外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2014年9月2日(火)

外交・安保カレンダー(9月1-7日)

[ 2014年外交・安保カレンダー ]


 今週の原稿は羽田空港で書いている。これからロンドン経由で英国のとある町に向かう。詳しい内容は書けないが、対テロ対策の最新手法に関する学習を兼ね、某所で本格的対テロ実地訓練を受ける。それにしても、羽田発とは便利になったものだ。

 空港のラウンジでテレビを見ていたら、何とドイツが中東に武器供与というニュースが飛び込んできた。イラク北部で「ISIS改めイスラム国」と対峙するクルドの軍事組織ペシュメルガの部隊にドイツ製武器を大量に供与するのだそうだ。

 メルケル首相ら主要閣僚が決断したらしく、国防相は「状況は極めて危機的」と、外相は「結果は欧州とドイツにとっても計り知れない」などと、それぞれ説明したそうだ。さすがはメルケル首相、ISISとオバマ政権の本質を突く政治決断ではないか。

 提供する武器は対戦車ロケット砲や小型自動小銃、機関銃など総額7千万ユーロ(約96億円)相当らしい。さて、日本だったら何が出来るのか。直ちに考えたのは日本の「武器輸出三原則改め防衛装備品移転三原則」の適用の可能性だった。

 新三原則は防衛装備品移転禁止の対象として、①国際約束義務違反の場合、②安保理決議義務違反の場合、又は③紛争当事国に対する移転である場合の三つを挙げている。されば、日本は「紛争当事者」であるクルドには移転などできないのか。

 だが、この新原則をよく読むと、この「紛争当事国」とは「武力攻撃が発生し、国際の平和及び安全を維持し又は回復するため、国連安保理がとっている措置の対象国をいう」と定義されている。

 おいおい、日本もその気になればドイツと同じ措置を取ることが出来るということなのか。ここはもう少し勉強してみる必要がありそうだ。勿論、ドイツ国内でも反対論が少なくないようで、武器を使うクルド人部隊の訓練は原則ドイツ国内で行うそうだ。

 「平和を回復する」ために「紛争当事者」に「武器を供与する」というこのメルケルの大英断を日本の空想的平和主義者たちはどう評価するのか。「それでも武器輸出は駄目だ」というのだろうか。今週はこのくらいにしておこう。


9月1日 原子力エネルギーに関する日仏委員会第4回会合(パリ)
1日 韓国通常国会開会
1日 米労働者の日(ニューヨーク市場は全て休場)
1日 モントリオール映画祭授賞式(モントリオール)
1-2日 ブレッド戦略フォーラム(スロヴェニア・リュブリャナ)
1-3日 包括的核実験禁止条約機関準備委員会諮問グループ第43回会期(ウィーン)
1-3日 シンガポール文化・地域・青年大臣、英国訪問
1-4日 第3回小島嶼開発途上国(SIDS)国際会議(サモア、アピア)
1-4日 欧州連合欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
1-4日 カナダ予算庁長官、インド訪問
1-5日 第5回日中韓自由貿易協定(FTA)交渉会合(北京)
1-5日 すべての移住労働者とその家族の権利の保護に関する委員会、第21回会期(ジュネーヴ)
1-10日 環太平洋連携協定(TPP)首席交渉官会合(ハノイ)
1-19日 子供の権利に関する委員会、第67回会期(ジュネーヴ)
2-3日 APECエネルギー担当相会合(北京)
2-3日 ブラジル中銀、金融政策審議会(Copom)
2-4日 東アフリカ電力産業会議「EAPIC」(ケニア・ナイロビ)
2-5日 第5回クラスター弾に関する条約締約国会議(コスタリカ)
3日 自民党役員人事、内閣改造
3日 EU統計局(ユーロスタット)、第2四半期実質GDP成長率発表
3-5日 国際半導体見本市(SEMI)(台北)
3-5日 自動車貿易及び非関税措置に関する米国との並行交渉の事務レベル協議(ワシントンDC)
4日 米国7月貿易統計発表
4日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(フランクフルト)
4-5日 北大西洋条約機構(NATO)首脳会議(英西部ウェールズ・ニューポート)
4-5日 WHOエボラ出血熱専門家会合(ジュネーブ)
4-6日 オーストラリア首相、インド、マレーシア歴訪
5日 米国8月雇用統計発表
5日 APEC中小企業担当相会合(南京)
6-8日 安倍首相、バングラデシュ、スリランカ訪問
7-10日 英国労働組合会議(TUC)年次総会(リバプール)

 
【来週の予定】
8日 欧州連合欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
8-13日 第25回国際コーヒー会議(コロンビア・アルメニア市)
8-26日 国連人権理事会第27回会期(ジュネーヴ)
9日 8月7・8日の金融政策決定会合議事要旨発表
10-12日 世界経済フォーラム夏季会合(夏季ダボス会議)(中国・天津)
11-12日 アジア欧州会合(ASEM)第11回財務相会合(ミラノ)
11-18日 国際捕鯨委(IWC)総会(スロベニア・ポルトローシュ)
12日 米国8月小売売上高統計発表
12日 モントセラト(英自治領)議会選
12日 欧州連合財務相会合(ユーログループ)(ミラノ)
12日 ロシア中央銀行、金融政策決定会合(モスクワ)
12-13日 上海協力機構サミット(イラン)
13-24日 フィリピン大統領、米、EU諸国歴訪
14日 ドイツ・ブランデンブルク州議会選挙
14日 スウェーデン下院選


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問