか。
その典型例が次世代の党の凋落だろう。選挙前の19議席がわずか2議席に止まったことは何を意味するのか。これまで内外リベラル系メディアは、やれ日本の民族主義の復活だ、右傾化だなどと批判していた。されば、彼らはこの結果をどう説明するのか。本当に民意が右傾化しているなら、Far-Rightの「次世代」が躍進して然るべきではないか。今週はこのくらいにしておこう。
12月15日 日英サイバー協議(ロンドン)
15日 米国務長官とイスラエル首相が会談(ローマ)
15日か16日 ロシア1~11月鉱工業生産指数発表
15-16日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
15-18日 欧州議会本会議(ストラスブール)、欧州議会委員会会議(ストラスブール)
15-19日 日・コロンビア経済連携協定(EPA)交渉第9回会合(東京)
15-19日 国際農業開発基金(IFAD)理事会(ローマ)
16日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
16日 第6回日・ニュージーランド会議(札幌)
16日 リベリア上院選
16、18日 米国に関するWTO加盟国通商政策レビュー(ジュネーブ)
16-17日 米国連邦公開市場委員会(FOMC)
16-17日 パキスタン貿易相、イラン訪問
17日 ギリシャ大統領選(第一回)
17日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(フランクフルト)
17日 EU環境相理事会(ブリュッセル)
17日 米国11月消費者物価指数(CPI)、FOMC結果発表、経済予測公表
17日 EU統計局(ユーロスタット)、11月消費者物価指数(CPI)発表
17日 欧州連合理事会常駐副代表委員会(Coreper I)(ブリュッセル)
17-18日 日エストニアサイバー協議(タリン)
17-18日 EU欧州基本権憲章に関する会議(ブリュッセル)
18日 ECB一般理事会(フランクフルト)
18日 ロシア大統領の内外記者会見(モスクワ)
18日 バングラデシュ大統領、インド訪問
18日か19日 ロシア1~10月貿易統計発表
18-19日 EU欧州理事会(ブリュッセル)
18-19日 平成26年度国際機関大使会議(外務省)
19日 ブラジル11月月間雇用調査発表
20日 東京駅開業100周年
21日 ウズベキスタン議会選挙
21日 チュニジア大統領選
【来週の予定】
22日か23日 ロシア11月雇用統計発表
23日 天皇陛下誕生日(81歳)
23日 米国第3四半期GDP発表
23-24日 エジプト大統領、中国訪問
24日 武器貿易条約が発効
26日 スマトラ沖地震・津波から10年
28日 クロアチア大統領選
29日か30日 ロシア第3四半期需要項目別GDP統計発表
上旬 中央経済工作会議(北京)
下旬 ベトナム・EU自由貿易協定(FTA)交渉終了予定
12月末 台湾統一地方選挙
12月末 アフガニスタンから北大西洋条約機構(NATO)軍が撤退予定
12月中 最高ユーラシア経済評議会(ロシア・モスクワ)
月内 韓国・ASEAN特別首脳会談(ソウル)
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問