キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2014年9月9日(火)
[ 2014年外交・安保カレンダー ]
今週の原稿はロンドンからの夜行便の中で書き始めている。英国で会った友人はスコットランド独立賛成派が過半数を超える可能性が出てきたと心配していた。案の定、羽田に着いた翌日には世論調査で初めて賛成派が2%リードしたと報じられた。
おかげで月曜日に英ポンドは急落、あーあ、高値で交換して損をした。スコットランド独立問題はそれほど重要なのか、と今更ながら実感する。それにしても、有権者はあくまでスコットランドの住民だけで、イングランドに住むスコッツ達に投票権はない。
変なシステムだが仕方がない。しかし、スコットランドが独立すれば大英連合王国の神通力は消え、英米の特別な関係にも影響が出る。なんだかんだ言っても、「米国が戦い、英国がこれを支援する」というのが従来の欧米社会のパターンだったからだ。
イングランドを毛嫌いするスコットランドが、英米の外交に茶々を入れ始めたらどうなるのか。スコットランドだけではない、こうした少数派の極端な民族主義は今や欧州各地で見られる現象だ。最近の欧州議会の極右政党の躍進とも軌を一にする話である。
冒頭の英国の友人は、仮にスコットランドが独立・離脱を決めても、一年半後に彼らは必ず後悔する、と吐き捨てるように言っていたが、果たしてどうなるか。もしかしたら、それは英国だけでなく、欧州全体の更なる地盤沈下の始まりなのかもしれない。
アジアでは米国のスーザン・ライスNSC補佐官が7-9日に訪中する。2か月前ワシントンの民主党の友人に「スーザンに利点があるとしたら何か?」と尋ねたら、笑いながら「longevity(長寿)」と答えていた。オバマとの付き合いが長いだけ、という意味だ。
ワシントンでライスはその程度の評価ということか。最近の主要外交課題でライスがNSC補佐官として何か重要な役割を果たしたという話は殆ど聞かない。オバマ政権とは実に不思議な政府である。今週はこのくらいにしておこう。
9月8日 欧州連合欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
8日 中国貿易収支発表(8月)
8-9日 岸田外相、ドイツ訪問
8-10日 米・ウクライナ軍が海上演習(黒海)
8-12日 日・コロンビア経済連携協定(EPA)交渉第7回会合(東京)
8-13日 第25回国際コーヒー会議(コロンビア・アルメニア市)
8-26日 国連人権理事会第27回会期(ジュネーヴ)
9日 8月7・8日の金融政策決定会合議事要旨発表
10-12日 世界経済フォーラム夏季会合(夏季ダボス会議)(中国・天津)
10-12日 欧州評議会議員会議議長、ノルウェー訪問
11日 8月の中国消費者物価指数(CPI)、卸売物価指数(PPI)発表
11-12日 アジア欧州会合(ASEM)第11回財務相会合(ミラノ)
11-18日 国際捕鯨委(IWC)総会(スロベニア・ポルトローシュ)
12日 米国8月小売売上高統計発表
12日 モントセラト(英自治領)議会選
12日 欧州連合財務相会合(ユーログループ)(ミラノ)
12日 ロシア中央銀行、金融政策決定会合(モスクワ)
12-13日 上海協力機構サミット(イラン)
13日 EU財務相理事会
13-24日 フィリピン大統領、米、EU諸国歴訪
14日 ドイツ・ブランデンブルク州議会選挙
14日 スウェーデン下院選
14日 ロシア統一地方選
【来週の予定】
15-18日 欧州議会本会議、委員会会議(ストラスブール)
15-19日 国際原子力機関(IAEA)理事会(ウィーン)
16日 第69回国連総会(ニューヨーク)
16-17日 米国連邦公開市場委員会(FOMC)
17日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(フランクフルト)
17日 フィジー下院選
17日 米国8月消費者物価指数(CPI)発表
17日 EU統計局(ユーロスタット)、8月消費者物価指数(CPI)発表
18日 スコットランドの独立の是非を問う住民投票
18日 欧州連合コペルニクス会合(ローマ)
18-19日 インド内務相、ネパール訪問
18-21日 台北国際発明およびテクノマート見本市
19-22日 第11回中国ASEAN博覧会(広西チワン族自治区南寧市)
19-25日 台湾の李登輝元総統が訪日
20日 ニュージーランド議会選
20-21日 G20財務相・中央銀行総裁会議(オーストラリア・ケアンズ)
21日 エジプト大統領、モロッコ訪問
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問