キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2014年8月5日(火)
[ 2014年外交・安保カレンダー ]
ヨーロッパは相変わらずバカンスの真っ最中。今週の大きな動きは、駐ウクライナ・ロシア大使、ウクライナ第二代大統領、OSCE(欧州安全保障協力機構)の代表がウクライナの親ロシア勢力と会うことぐらい。申し訳ないが、この四者が会って一体何をするのだろう?逆に言えば、今はこれぐらいしかやることがないということか。
確かに、8月1日に発効したEUによる対ロシア経済制裁は中身があった。ロシア最大の貯蓄銀行、国営ガス大手ガスプロム系銀行、大手VTB銀行、ロシア開発銀行と農業銀行に対し、EU域内での資金調達を禁止するという。昨年は域内でロシア公的金融機関発行債券の約半分、755億ユーロ(約1兆円)が取引されたそうだ。
こうなれば、日本政府も追加制裁をせざるを得ない。「EU-α」の制裁は不可避だろうが、いずれにせよ、こうした欧米の追加制裁でプーチンが音を上げるとは到底思えない。彼はこうした西側の圧力を追い風にロシア民族主義を一層煽って生き延びようとするだろう。古今東西、経済制裁で倒れた政権などあまり思い付かない。
8日に英製薬大手GSK幹部贈賄事件関連の裁判が上海で開かれる。今回の被告人は同贈賄事件を調査していた英国人と中国系米国人の夫妻で、容疑は「市民の私的情報を違法に取得したこと」だそうだ。こんな容疑では注意のしようもないが、何か中国側にとって都合の悪い情報でも集めたのだろうか。当然、冤罪の可能性がある。
英米両政府も裁判に強い関心を持っているらしい。だからかどうかは知らないが、同裁判は中国では珍しく公開されるという。件の贈賄事件では被疑者の英国人現地法人社長と中国人の愛人とのいかがわしいビデオが流出したそうだ。中国では典型的なスキャンダルだが、外国人と愛人のビデオとはちょっと驚いた。何とも情けない。
そこまでではないが、最近外国人対するビザ発給が遅れるなど、中国に住む非中国人の受難が続いていると聞く。こういう人々こそ中国の友人だと思うのだが、関係当局はその逆のことを考えるのだろうか。今週はこのくらいにしておこう。
8月4日 次期欧州委員長、ギリシャ訪問
4日か5日 ロシア7月CPI発表
4-5日 環太平洋連携協定(TPP)交渉で農業分野の日米実務者協議(ワシントン)
4-8日 生物兵器禁止条約政府専門家グループ会議(ジュネーヴ)
4-8日 国連持続可能な開発資金に関する政府間専門家委員会第5回会期(ニューヨーク)
4-9日 牧野外務大臣政務官、キプロス及びモルドバ訪問
4-10日 茂木経産相、ウクライナ、ウズベキスタン、カザフスタン歴訪
5日 防衛白書公表
5日 インド中銀政策金利発表
5日 ネパールエネルギー相、バングラデシュ訪問
5-6日 米国・アフリカ首脳会議(ワシントン)
6日 広島原爆忌
6日 米国6月貿易統計発表
6-8日 地球規模の地理空間情報管理に関する国連専門家委員会第4回会期(ニューヨーク)
7日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(フランクフルト)
7日 カンボジアの旧ポル・ポト政権最高幹部への判決
8日 中国7月貿易統計発表
8日 日本14年上期と6月の国際収支
8-10日 東南アジア諸国連合(ASEAN)関連外相会議(ミャンマー・ネピドー)
9日 長崎原爆忌
9日 中国7月CPI発表
10日 長野県知事選
10日 トルコ大統領選
10日 ASEAN地域フォーラム(ネピドー)
【来週の予定】
11日か12日 ロシア第2四半期GDP暫定値発表
11-29日 国連人種差別撤廃委員会第85回会期(ジュネーヴ)
12日 日航機墜落事故から29年
12日 米国7月財政収支発表
13日 米国7月小売売上高統計発表
13日 中国7月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
14日 EU統計局(ユーロスタット)、7月消費者物価指数(CPI)発表
14-16日 香港インターナショナルティーフェア2014、香港漢方博覧会、現代漢方&ヘルスケア製品展・国際会議
14-18日 香港フード・エキスポ2014
15日 終戦記念日、全国戦没者追悼式
15日 パナマ運河開通100周年(サンパウロ)
15日か18日 ロシア1〜7月鉱工業生産指数発表
15-18日 カンボジア・総合機械展示会「CIMIF2014」(プノンペン)
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問