キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2014年6月10日(火)
[ 2014年外交・安保カレンダー ]
日本ではあまり注目されていないが、6月9日はウクライナがロシアに天然ガス未払い代金22億ドルを支払う期限だ。これまで関係国が交渉を重ねてきたが、公平に見れば、クリミア問題とは異なり、天然ガス問題ではすべてロシアが悪い訳ではない。
以前は千立米当たり268.5ドルだった価格を、最近ロシアのガスプロムが485.5ドルに値上げしようとしたため、ウクライナは怒り狂っている。しかし、そういうウクライナもソ連時代から何度も天然ガスを抜き取っていたのだから、目糞鼻糞というべきだ。
そもそもこの価格紛争、ウクライナでオレンジ革命が起きた翌年の2005年に46.5ドルだったものをロシアのガスプロムが160ドルに値上げしようとして大騒ぎになったのが発端だ。それ以来、両国はほぼ数年おきに価格で揉めてきている。
要するに、クリミアや東部諸州の問題を除けば、ウクライナ側にも相当問題があるということ。重要なことはキエフの新政権に統治能力があるか否かだが、これほど未知数なものはない。筆者がウクライナ情勢を楽観視出来ない理由はここにある。
もう一か国、今週気になるのがパキスタンだ。8日カラチ空港を襲撃したのはTTP(パキスタン・ターリバーン運動)だといわれるが、どうやらパシュトゥーン人だけの「ターリバーン」ではなく、ウズベク人など中央アジア出身の武装活動家もいるらしい。
なぜ中央アジアが気になるのか。それは最近中国国内で一連のテロ事件を起こしているウイグル系の一部が中央アジアやパキスタンなどで訓練を受けたとの見方が強まっているからだ。確かに、最近ウイグル系テロの手口は微妙に変わりつつある。
パキスタンと中国の関係は緊密なはずだが、両国ともこの種のテロリストの動きまでは十分把握できていない。パキスタン国内のテロ活動が活発化すればするほど、中国国内での破壊活動も拡大していく可能性がある。やはり中央アジアは日中関係にとっても重要であり、今後とも要注意だろう。今週はこのくらいにしておこう。
6月9日 メキシコ5月CPI発表
9日 ドイツ、英国、オランダ、スウェーデン首相会談
9日 イラン大統領、トルコ訪問
9-13日 岸外務副大臣、イラン及び英国訪問
9-13日 国連海洋法条約第24回締約国会議
10日 中国5月CPI発表
10日 米国議会選挙予備選(メーン州、ネバダ州、ノースダコタ州、サウスカロライナ州)
10日 イスラエル大統領選
10-12日 東アフリカ石油・ガスサミット(ロンドン)
10-12日 伊原アジア大洋州局長、訪米
10-13日 中東アフリカ大使会議(東京)
10-27日 国連人権理事会第26回会期(ジュネーヴ)
11日 日豪外務・防衛閣僚協議(東京)
11日 メキシコ4月鉱工業生産指数発表
11日 欧州連合常駐副代表委員会(Coreper I)、常駐代表委員会(Coreper II)(ブリュッセル)
11-12日 WTO知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)理事会(ジュネーブ)
12日 EU環境相理事会(ブリュッセル)
12日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(ルクセンブルク)
12日 ブラジル4月月間小売り調査発表
12日 米国5月小売売上高統計発表
12日 アンティグア・バーブーダ下院選
12日-7月13日 ブラジルでサッカー・ワールドカップ開催
13日 中国5月固定資産投資、社会小売品販売総額発表
14日 アフガニスタン大統領選
15日 コロンビア大統領選
【来週の予定】
16日 EU統計局(ユーロスタット)、5月消費者物価指数(CPI)発表
16日 ロシア中央銀行理事会
16日か17日 ロシア第1四半期経済活動別GDP統計発表
16-17日 EU農水相理事会(ルクセンブルク)
16-20日 子どもの権利条約、第68回会期、会期前作業部会(ジュネーヴ)
16-20日 国連食糧農業機関(FAO)理事会、第149回会期(ローマ)
16-20日 国際海事機関(IMO)理事会、第112回会期(ロンドン)
17日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(フランクフルト)
17日 米国5月消費者物価指数(CPI)発表
17-18日 米国連邦公開市場委員会(FOMC)
18日 ECB一般理事会(フランクフルト)
18日か19日 ロシア5月鉱工業生産統計発表
19日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ルクセンブルク)
19-20日 EU雇用・社会政策・健康・消費者問題担当相理事会(ルクセンブルク)
19-22日 台北国際医療見本市、台北国際シルバー&ヘルスケア見本市
20日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ルクセンブルク)
20日 メキシコ4月小売・卸売販売指数発表
21日 モーリタニア大統領選
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問